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よもやまシネマ350 “午前十時の映画祭・泥の河”

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日本映画の中で、最も好きな作品と言ってもいい”泥の河“を観た。独自の作家性を持つ小栗康平監督のデビュー作となる名作である。はじめて作品を観たときの、こころのヒダに染み込む感動はいまも変わらない。沢山の映画(日本)を観てきたが、一番好きな作品をあげるとなれば絶対にこの作品。良い作品とかではなく、好きな作品というところがわたしの思いである。そんな作品はそう多くは無い。内容はもちろん、映像表現や音楽、役者さんたちの演技、そして五感にうったいかけてくるこころの動き。すべての場面がこころに染みる作品です。1981年(昭和56年)公開時、モノクロ映像の中に写し出された懐かしい感覚がいまも忘れられない。物語の設定は昭和31年の大阪が舞台。運河の近くで食堂を営む両親と、細やかだが幸せに暮らす家族のひとり息子・信雄のひと夏の体験を叙情豊かに表現している。小栗監督のデビュー作とは思えない細やかな表現力は、ナイーブな感覚を写し出し観客の胸に迫る感動を与えてくれる。時代背景もあるかと思うが、極力説明的表現を押さえ、観る側に感情を読み取らせる映像表現に重点を置いている。言葉では表わせないひとの想いを、きめ細やかに紡いでみせる。子どもから大人へと一歩づつ変わって行く様の、辛くて寂しい一瞬が胸を締め付け儚い。見終わった後に、これほど余韻が残る作品はそうそうない。昭和31年といえば、わたしは3歳。東京の下町で生まれた自分も、似たような環境で育った記憶がある。そんなところもきっとこの作品に強く引かれる要因かも知れない。主人公の子どもたち信雄・喜一・銀子(喜一の姉)が、素晴らしいです。オーディションで300人の中から選ばれた子役たち。感性豊かな表情が画面から溢れ、涙を誘います。撮影時監督自ら、アパートで半月あまり3人と共に生活をしたそうです。卵かけごはんを食べ、銭湯に通い、布団を並べて寝る。当時の貧しい暮らしを共に体感するための環境づくりをしたそうです。映画を観れば、拘りのリアリティは間違いなく伝わってきます。今亡き田村高廣さん演じる父(信雄)や、母役の藤田弓子さん、貧しくとも健気に生きる姿は子どもたちと重なり、人と人の繋がりの大切さが伝わる印象深い演技でした。あとはなんと言っても喜一の母(笙子)を演じた加賀まりこさんの、ドキッとする艶めかしい美しさに尽きます。物語の中枢を担う重要な役を演じ、生きること、生きて行くことの哀しい性を見事に魅せてくれました。この作品は間違いなく彼女の代表作になりました。勝気なイメージの強い女優さんですが、とても綺麗で男っぽいひと。年を重ねても綺麗で大好きな女優さんです。
ひと夏の出会いと別れに凝縮された、子どもたちの小さな胸の中にある優しさ健気さに大切なものを思い出させてくれる秀作です。絶対に観てほしい作品のひとつです。
P.S. 小栗監督はまだ6本しか作品を撮っておりません。でもそのすべてが映画史に残るような作品ばかり・・・。”禁じられた遊び”のラストシーン「ミッシェル!ミッシェル!!」と同じくらい、"泥の河”「きっちゃ~ん!きっちゃ~ん!!」の叫ぶ声が耳から離れません。いまもそうですが、ラストシーンのこのセリフを聞いただけで涙が溢れてしまうわたしです。
♥OMAKE/この作品が好き過ぎて、本の装丁を創ってしまいました。本編に出て来る魚影(黒)に、喜一の母笙子を重ねてみました。いかがでしょうか?

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by eddy-web | 2017-09-28 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ349 “スクランブル”
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2017.9.22

カーマニアにはたまらない映画が創られました。作品は”スクランブル“。カーアクションをメインにした、クライム・エンターテーメント作品である。最後まで終わりが予測不可能とされる構成は、アクション同様ドキドキさせられる。いままでも多くのカーアクション作品は創られ代表されるのが”ワイルドスピード”シリーズ。他にも“トランスポーター””トリプルX“など人気を誇る作品が多いのは、派手なカーアクションと登場人物たちの格好良さがなんと言っても魅力の一因。そして出てくるスーパーカーを映画制作のためとはいえ、いとも簡単に破壊するその潔さ。「あ~ぁ!これで何千万円が???」なんて考えてみてしまうのは、貧乏人の私だけでしょうか?
ところが今回の作品は、そんなもんじゃ無い恐ろしい企画。それこそカーマニアにはたまらないビンテージクラシックカーが勢揃いした、マニアだけで無く観る価値のあるコレクションのオンステージ。世界に2台しか存在しないとされる1937年型ブカッティを筆頭に、でるはでるはの名車の数々。まったくと言っていいくらい知識のないわたしでも、その美しさには一発で魅せられるまさに芸術品たち。時代を超えたその完成度の高さに、溜め息が漏れるばかり・・・。世界中のコレクターから名車借り集め、さらに忠実にレクリエーションされたレプリカを創り、アート作品としても充分楽しめるミュージアムの場となっています。贅沢この上ない作品を創り上げたのは、アントニオ・ネグレ監督。”リーサル・ウェポン“が、代表作のひとつとして知られている。そこに集まった制作スタッフは、先に述べた”ワイルドスピード“などを創ってきたまさに精鋭部隊。そして主人公に名監督クリント・イーストウッドの息子スコットが抜擢され、ビートの効いた音楽と美しいマルセイユの風景をバックにエンターテイメント作品が創られた。ひたすらカッコいいのと、その贅沢な演出に圧倒されます。本編の中で倉庫の中に並んだ名車が現れると主人公たちが溜め息を漏らすのだが、観ている観客も同時に溜め息を漏らしてしまう。まさに一体化してしまうのである。むかし映画館で、作品が終わると同時に拍手が起こったのを覚えている。なにかそんな懐かしい気持ちが蘇りました。マフィアのボス(クレンプ)が保有するフェラーリの真っ赤なボディが並ぶ倉庫は、目に入った瞬間鳥肌が立ちます。その一台1962年型250GTOは美しさと気品を醸し出す一品。オークション史上最高額の39億円を記録しているとのこと。これだけでも映画の凄さが窺えるのだが、その車を使ったアクションシーンってみなさん想像出来ますか?「えっ!ちょっと待ってよ!!」って思わず声を出してしまうような、カーチェイスの連続には違う意味でハラハラドキドキ。芸術品の凄さは解っても、お金の感覚はいまいちピンとこないわたし。1億だ2億だの言われても???である。ただその美しい姿を壊すのだけは止めてと、こころに願いつつラストへ・・・。何度も言いますが映画としても楽しめるのと、お宝品を目の当たりにできることが出来る一度で二度美味しいお得感満載の作品です。この手の作品はきっとこれからも創られるのだろうと予測するわたし。オタク文化が世界中に拡がる現在、求めるひとがいる以上そこを満たす作品作りは映画界の使命ではないでしょうか?個人としては、多いに期待大です。よろしくお願いいたします。
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by eddy-web | 2017-09-26 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ348 “午前十時の映画祭/トリフォーの思春期”
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2017.9.19

“午前十時の映画祭/トリフォーの思春期”を鑑賞。ヌーヴェルヴァーグを代表する監督のひとりトリフォー。52歳という若さでこの世を去ったが、今もなおその多くの作品は評価が高い。前回“突然炎のごとく”を鑑賞し、監督の映像表現に対する並々ならぬ情熱や独自の拘りを感じる事が出来たわたし。生涯30本の映画を撮ったら引退をと生前語っていたそうだが、残念ながら生涯で製作した作品は25本にとどまった。今回観た“トリフォーの思春期”ははじめてで、トリフォーのとタイトルにつけるくらいだからかなりの自信作ではないでしょうか?1976年の作品ですが、全体では後期のもの。きっと一番撮りたかった作品だったのでは・・・と観賞後ふと思った。作品は特に主人公を据えず、出ている子どもたちとその周辺にいる大人たちの日常をドキュメンタリー風に描いている。冒頭のタイトルロールで映る、子どもたちの70年代ファッションがじつに懐かしくいきなりタイムスリップ。ごくごく見かける日常生活の断片を、丁寧にそして愛情深く見つめ紡いでみせてくれました。国は違えど一度は通る思春期の不安やお焦がれ、そして勇気や冒険など、子どもたちを通し思い出させてくれる。それは監督がとらえた子どもたちの中にある、未来への大いなる輝きが溢れだし温かい。素人(オーディション)であろう出演の子どもたちは素直に役を演じ、まるでそばにいる気さえしてくる。ゆったりとした時間の流れが妙に心地いい。子どもの頃は時間がとてもゆっくりと動いていたことを思い出させてくれる。そして大人に対するあ焦がれはどんどんと膨らみ、押さえきれない感情にワクワクドキドキの毎日が続いていたことも・・・。忘れていた感情が沸き上がり、子どもたちの言葉や行動が自身と重なり合う。ラストのキスシーンのなんとピュアなこと・・・。観ているこちらが、思わず赤面しそうである。こんな時代に戻れたら・・・と思う大人はきっと沢山いるでしょう?奇麗ごとだけで表現していない、ありのままの生活はすんなりとこころに入ってくる。愛に溢れた作品はきっと監督そのものではないでしょうか?
物語の後半に発覚する転校生ジュリアンの虐待事件。そのことについてクラスの子どもたちを集めて語りかけるリシェ先生の言葉は、とても感動的でした。「人生は生易しいものではない、強く心を持ちなさい。」と。
P.S. リシェ先生のことばに感動した自分ですがもうひとつ、「先生はこどもの頃、学校が大っ嫌いだった。だから好きになるために先生になった。」と言ったこのセリフが忘れられません。いい先生です。見習いたいと思うわたしです。

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by eddy-web | 2017-09-19 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ347 “エイリアン/COVENANT”
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2017.9.15

リドリー・スコット監督のメガヒット作品“エイリアン”、待望の最新作コヴェナントが公開された。第1作“エイリアン”が公開されたのが1979年。今から38年も前になる訳だが、はじめて作品に触れた瞬間の衝撃は、今までに感じたことの無いものでした。SFホラー作品に登場してきたさまざまな異星人やモンスターたち。そのどれにも属さない、斬新で異形なキャラは観るひとの度肝を抜き世界中の映画ファンを驚かせた。そのデザインはシュルレアリスムの巨匠デザイナーH・R・ギーガーが担当し、観た事のないデザインはコアなファンを生みその人気はいまも色あせてていない。画集も発売され、ギーガーの名も“エイリアン”同様、世界の知ることとなった。そして映画は続編が次々に創られ、その度にファンたちを虜にしてきました。物語もじつに緻密な構成で、単なるモンスター作品では無く、王道を行く気品さえ感じるシリーズとなり今回へと・・・。
その度に新しい切り口が用意され、ファンをうならせてきたシリーズ。果てしなく続く、人間とエイリアンとの戦い。1作目から主人公に女性を据え、人間(女性)の芯の強さや母性などをからめ表現された作品はSF作品の代表と言っても過言ではありません。
今回の作品は、過去にさかのぼりエイリアン誕生の秘密に迫る物語となっている。スコット監督自らがメガホンを獲り創り上げた作品には、いったいどんなメッセージが込められているのだろうか?興味はつきない。
さて感想である。第1作から続くなんとも言えない独特のダークな世界観は健在で、あっという間に物語りの中へと引きずり込まれる。映像の視覚効果は何度もアカデミー賞などで評価され折り紙付き。冒頭の無機質な部屋(白い)の中での人間とアンドロイドの会話からスタートする物語は、これからいったい何が起こるのだろうかと観る側を洗脳する。
2012年に公開された“プロメテウス”を観たときのことを思い出す。作品がエイリアンに繋がっているとはつゆ知らず観たわたし。タイトルにエイリアンという言葉が全然使われていないことと、前もって情報を入れずに鑑賞する自分は、スコット監督の新作と完全に思い込んでいました。物語が進み途中現れた、宇宙船の残骸と宇宙人と思われる化石。見た瞬間「エッ!!」と思い、はじめてエイリアンと繋がっていることを理解した。内容はかなり難解で、自分の中でエイリアンに繋がるまでには少々時間を費やした。しかしその時のもやもやした印象が、今回解き明かされることとなった“エイリアン・コベナント”。エイリアンの起源に迫るとうたっている今作品だが、それをまた裏切るような含みある展開はますます先の読めなくなっている。そして作品は新しい物語への序章へと・・・。人とエイリアンとの長い戦いをテーマにし、その繋がりを紐解き新たな創造の世界へと誘う。それは神の世界とも言うべき「人間の創造」へと進んで行く。「鶏が先か、卵が先か。」と言うような展開は、いつになったら結末を迎えるのでしょうか?これからもこの作品から目が離せません。
P.S. アンドロイドのデヴィットとウォルターを演じたマイケル・ファスベンダーは、いま乗りに乗っている俳優さんのひとり。そしてヒロイン、ダニエルズを演じたキャサリン・ウォターストーン(ファンタスティク・ビーストと魔法使いの旅)。ふたりの確かな演技は、スコット監督の創造世界にしっかりと答えた見事なものでした。今後も楽しみな二人です。そして公開間近の監督プロデュース”ブレードランナー2049“、いまから楽しみでなりません。私の中でSF作品ベスト5に入る続編が、いよいよ35年ぶりに公開される。あの素晴らしいラストシーンを超えることが、いったい出来るでしょうか?正直不安と期待でいっぱいである。


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by eddy-web | 2017-09-18 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ346 “三度目の殺人”
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2017.9.11

いま、最も輝きをはなっている是枝裕和監督の最新作“三度目の殺人”を鑑賞。重たい物語だったが、いろいろと考えさせられる印象深い作品となっていました。観賞後、これほど内容から抜け出る事の出来ない作品は久しぶり。まるでのどに魚の小骨が刺さった感じで、気になって気になってしょうがない。何が正しくて、何が間違っているのかさえ解らなくなる。劇場を出た後、頭の中をぐるぐると回る登場人物たちの顔。真実はひとつという事だけは解るのだが、それすら正しいことなのか???。社会的テーマをいつも投げかける是枝監督の強いメッセージが、ボディにじわじわと効いてきて苦しい。こんな作品はしばらく出会っていない気がする。昨年観た“怒り”以来の後味を味わった。人間の中にある、理解不可能な念いや怒りそして行動。そんなものが凝縮し描かれた“三度目の殺人”は、見る側の答えを見つけさせようとしているのかも知れません。司法や裁判のあり方など、普段はあまり触れる事のないことにも言及した作品には考えさせられた。裁判員制度が平成21年度から始まった日本ですが、このあたりも含め考えさせられることが多い。
作品の中で、「忖度」とか「理不尽」とか「器」とか言葉の解釈が人によって異なるような表現が沢山出て来る。ここもまた、是枝監督の計算と演出が臭う表現で頭の中を駆け巡る。あっあっ~~!!っと思わず叫びたくなる自分がいる。どうしようもなく押さえきれない感情が、行き場を失いもがいている。とても疲れた・・・。でも、大切な事を教えてもらった気がする。
出演者の演技が、みなさん半端無く共鳴し合っていて重厚感がひしひしと伝わる。福山雅治さんは是枝監督と仕事をするようになり、ひとまわりもふたまわりも大きくなったような気がします。もともと才能のある方とは思いますが・・・。相手役の役所広司さんの凄みというか存在感はもう言葉では表す事が出来ないほどです。面会室でのガラス越しの会話シーンは、どの描写も息が詰まる攻防の連続。ガラスに映る顔が相手の顔(実像)と重なる映像は、二人のこころが投影されている見事なシーンでした。ふたりの目力は怖いくらいで、言葉以上の力を表していました。ふたりは完全に一体化し、共鳴した演技を披露しています。脇をかためている俳優さんたちがまた見事で、これもまたふたりに触発されたのではないでしょうか?広瀬すずさんは最近、映画に引っ張りだこですが、こう言う作品に沢山でてくれるといいなと個人的には思っています。可愛いさを売りにした作品が多く、何かもったいないそんな気がしています。いまが春なのは解りますが。力のある表現力を持っているので、チャラチャラした感じの作品はどうも・・・。全部観ている訳ではありませんので・・・おじさんの戯言と聞き流してください。この作品でも、とてもいい演技されていました。
嘘の裏側にある真実と、真実の裏側にある嘘
あなたは、どちらを選びますか?わたしは・・・?
P.S. 主演のふたりも凄いのですが、それを納める映像の美しさが実に見事。光と影のコントラストを巧みに使い、重厚な臨場感を創り上げています。“一昨日前に観た“ダンケルク”も奇麗でしたが、この作品も見応えがあります。そして音楽がまた、何とも言えない味わいを奏でさらに印象を高めていました。音楽は“最強のふたり”で音楽を担当した、ルドヴィコ・エイナウディで、これまた驚きの起用でした。
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by eddy-web | 2017-09-11 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ345 “ダンケルク”
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2017.9.09


クリストファー・ノーラン監督最新作”ダンケルク”公開初日、期待に胸膨らませ劇場へ。劇場に行って思わず吃驚!公開初日ということもあるのだろうが、満員の賑わいで人また人。公開前から話題の作品は、ノーラン監督の拘りが溢れんばかりの力作でこんな戦争表現があったのかと息を飲む。いままで沢山の戦争映画を観てきたわたし。表現の違いはあれど、メッセージが込められた秀作が多いのは確かなこと。最近では”ハクソー・リッジ“がとてもこころに響く作品でした。リアルな映像表現は、戦争の愚かさと怖さをしっかりと胸に刻むことができた。今回の”ダンケルク”も実話がもとなのは一緒で、リアリティの追求という面も近いものがある。しかしノーラン監督の拘りが爆発するこの作品は、いままで体感した事の無い臨場感に溢れ、静かな感動を与えてくれました。こんな形で戦争を表現することが出来るのだと、なにか映画表現の奥深さを感じさせてくれます。主人公を特定せず戦争の現実をひたすらさまざまな角度で見つめた表現は静かにこころに沁みてきます。予告でも語られている監督の拘り、CGを使わないリアリティの追求。いままでもビルを丸ごと爆破し破壊したり、どう見てもCGだろうと思うような4次元世界の構築などハリウッドきっての職人肌は、クリエーターの真骨頂をまた新たに創り上げてくれました。セリフを極力抑え、関わる人々の気持を真摯に描き戦争のむなしさがじわじわと押し寄せてくる。若い兵士たちを演じた俳優さんたちは、ほぼ無名のひとたち。だがそれぞれに自分の役と向き合い、その役になりきっていて素直に感動を誘う。また音響効果がそれぞれの映像に合わせ見事にリンクし、緊張感があおられる。音をこれほどたくみにつかった演出効果は、言葉では表せない感覚をおおいに刺激しドキドキさせられる。突然鳴り響く飛行機の爆音、鉄板を打ち抜く銃弾の音、見えないものに対する恐怖が増長し五感が奮い立つ。そしてそれとは真逆に映像(遠近法)が美しく、まるで絵画でも見せられているような静けさが見事である。戦争を美化しているのではなく、きっと日常の中にある美しいバランスがいとも簡単にくずれてしまう現実をノーラン監督は表現したのだろう。戦争ものの作品の多くは、リアルさを追うことに重きをおき血なまぐさい演出が目立ちます。それはそれで必要なことですが、戦争の現実を知らない世代には画面の中の出来事としてしか残らない。残念だがそこはやはりバーチャルの世界なのである。しかし今回の作品“ダンケルク”は、バーチャルではあっても、登場人物たちと自身を重ね合わせてみれる五感に訴える作品ではないでしょうか?うまく言葉にできませんが、新しい戦争表現と言ってもいいそんな映画です。青い空、蒼い海がとても印象的に映し出され、静と動の時間軸をまるでパズルのピースをはめていくようで・・・。生と死を静かに考えさせられました。女性や子どもたちでも観る事の出来る、いい作品ではないでしょうか?

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by eddy-web | 2017-09-10 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
TVドラマ「やすらぎの郷」で読まれた、こころに沁みるローランサンの詩。
e0120614_17224216.jpg倉本聰さんのオリジナル脚本作品が、昼帯ドラマで放送中なのはご存知でしょうか?「やすらぎの郷」という名のドラマは、誰にでも平等に訪れる老いをテーマにしたシニア世代の作品。出演者は晩年の名優たちで、みなほぼ自身を演じているような物語である。地味だがとてもこころに沁みる演出が、実に倉本さんらしいヒューマンドラマに仕上がっている。ここ数回で放送された物語の中で、マリー・ローランサンの詩が効果的に使われています。以前にも何かの映画だったかTVドラマでも使われたことがあり、その作品自体は思い出せないのだが、とても印象に残っている詩ある。ふたたび触れる事になったこの詩を、みなさんに贈ります。とても深い詩ではありませんか・・・。
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【 鎮静剤 】 マリー・ローランサン /堀口大學 訳

退屈な女より もっと哀れなのは 悲しい女です。

悲しい女より もっと哀れなのは 不幸な女です。

不幸な女より もっと哀れなのは 病気の女です。

病気の女より もっと哀れなのは 捨てられた女です。

捨てられた女より もっと哀れなのは よるべない女です。

よるべない女より もっと哀れなのは 追われた女です。

追われた女より もっと哀れなのは 死んだ女です。

死んだ女より もっと哀れなのは 忘れられた女です。


(亡くなった昔の恋人(詩人アポリネール)を思い、書かれたとされる詩)

※マリー・ローランサン/フランスの女性画家・彫刻家
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by eddy-web | 2017-09-08 00:00 | ひとこと・ひとごと・ひとりごと | Comments(0)
よもやまシネマ344 “ELLE”
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2017.9.05

オランダ出身の映画監督ポール・バーホーベン(79歳)の、最新話題作 “ELLE”を鑑賞。バーホーベン監督と言えば、良くも悪くも常に話題作を提供するひと。わたしはわりと好きな監督だが、やはり印象に残る作品となれば“氷の微笑”。かなり際どい描写が当時話題になり、主演のシャロン・ストーンはこれを機にスターダムを一気に上り詰めた。評論家の間では常に賛否が大きく分れ、話題には事欠かない監督だが、常に新しい挑戦をしていると何かのインタビューで読んだ記憶がある。という事は、どんな意見をも真っ向から受け止め前に進むという信念の持ち主のようだ。過激な性描写などが話題となった“ショーガール(1995年)”では、ゴールデンラズベリー賞(最も最悪な映画賞)10部門にノミネートされ内6部門を獲得。授賞式にも出席し、「ショーガール」の後ならもう怖いものはないと公言しこれまた話題に・・・。不名誉な賞にも関わらずどうどうと授賞式に顔を出す、ある意味すごいパワーの持ち主である。
前置きが長くなりましたが、“ELLE”はバーホーベン監督の本領発揮といった逸品で、わたしの中ではいままで観たどの作品(ロボ・コップ、トータル・リコール、氷の微笑、インビジブルなど)より一番。監督の総て作品を観た訳ではないので、偉そうなコメントは出来ませんが・・・。昨年度のアカデミー賞にノミネートされたのは、それだけ高く評価されたという証ではないでしょうか。
監督以外の近年観たいろいろな作品と比べても、強く印象に残る映画となりました。スリラーというジャンルにくくられていますが、そんな単純なものではありません。主人公ミシェルを演じたイザベル・ユペールの強烈な演技力もありますが、おんなの底力というか恐ろしさが満開です。こんな人物はそうそうお目にかかれませんが、総ての女性たちの中に潜んでいるものならと背筋が寒くなりまします。幼年期の体験などで裏付けられたような性格にも思えますが、見終わるとただそれだけではない主人公のもって生まれた強さを感じさせます。冒頭いきなりはじまるレイプシーンは強烈だが、その後の彼女の行動があまりにも冷静で「嘘だろう!?」と思わせる。ここから本当の彼女(女)の、強さと怖さが爆発してゆく。エロイところもエグイ描写も数あるが、この辺りはバーホーベン流演出と納得。それにしても最後の最後まで、どうなるのか息を呑んでみてしまった作品は、イザベル・ユペールのひたすら凄い演技に圧倒されぱなし。ただ強い女ではなく、自然に自由にその場を自分の思い通りにしたたかに生きるそんな生き様に、ちょっと引かれるのは何故だろう・・・。女性の概念をかえる作品と言ってもいいほどのインパクトが詰まった映画である。怖いと思って観てるうちに彼女の魅力に吸込まれている自分がいる。まるで魔力にかかったかのようだ・・・。不思議な作品である、なんとも説明しがたい高揚感が残ってしまうのは私だけでしょうか?
最後にひとこと。出て来る登場人物はみな危うい個性の強い男女ばかり。だがはっきり言って男はみなこどもで、おんなはみな主人公以外もおとな。見終わるとこのことに気づかされる。ちょっと悔しいがこの作品の中では、まったくいいところのない男たちである。
P.S. イザベル・ユペールは御歳64歳。何と言う色気だろう、そして風格。まさに最強(狂)の女登場である。(原題:Elle,フランス語で「彼女」を意味する)観て損のないお薦め作品です。

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by eddy-web | 2017-09-06 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
秋の訪問者ーイトトンボと目高の赤ちゃんたち。
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e0120614_1620319.jpg 魚々苑-6
久しぶりの投稿です。暑い暑い夏がようやく終わり、秋の気配が少しづつ近づきはじめた今日この頃。一ヶ月くらい前倒しでやって来た夏は、連日35℃近く温度もあがり、大変な7月・8月となりました。そんな中、元気に目高たちが産卵したくさんの稚魚が生まれました。目高を飼い始めかれこれ7~8年。あれよあれよと言う間に、ベランダはビオトープで埋め尽くされました。10数個のも及びそれぞれ、黒、白、青、赤と分けられまるで目高の学校。今年ははじめて白と青の孵化に成功し、沢山の赤ちゃんが生まれました。今では大分成長し元気にビオトープの中を泳ぎ回っています。そんなベランダの水生植物に訪れた秋の訪問者。可愛いイトトンボ。小さい羽根を拡げで飛ぶさまは、健気で美しい。毎年訪れるお客さんは、今年もちゃんとやって来て、目高の赤ちゃんとご対面。こんなひとときに、ほんのつかの間の安らぎを覚えるわたしです。
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by eddy-web | 2017-09-04 00:00 | 魚々苑(魚と草花の話) | Comments(0)



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