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よもやまシネマ769 “遠い山なみの光”
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2025.9.11.

ノーベル文学賞受賞作家、カズオ・イシグロ氏の原作の長編小説デビュー作“遠い山なみの光”が映画化された。イシグロ氏の作品は今までも“日の名残り”、“私を離さないで”と映画化され大きな感動で映画ファンの心も掴んだ作品ばかり。イシグロ氏の作品は独特の世界観があり、人間の奥底にある繊細な心の揺れ動きが表現され、なんとも言えない余韻を残す。映像化に踏み切る監督たちはみな、その微妙な感覚を見事に映像化し感性を刺激する素晴らしい作品を世に送り出して映画ファンの心を掴んで離さない。わたしは“私を離さないで”を初めて見た時、言葉では語れない息苦しさを感じ今まで観た作品の中でもBEST10に入る作品となっています。日常の何げない生活の中にある不安な感覚を、ミステリアスに紡ぎ出す才能は他の作家には感じ取れないものがあり唯一無二の世界を創り出しています。

今作“遠い山なみの光”は、原点とも言える作品で、氏の原体験から生まれた遠い記憶になぞられたフィクション作品。舞台となっている長崎は氏の生まれ故郷。5歳の時に両親と共に英国に移住し現在がある。長崎といえば、原爆を想像してしまい悲しい物語を想像しがちだが、氏はこの作品では悲しみを乗り越え未来へ羽ばたこうとしている一人の女性を主人公に、静かな静寂の中から消えてしまいそうな光を浮かび上がらせ読者(観る人)を迷宮へと誘い込む。その仕掛けは巧で最後まで、こころを弄ぶ仕掛けを作り上げています。今まで映画化された作品のどれにも共通するこの感覚は、一度ハマると中毒になる。わたしはまさに、その状態になりました。原作と映画はもちろん全くオリジナルを活かす形にはなっていないが、映画も素晴らしい作品に仕上がっていて、イシグロ氏に対するリスペクトを感じる作品たちである。前に言いましたが、わたしは“私を離さないで”を数十年前に鑑賞し、胸が締め付けられ人間の愚かさを思い知らされこんな時代が来ないことを祈ったものです。

さて、“遠い山なみの光”の感想ですが、制作スタッフの並々ならぬ思い入れが静かに、それでいて力強く描かれ素晴らしい映像となりこころに響く作品となっています。物語は終戦後の長崎を舞台にそれぞれに原爆体験をした二人の同世代の女性・悦子と佐知子の運命的な出会いから紡がれていきます。全然違う性格と生活を送る二人がほんの目と鼻の先で暮らし、ひょんなことから関わりを持つようになるスタート。そしてその二人を追いかけるように現在(1982年)のイギリスに暮らす悦子の記憶が交差し始める。娘のニキがそこに絡み、過去と現在が交差し物語は想像を超えた結末へと繋がっていく。観終わると何か不思議なものを見たような感覚を覚え、つかみどころのないフワフワした気持ちになる、しかし、それは決して不快ではなくなんとも言えない余韻を残してくれる。イシグロ氏の作品はいつもこの感覚を訴えてきて、まるで魔法にでもかかったような妙な高揚感で包んでくれる。

映像も美しく、音楽や照明、時代を浮かび上がらせる舞台美術など、どれをとっても一級品。制作スタッフのプロ意識が強く感じられる演出は見事である。監督は“愚行録”や“蜜蜂と遠雷”を世に送り出した石川慶氏。どちらの作品も観ていますが素晴らしい作品で印象に強く残る逸品です。イシグロ氏の原作を石川氏が監督したなら、想像通りこんな作品になるのだと品格さえ感じました。

さて、主演の三人を演じた女優さんの話を少ししましょう。日本ど代表する三人と言ってもいい美しい方達。まずは若き日の悦子を演じた広瀬すずさん。ますます美しさに磨きがかかり、周りを圧倒する輝きを放っています。デビュー当時から異次元の美しさでしたが、すっかりベテランの風格さえ醸し出し、感性豊かな表現をみせてくれます。対する佐知子を演じた二階堂ふみさん。まだ若いのに堂々とした憂いを秘めた堂々とした演技はもはやアクター。この人の存在感は他の女優さんにはない魅力が溢れんばかりに画面から浮かび上がっています。そして晩年の悦子を演じた吉田羊さん。こちらもベテランの味をしっかりと出し、繊細な感情の揺れ動きを静かに表現しています。幻想の中を道先案内人のように、わたしたちを物語の中へと連れて行ってくれます。英語がお上手なのには、ちょっとビックリしました。海外に出てもっと活躍してほしい女優さんです。何度かTVのトーク番組で拝見していますが、ブレのない生き方をしている感じが、とても素敵な女優さんです。かっこいいの一言。

イシグロファンはもちろん、映画ファンも絶対に観て損はない映画です。三人の女優さんたちが特に昭和の二人がファッションやメイクもあると思いますが、この時代にこんな人いる訳ないと思うほど、綺麗です。暮らしとのギャップに少しだけ違和感を感じました。まぁ、それが映画なのですが・・・。

P.S. 劇場で買ったパンフが素晴らしい出来栄えで、デザインナーの力を感じる作品でした。シンプルな表現だが、型抜きを上手に組み入れ物語のイメージを巧に表現しています。




# by eddy-web | 2025-09-15 16:56 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ768 “8番出口”

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2025.9.09.

予告編を観て以来、ず~~~っと気になっていた作品、“8番出口。ようやく公開され観にやってきました。惹かれた理由はいくつかあるが、まずは監督が川村元気氏という事と主演が二宮和也さんという事が一番。また、この作品がゲームを元にした実写映画というところに大いに興味が惹かれた。ゲームには全く疎いわたしなので、どんなゲームなのかは全く知らない。調べるとインディゲームクリエーターのKOTAKE CREATEという人がたった一人で制作し、累計販売数が190万本超の世界的大ヒットしたゲームだそうである。この数字がどれだけ凄いのかも解らない自分だが、きっと面白いのだろう。思うに映画を観た感じだと、きっとオタク受けする作品に違いない。コメントでゲーム好きの人たちの声を拾うと、「あのゲームがどうやって映画に???」と書かれていた。予告もSNSで拡散しあっという間に世界中で話題が広がり、公開前から大きな話題となっていたらしい。わたしはゲームはさっぱりだが、映画はオタクの部類。そんなオタクの感性を刺激する作品はいかに・・・。

感想を言う前に、全く関係のない話をちょっとだけ許してください。その昔(340年前)、ある舞台で観たパントマイムをこの映画を観て思い出した。高度成長期の日本を題材にして、未来を憂いて描かれた作品は「一卵性1億人」と言う題名で、数少ない女性パントマイマーのヨネヤマ・ママコさんが表現していました。とても強い印象を覚えた作品は、どこやらの駅を舞台にしたラッシュの中を人の波に飲み込まれ右往左往する人物の姿を描いていました。一本の道に溢れんばかりの人、人、そしてまた人。同じ顔をいて同じ方向を無表情でただひたすら歩く姿。当時の日本社会を表す、そんな光景は何か異常な感覚を覚えさせ背筋が寒くなったのを記憶しています。毎日、同じ時間に同じ人と出会い、同じ時間を繰り返す毎日の生活。名も知らず、知ることもない人たちだが、毎日出会う不思議な感覚。すっかり忘れていた遠いこの感覚が“8番出口を鑑賞し、フラッシュバックしたわたし。

あれから何年経ったのかさへ思い出せないが、何か胸騒ぎのように突然蘇った記憶。この感覚こそが、この作品の感想と言えるわたし。一体何を言っているのだろうと思う人も多いと思いますが、なんでこんな話をするのかというと、感想と言う次元の話が思い浮かばなかったと言

うのが本音。不思議な感覚の作品は、物語らしきストーリーも特になくどちらかといえば感性に訴えてく人の業や性に訴えてくるものだから。いろんな意味で考えさせられる作品は、観終わってからもず~~~っとモヤモヤとした気分が続く、そんな作品です。

感想ではありませんが、人はみなこのような時間のループの中を、毎日ひたすら繰り返していると言う事実を突きつけられたそんな気がします。良いとか悪いとかではなく、それが当たり前で「人は人、自分は自分」というだけの生活になんの違和感さえ感じなくなっていることに気づいた。ある意味、こんなに怖い話はない。そんな映画でした。みなさんは、どんな感想をお持ちになるでしょうか?

主人公を演じた二宮くんは、今まで観たことのない役に挑んでいましたが、多分等身大の自分に重ね合わせていたような気がします。主人公の気持ちと向き合いながら、自分などうするだろうみたいな感覚でこの役を演じていたのではないでしょうか?日常が突然崩れ始めた瞬間、思いもよらない現実と向き合い翻弄させられるのだが・・・。最後は自身で最後の扉を開ける事になる。逃げても終わらない迷宮は、自分を壊して前に進むそれだけの事。難しい事だが、人生にはこんな事が何度も何度も襲ってくるのである。覚悟して生きましょう。

P.S. 歩く男を演じていた河内大和さんの不気味な表情がたまりません。無表情の中にある表情は、現代をシンボライズしています。みなさんも「こんな表情なのですよ」と言わんばかりの演技でした。一度鏡に映った自分の顔を確かめてみてはいかがでしょうか?ちょっと怖いですが・・・。エッシャーの有名な作品が、この作品のコンセプトを表しセンスを感じさせます。音響の使い方が気味悪く、五感を刺激しイラっとさせ主人公と重なり強いストレスを感じるのもこの作品の狙いだと思います。それを覚悟で、映画館にお行きください。

※ポスターとパンフのデザイン、シンプルとても良いです。


# by eddy-web | 2025-09-12 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ767 “国宝”

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2025.8.28.

公開以来、異例の大ヒットを記録している話題作、“国宝”を鑑賞。6月6日に公開し超ロングランしている作品は、興行収入110億を突破し、邦画実写映画歴代第2位まで上りつめている。ちなみに第1位は「踊る大捜査線」だとの事ですが、これは映画の評価とは全く関係のないお話。

正直な感想を述べさせていただきます。久しぶりに重厚感に溢れた日本映画に出会った気がします。物語は結構突飛な話ではありますが、日本の伝統文化にスポットを当てた人間模様が複雑に絡み合いとても好奇心を刺激する。長い作品時間だが張り詰めた緊張感に包まれ、ラストまで駆け抜け時間を忘れてしまう。何もかもがプロの仕事を思わせ、スタッフの作品にかける熱量がびしびしと伝わるそんな作品でした。まだ先の話だが、次回の日本アカデミー賞は間違いなくこれではないでしょうか?

いろんな部分で刺激を受けたわたしは、この作品についてちょっと調べてみた。監督が李相日(リ・サンイル)監督だとは知っていたので、もちろん期待大で鑑賞望んだわたし。監督作品は“フラ・ガール”以来の第ファンで、その後の“悪人”“許されざる者”“怒り”“流浪の月”と観てきたが、どの作品も見終わった後に何とも言えない余韻を残し、自分の中で答え合わせをするのがとても貴重な体験になっている。人間の中にある業や性という、目には見えない心の動きを目の前に広げ、「さぁ近づいておいで・・・」とでも問いかけてくる。いつも観る側に委ねる形で、作品を提供してくれるまさに映像クリエーターの神さま。そんな監督作品だから間違いないのは解っていたが、集められた制作スタッフの顔ぶれを知り驚かされた。原作は文学界の先頭をかけている吉田修一氏。先に述べた“悪人”も氏の作品で、監督とは互いをリスペクトしている関係が伺える。吉田氏の凄いところは “国宝”を書き上げるに至っては、歌舞伎の中村鴈治郎一座に入門し黒衣を纏い3年にも及ぶ経験を積んだとの事。この話には正直驚かされた。ここまでしてこの作品が生まれてきたのだと思うと、プロの世界の覚悟や執念に圧倒されるばかり・・・。歌舞伎の世界を間近で触れ、渾身の力で書き上げた作品は芸術選奨を受賞し世界中に翻訳され人気を呼んでいるとの事。李監督と吉田氏のコラボだけでも凄い作品になるのは明らかなのだが、それ以外の脚本、キャスト、そしてスタッフの全てが超一流の人たちで創られていた。まず脚本が奥寺佐渡子氏で、劇場アニメ「サマーウォーズ」を筆頭にアニメ・実写に限ら図、複雑に絡み合う人間模様の心のひだに光を当ててみせる日本を代表する脚本家。撮影には“アデルはブルーの熱い色”でカンヌ国際映画祭パルムドール賞を受賞したソフィアン・エル・ファニ氏。この方の名は存じておりませんでしたが、アデルはブルーの熱い色”はわたしのんかでは好きな映画作品の中でもBEST20に入る作品で大好きな作品。そして美術監督には“キル・ビルVol.1”の種田陽平氏が歌舞伎という伝統の世界を鮮やかに演出して見せてくれている。もちろん先に述べた歌舞伎界の四代目中村鴈治郎氏が歌舞伎指導にあたり作品にも役者として参加しわきをしっかりと固めてくれている。これだけの顔ぶれなら、間違いもなく確かに映画としてだけでなく、伝統芸能である歌舞伎の持つ魅力を映画という映像世界でエンターテイメントのど真ん中を表現した傑作を創り上げています。

さて話が熱くなりまるで宣伝部長にでもなったかのような熱弁を語りましたが、もう少しだけお付き合いください。

キャスト(俳優)のみなさんの事を言わせてもらいます。出演しているか方たちの、演技が半端ありません。特に主演の二人にはきっと今後代表作となる事間違いなしの名演技と拍手を贈りたいと思います。「よくぞやった!」と叫びたくなるほど感動しました。一世一代の渾身の演技ではないでしょうか?役自体の難しさに加え、歌舞伎の木目の細やかな所作や踊り、そして演技、どこを切り取っても凄いの一言。化粧シーンなどはうっとりするくらい綺麗で、ゾクゾクするほど女型を見事演じていました。吉沢亮(立花喜久雄役)さん、横浜流星〔大垣俊介役)さんこの二人は今まさに日本を代表する若手俳優さんの筆頭ではないでしょうか?この二人の演技は設定通りのライバル関係をマジで表現しているバチバチの甲乙つけ難い凄い迫力でした。本当に凄いと感じさせてくれる唯一無二の演技とは、こういう事かも知れない。周りのキャスト陣もそれぞれのスキルを出し切っていて、作品の厚みをさらに深めています。名前をあげたらキリがないので、一人だけ上げさせていただくと人間国宝の小野川万菊を演じた、田中泯さん半端ないです。何をやっても存在感があり、いつの間にか気がつくと中心にいるような俳優さんです。決して目立たないようでいて、実は一番目立っているとはこういう人いうのではないでしょうか?本職のダンスパフォーマンスを一度でいいから見てみたい自分です。映画“パーフェクト・デイズ”でその片鱗をちょこっとみせていますが、100%の舞台をぜひ機会をみつけ観たいと思います。きっと間違いなく凄いに決まっています。

ということで今回も熱く語りましたが、ぜひ観ていただきたい作品の一本です。わたしは6月公開から3ヶ月も経っての鑑賞でしたが、何度観ても良い作品に久しぶりに出会いました。いまだに劇場は混んでいるのには、驚きましたが日本人なら観るべき作品ではないでしょうか?

P.S.  最後になりましたが、映画の主題歌「Luminance」をKing Gnuの井口理の歌っているのですが、何とも言えない世界観がピタッとハマり素敵でした。


# by eddy-web | 2025-09-01 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ766 “雪風・YUKIKAZE”
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2025.8.27.

シネマポイントが貯まったので、普段あまり選ばない作品を観にやって来た。作品は“雪風 YUKIKAZE”。戦争をテーマにしたヒューマンドラマである。8月になるとTVはもちろんさまざまなメディアがこぞって、終戦をテーマにしたものを取り上げ放映する。これはこれで大切なことなのだが、今の日本があるのは尊い人々の命による犠牲があったからとこの時期だけ思うのは???と思ってしまう。今も世界の至る所で争いが続き、多くの人の命が奪われている事実。なんだか妙な違和感を覚えてしまう。だからといって何もできるわけでは無い、無力感は言葉にならないほど重くのしかかる。わたしは日本が犯した戦争の罪は、多くの人を傷つけ今もなお多くの人の心に深い傷跡を残していることを考えずにはいられない。正直過去の出来事だと、やり過ごすこともできるのだがなかなかそうもいかない性格。戦争をテーマにした作品はどんなメディアでも、つい突っ込んで見入ってしまう。だから体調の良く無い時は、あえて避けてしまう自分がいる。観れば必ず落ち込むし、悲しくなるし、怒りを覚えてしまうから・・・。それでも観るのは、今ある自分は負の歴史である人間が犯した愚行を忘れてはならないからと戒めている。今ある幸せはその大きな犠牲の上にあることを、認知し無駄に生きてはならないと思う自分がいる。

いきなり重たい話をしてしまいました。さてそんな中観た作品は、まさに戦争を真正面から取り上げた一隻の船(雪風)とそれにまつわる乗務員たちの物語である。絶対にこういう作品では泣いてしまうであろう自分が思い浮かぶ。案の定の結果にむしろ怒りを覚えてしまう。思うに戦争を美化して観ているようで情けない気持ちになり、憤りさえ感じてしまうのである。泣くなんてもってのほかで、失礼な話なのだ。だからこの手の作品はある意味、苦手なわたし。

第二次世界大戦で活躍した駆逐艦、“雪風”が激戦を潜り抜け終戦後も多くの人々を救った物語は史実に基づく物語。子供の頃、漫画雑誌の巻頭でよく戦争を手間にしたイラストや記事が掲載され、私たちは何にも解らず零戦や戦艦大和に憧れ、ただただかっこいいなぁ~~~と眺めていた。子どもは戦争の恐ろしさなんか知るはずもなく、見た目やカッコ良さから戦争をテーマにした漫画に夢中だったことを覚えている。「零戦ハヤト」や「紫電改のタカ」飛行機乗りを主人公にした作品には、ただひたすら憧れさえ感じていた頃。今読み返すと、物語の中にはちゃんと戦争の傷ましさや悲しみを描いているのが、当時はそんな事は全く頭に入っていなかったようである。大人になると気づくことは多くある。とりわけ戦争については、深く知れば知るほど胸はいたむし、なぜこんなことが起こってしまったのだろうと考えさせられることばかり。

さて、今作品“雪風”の感想です。大和や武蔵は知っているが、こんな船はあった事すら知らない自分が情けない気持ちになった。人間とはつい、目立つものや強いものに目がいき大事なものを見失ってしまう事がある。ましてや子どもは憧れや夢を追い求めシンボル的存在に心を動かすものである。年を重ねる事で、現実と虚実の判断が少しづつ変わり「大人になった!」と言われるようになる。それが良い事なのいか?悪い事なのかはわたしには今も解らない。

物語は艦長寺澤(竹野内豊)を中心に当時の出来事を再現する。仲間たちとの信頼関係や国に残してきた家族との絆など、丁寧に人間ドラマを紡いでいる。先任伍長・早瀬役をやっている玉木宏の存在が連帯感の重要なキーになっていて、信頼関係の大切さをしっかりと伝えている。「武士道」という言葉が物語の中で使われているが、ここは人の中にある大切な心を見失ってはならないと謳っているような気がする。後半から第二艦隊司令長官・伊藤整一役で中井貴一が出て来ますが、奥深い演技力で物語を締めていました。軍人の生き様を見事に表現していて、さすがと思わせてくれました。

物語は戦時中の激戦を潜り抜けたこの艦をいつしか「幸運艦」と呼ぶようになる・・・。小回りのきく巡洋艦は幾たびもの危機を潜り抜け多くの命を救い、終戦後も引き揚げ船として昭和21年15回に渡り引き上げ作業に従事しのべ1万3056名を日本に帰還させた事で物語は終わる。時代に抗うように「生きること」に命をかけた人々の物語を知ることができ、平和の尊さを改めて考えさえられる良い作品でした。

P.S. 劇中艦長・寺澤と先任伍長・早瀬の会話で、戦争が終わったらどんな時代を望んでいるかを問うシーンが心に強く残りました。伍長の問いに寺澤が「普通がいいなぁ~1」と・・・。何気ない言葉ですが、心に残る素直な言葉が胸に沁みました。普通の有り難さをわたしたちは忘れてしまっているような気がします。平和について今一度考えてみる、いい機会かも知れません。



# by eddy-web | 2025-08-30 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ765 “ジェラシックワールド/復活の大地”
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2025.8.14.

ジェラシックシリーズ最新版“ジェラシックワールド/復活の大地”を鑑賞しました。このシリーズは全て観ていますが、いつもその映像技術の素晴らしさに驚かされています。ただ、シリーズものの宿命ですが、何かマンネリ気味になることは避けられないようで、初めて観た第一作の衝撃は感じることはないのが正直な感想です。

さて、今作ですが・・・。相変わらずCG技術の凄さには圧倒されます。まるで現実の世界のように感じてしまうリアルな表現は、すごいの一言。中身についてですが、「ジェラシックパーク」から数えて七作目になるこの作品は、前作ではジェラシックパーク”の出演者が揃い、懐かしいだけでなく何か新しい展開を期待させるようなお話で好印象を持ち、次回作を楽しみにさせる、そんな作品になっていました。そして今回新作を観てのファンの一人として感想を述べます。シリーズという括りは恐竜が出ているということだけで、物語が続いている感じはなく全く別の新たなお話になっているような感覚を覚えました。話がかなり飛んでいる上に、キャスティングも総入れ替え。その辺は別に気にはならないのですが、人間たちのDNA操作により新種の生命体(恐竜もどき)が創られるというストーリーには、やや困惑を覚えた。第一作のコンセプトである、その昔地球上を闊歩していた恐竜たちの復活というロマン溢れる夢のような話に子どもだけでなく大人たちもどれだけワクワクしたことか・・・。琥珀の中に閉じ込められた蚊から恐竜の血を抽出し、現代にその姿を甦らせるとういプランの脚本は、マジでありえるのではとさえ今も信じているわたし。シリーズは回を重ねる度にアクション映画の要素が高くなり、面白さはあるものの段々と現実味から遠ざかりたんなるSFアクションへと変貌していきました。それでもCG技術の素晴らしさは生かされ、娯楽作品としては大いに楽しめる作品として続いています。“ジェラシックワールド”にシリーズ名を変えても、ラプトルを軸に人間と恐竜たちの絆を表現したあたりは、個人的にはとても高く評価しています。そして今作には大いなる期待を込め鑑賞に臨みましたが、もはや別のSF映画を観せられたようなそんな印象を持ちました。シリーズと思わなければそれなりに面白いとは思うのですが、ロマンは全然感じることが出来ません。スピンオフ的な作品にしても、いきなり恐竜の血清を集め心臓病への薬を開発するという展開はまさに荒唐無稽な話でぶっ飛んでいる気がします。キャストも前作に繋がっていないので、本当に別作品といいうのが本音。面白いというだけなら、十分楽しめるかもしれませんが、わたしには入る隙間はありませんでした。正直少しガッカリしたのは事実。

映画の内容は人間の勝手でDNA操作をし、野放しになった恐竜たちの物語になっているわけだが、この作品自体も人間の手により面白おかしく創られてしまった感があります。ラストに登場する恐竜(ディストータス・レックス)は突然変異で誕生したミュータント恐竜とのことですが、なんでこういう展開になるのか?意味不明です。ミュータントって一体何???ってこんな悲しい気持ちになったのは、わたしだけでしょうか?ぜひ、感想をお聞かせください。

P.S. 今作でメインキャストを演じている、スカーレット・ヨハンソンは好きな女優さんのひとりなのでそれも含めて観たのですが・・・。演技にはなんの問題もないのですが、出演作品を間違えたかも知れません。TレックスからDNA操作により突然変異した恐竜ですが、完全にエイリアンを想像してしまいます。調べたら監督はキャラ作りにエイリアンをベースにしたと述べていました。もう訳分からん!!(^ ^;)



# by eddy-web | 2025-08-18 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)


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