2024.11.23. 今週は久しぶりのせわしい毎日で、悪天候なども重なり好きな映画に行けない日々が続いた。一週間以上空いてしまうと中毒症状が出始め、なんだかモヤモヤし始める自分。やっとやるべく仕事を片付け、映画館へ。選んだ作品は、“本心”。前々から気になっていた作品は、近未来を見据えた社会問題の一つ、超高齢化社会をテーマにしたヒューマンドラマ。昨年だったかその前の年だったかは覚えていませんが、似たようなテーマ作品、“PLAN75”がありました。残念な事に時間とタイミングが合わず、見てはいないのですが近いうちにSNSで探し鑑賞するつもりです。もしかしたら、今作を見る前だったらまた違った印象をもったかもしれません。個人的にはとても興味深いテーマなので、必ず観るつもりです。その時はまたこのBLOGで・・・。 原作は同名小説で、「マチネの終わりに」「ある男」に続く映画作品。監督は「舟を編む」でその年(2013)の日本アカデミー賞、最優秀作品賞並びに監督賞を獲得した石井裕也氏が脚本・監督を務めている。最近も「月」「愛にイナズマ」など話題作を次々に発表し、海外でも高い評価を得ています。“月”は今回同様、社会問題の歪みを捉えた作品でショッキングな表現はもとより、私たちが抱える社会のあり方を考えさせられる素晴らしい作品でした。 さて、今作、“本心”ですが、見終わった後日本でもこんな映画を作るようになったんだ!と本心から思いました。尊厳死についてはかなり昔から議論されていますが、一歩先のテーマ「自然死」はかなり賛否の差がある大きな問題。また今回は最新テクノロジーのAI絡みの表現でちょっとSFぽさっもクリエーティブ表現の一つとなっています。時代は2025年設定になっていたかと思いますが、そんな遠い日ではないお話。そう言う意味では、私も高齢者に入る立場なので色々と考えさせられる作品です。 貧しいながも幸せを感じながら暮らしていた母・秋子と息子の朔也に突然起こる別れから話は始まる。自ら命を経ってしまった母親の本心が知りたくて、最新テクノロジーでVF(ヴァーチャル・フィギュア)を使い母を蘇らせた、青年がさまざまな苦悩と戦い自分探しをする物語。乾いた空間で行われるヴァーチャルの世界と現実に起きている近未来の生活のリアルさが交差し、次々に紐解かれる新たな事実。見ているうちにどんどん引き込まれ、自身の生き方がこれでいいのか、これで良かったのかと疑心暗鬼の世界へと引き込まれてしまった。ラストはほんのちょっと救われましたが、正直怖い話には違いありません。ぜひ鑑賞していただき、みなさんの意見を聞きたいと思います。 最近にたようなテーマの作品がちらほら出ていて、最も近しい作品といえば冒頭に語った“PLAN75”。75歳から“自ら生死を選択できる制度”の是非を描いた映画。近づく超高齢化社会を舞台にした、早川千絵監督のオリジナル脚本による長編映画。早川千絵監督によると、『PLAN 75』の発想のきっかけが、「ここ数年の間に”自己責任”という言葉を多く耳にするようになり、社会的に立場の弱い人への風当たりが強くなっていることへの憤り」だったという話。確かに世の中は日本に限らず、どんどんと弱者が社会の隅へ追いやられるそんな環境になりつつあります。それを自己責任と一言で言ってしまう世の中に、一抹の不安と絶望感を覚えます。かっこいいことは言えませんが、自由を選ぶならリスクを踏まえ一人を選ぶべきという人がいます。結婚などはせず誰にも縛られず自由に生きる。それと引き換えに誰にも束縛はされない反面ひとりを選ぶということ。そんな生き方に惹かれた時期もありましたが、今は人との関わりがどんなに大切で自分は生きているのではなく、生かされているのだと痛感しています。なんだかまたよく解らない話になってきたようなので、ここらで打ち切ります。 P.S. 主人公・朔也を池松壮亮。その母・秋子を田中裕子が演じています。身の静かな二人の会話はゆったりとしていて、現代に抗っているようなそんな感じを受けました。目まぐるしく変わっていく世の中に、翻弄されつつも自然体で小さな幸せだけを追い求めている家族としてシンボライズされてます。そこに突然襲う別れから急速に時代の流れに乗らざるを得なくなる朔也の心情が、きめ細やかに描かれ何度か涙してしまいました。二人の存在感はこの作品の肝でもあり、私たちに重なるものではないでしょうか?周りを囲む俳優陣も贅沢でわずかな登場シーンでも、しっかりとインパクトを残しています。ヒロイン役を演じた三吉彩花さんは同じ名(三好彩花)で出ていましたが、とても綺麗な瞳をしていて魅力的でした、ちょっとミステリアスな雰囲気があり今後の活躍に注目です。石井監督の映画は観るたびに、何か考えさせられますがとても勉強になり好きです。次回作も大いに期待していますので、よろしくお願いいたします。 ※タイトルのタイポグラフィーがお洒落。少しだけいじっただけの表現ですが、心の乱れがしっかりと投影されています。 #
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| 2024-11-24 00:00
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2024.11.21. 私の趣味のひとつには本の収集がある。本といっても基本漫画、絵本、そして写真集。合わせるとダンボール30箱くらいにはなる。専門書を入れると前回の引越し時100箱くらいあり、引越し屋さんが実に不機嫌だった事を思い出す。ものを集めだすと止まらなくなる、ある意味病的なわたし。 その中の絵本は最近では、あまり買わなくなっていたが、先日本屋に行くと店頭に置かれた一つの絵本に目が止まった。基本絵のテイストに惹かれるわたしだが、その気持ちに応えるような可愛いビジュアルとタイトル「もうじきたべられるぼく」の文字に心が射抜かれた。なんて怖い題名だと思ったが、帯に10万部突破!!の文字。これはきっと何かあると直感し購入。 たくさん絵本は持っているが、今までにこんなタイトルの絵本なんてついぞ出会った事はない。家に帰って早速開いてみると、可愛い牛さんの絵とは不似合いなリアルな内容に驚愕。私の知っている絵本のイメージは、子供たちに夢を与えワクワクしたり、ドキドキしたりするものと思っていた。外国のものを含め私のコレクションしてきた絵本の全てが、そういったものばかりで個性豊かな想像を掻き立てられる作品たち。しばらく遠のいていた絵本の世界だが今作を手にした瞬間、時代が何かを求めているのか?と少し考えさせられる事となった。 内容は言いませんが、衝撃を受けた作品はたくさんの人に見てほしいひとつとなりました。 人としてこの世に生を受け生きているわたしたちだが、改めて生かされている事に感謝をしなければいけないと心からそう思った。みなさんにも、ぜひ手に取ってもらいたい作品です。 P.S. お母さんに会いに来て、会わずに去っていく主人公に涙が止まりませんでした。中央公論新社=刊 はせがわゆうじ=作 #
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| 2024-11-21 00:00
| Book ON (本の話)
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2024.11.15. 学生時代や若かりし頃、足繁く通った街は時を超えまるで違う街へと変わっていました。銀座線を降りた瞬間、大きなアーケード状のホームから見えた景色はまだ工事が進むビッグタウン。人の波につられるように、何も考えず流れに乗り駅の外へと歩いた。駅前のスクランブル交差点は、人、ひと、人。知っている頃の街の面影こそあるものの、この人の多さは流石に息苦しい。振り返ると大きな高層ビル群が取り囲むように街を包んでいる。逃げ場を失ったような錯覚を覚えるわたし。正直、よっぽどの用事がなければ来たくない場所かも知れない。 明日から開催するグループ展「山のいきものたち」の設営を手伝いにやって来た。40年以上に渡りお付き合いのある友人の中村みつをさんと元画廊のオーナーが企画した、展覧会は山の専門店モンベル渋谷店5階サロンではじまる。娘・実(次女)が参加することになり、パテシィエの仕事が忙しい娘に代わりやって来た。それにしてもこの混雑な何なんだろう。人の頭しか目に入らない光景は、年寄りにはなんだか異様なさま。坂道を緩やかに登り目的地に辿り着くと、中村さんをはじめ今回参加している作家さんたちが談笑中。懐かしい顔ぶれとしばし会話をし、設営に入った。それぞれに個性と情熱を注いだ作品たちは、皆素晴らしいものばかりで設営の手が止まってしまう有様。2時間ほどかけやっと準備が終わり、初観客の気分でじっくりと作品たちを鑑賞。様々な表現がありどの作品も、皆輝いていました。21名の参加となる作品展は、ほぼわたしと同年代。新しく加わった作家さん(3名?)で、平均年齢をちょっぴり下げているそうだ・・・。それにしても高齢者とは思えないエネルギッシュで若い表現力には、驚かされるばかり。観にくるときっと元気をもらえること間違いなし。日本を支えてきた世代のパワーに触れてみてはいかがでしょうか??? 第9回えんじんグループ展「山のいきものたち」 ◾️2024年11月16日(土)~22日(金) ◾️午前11時30分~午後7時30分(最終日は午後5時30分まで) ◾️モンベル渋谷店・5階サロン(東急ハンズ正面入り口向かい側) TEL : 03-5784-4005 #
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| 2024-11-18 00:00
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2024.11.14. 日本映画界に新しい風が吹き始めているような、そんな気がするわたし。今日は見落としていた作品“僕はイエス様が嫌い”を観に阿佐ヶ谷へと足を運んだ。ここにあるミニシアターMorc阿佐ヶ谷にくるのは、今回で二度目。この地は青春時代を過ごした街で、“658km、陽子の旅”を鑑賞に今年の1月にやって来た場所。下町情緒が現代と見事にマッチングし、独特な文化を築いている。若者たちが多く暮らす人気の街は昔から文化人や外国人も多く住んでいて、お隣の高円寺と合わせて人気スポット上位に位置し住みたい街ランキングでも常連。そんな街の小さな映画館は、映画好きのファンが集まる隠れ家的なシアターである。 さて今日観に来た作品は “僕はイエス様が嫌い”。2019年に公開された映画は、監督の奥山大史氏が青山学院大学に在学中、卒業制作として初めて手がけた長編映画。「岩井俊二のMOVIEラボ」という番組の聴講生として出演し短編作品を創り高評価をえて、本格的に映画制作を学び始めたらしい。 新進気鋭の監督のデビュー作は、スペインのサンセバスチャン国際映画祭で史上最年少で最優秀賞新人監督賞を受賞したことは知られている。まだ活動しはじめ6年だが、本年、“ぼくのお日さま”で、商業映画デビューをし話題となっています。こちらはまだ観ていませんが、とても楽しみな作品です。若い監督が次々にデビューしはじめ、日本映画界はにわかに画期づいて来ているようです。 さて、“僕はイエス様が嫌い”の感想です。この作品、何か昔の記憶を辿っているようなそんな気分になり、デジャブみたいな感覚を覚えました。もちろん似たような経験はあるのですが、それとも違う何か懐かしくてそして切ないどうしようもない気持ちを描いていました。人はこういう日常の経験を一つ一つ重ねて、大人になっていくのだろう。物語は両親の事情により田舎の雪深い地方の小学校へ転校することになった小学生ユラが、転校先の学校で経験する出来事を感性豊かな表現で描いています。ありふれた日常を美しい風景の中に浮かび上がらせ、人と人の繋がりを丁寧に積み着だし心を揺さぶります。子供たちの透明で豊かな感情の表現が、忘れてしまっている遠い昔の記憶を甦らしてくれる。背景にタイトルにある「神様」が、出てくるのですが、これはまさに子供にしか見えない世界なのかも知れません。「信じるものは救われる」とよく言われる言葉ですが、この作品は否定すると言うわけではないいにせよ「それって、ホント?」と言う、単純な疑問を仕掛けてきます。誰もが一度は思うことではないでしょうか?そんな気持ちが、画面から溢れ少年の気持ちと知らず知らず繋がってしまいます。 重たい部分もありますが、本当に大切なものとは・・・を考えさせられる傑作です。二人の少年の清らかで清々しい演技は、自然体でとても良いものでした。音楽の旋律も美しい映像にピタッとリンクしていて、なんとも言えない世界を創り上げていました。宗教には興味がないわたしでも、讃美歌の歌や旋律には気持ちが動かされます。それはそれとして「あなたは神を信じますか???」わたしにとっての神は母ですネ。間違いありません!! 先日観た“2人ノ世界”や“侍タイムスリッパー”など、インディーズの作品や若い監督さんたちが次々と新しい感性を映像化してくれることに、大きな期待と希望を感じています。 #
by eddy-web
| 2024-11-16 00:00
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2024.11.12. ちまたで話題の映画“侍タイムスリッパー”を鑑賞。時代劇?現代劇??どっちになるのか分かりませんが、めちゃくちゃ面白かったです。面白いという表現は軽いですが、エンタメ性もありかつクリエイティブなシナリオと演出、そして拘りのある表現力にやられてしまいました。前々から時代劇こそ日本映画会が誇る、価値ある文化のひとつと言ってきたわたし。そのままの考えが、代わりに創ってもらえたような作品で本当に感激しました。何から何までわたしの思う時代劇への想いが詰まって余りある作品に仕上がっていて、時代劇の今後が楽しみでなりません。監督並びにスタッフ、そして俳優陣に拍手を贈ります。こんな作品を待っていました。時代は今、時代劇を欲しています。 なんかいきなり熱くなってしまいましたが、あまりに感激をしてしまったのでつい書いてしまいました。アメリカやヨーロッパの諸外国と映画で戦うなら、技術力(CG)や予算、機動力ではなく、日本人の美学とも呼べる拘りと情熱そして、延々と続いてきた文化の継承と改めて気付かされた素晴らしい作品です。低予算でスタッフ一同がこだわり抜いた表現に、心打たれ笑いあり涙ありの心に沁みた作品になりました。映画愛に満ち溢れた作品は、きっと誰の心にも響くはず・・・。ぜひ一刻も早く劇場に足を運んでください。 さて、話は変わりますが映画の感想の前に、この作品の映画配給会社について一言。未来映画社というネーミングの会社は映画製作だけではなく、配給・公開を通して製作費を回収し再び映画を製作するというサイクルの確立を目指す個人商店のようなコンセプト。今作もスタッフが本業以外もこなし、皆で手弁当状態で頑張って映画制作を行なっていると聞きました。ミニシアターでの上映から始まり口コミで話題となり、今や映画界を席巻しているよう。似たような事案では近年公開された“カメラを止めるな!”(上田慎一郎監督署)が記憶に新しい。低予算(200~300万)で制作されミニシアター上映からスタートしあれよあれよと口コミで評判が広がり、最終的には興行収入31.2億を叩き出した話題作。インディーズ映画ながら手作り感万歳の映画愛が花ひらいた象徴とも言える作品となった。お金に物を言わせる大きな映画会社でなくても、こんなに面白い映画を創れるんだ!ということを見事に表現してくれました。今作“侍タイムスリッパー”も、同様のインディーズ作品ですが映画愛は負けていません。見れば納得の作品です。 さて、感想です。まずは脚本の面白さだけでなく、日本の歴史を丹念に紐解き、その時人々がどんな気持ちで時代と向き合っていたのか?をしっかり背景に持ってきているところに共感しました。突然雷に打たれ現代社会に放り出された、幕末の侍。タイムスリップを題材にした作品は今までもたくさんありましたが、今作ほど日本人の魂に近づいた作品はなかったように思います、その昔見た“戦国自衛隊”は青年期の私には夢を見させてくれた。あの作品も記憶に残る1作品である。今作は現代に落ちてきた侍の背景が、時代劇末期の撮影場というところがミソ。時代に翻弄され苦渋を舐め生きている人間たちの生き様が、幕末末期に己の道に真っ直ぐ進んでいきた侍の姿と現代人に重ね、実に見事な映画愛にリンクさせた。生きる上で本当に大切なものとは???を考えさせられる。夢だとか希望だとかを語る人は少なくなった。テレもあるのだろう。今時そんなこと言う奴って思われるのが、きっと恥ずかしいのかも知れない。だがこの作品を見ていると、その熱い想いが素直に湧き出てくるのはまだ、必要なことだと言うこと。何もかも諦めるような、冷めて目で暮らす毎日より、毎日不安と戦いながらも夢を語れる人間の方がかっこいいと思います。また、熱くなっちゃいました。すみません、バカなおじさんで??? とにかく、すぐにでも映画館に出向き映画を観ましょうぅぅ~~。きっと涙でぐちょぐちょになりながら、元気をもらえる作品です。 P.S. 主演の山口馬木也さんが実に素晴らしい演技をしています。まるで幕末の志士が乗り移ったかのよう・・・。映画やTVではよく見かける俳優さんですが、主人公同様に脇役が専門の方と認識していました。まさにこの役にピッタリのはまり役です。劇中「一生懸命頑張って入れば、ちゃんと誰かが見ている」と言う言葉通りの渾身の演技でした。殺陣の練習風景や本番の鬼気迫る表情はたまりません。これぞ役者魂とでも言うのでしょうか、完全に入っていました。映画作りの裏方などの苦労もみえ、とても勉強になりますます時代劇が好きになりました。監督・脚本・撮影・編集をこなした安田淳一さんとスタッフのみなさん、熱い情熱に触れさせてもらい「ありがとうございました」次回作を大いに期待しています。 #
by eddy-web
| 2024-11-13 00:00
| よもやまCINEMA(映画の話)
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