2016.Apr.05
大人の童話とも言うべき、室生犀星の幻想文学“蜜のあわれ”が映画化さました。主人公の少女赤子を演じるのが、いまわたしが一押しの女優二階堂ふみが演じています。若手女優ではいま一番注目されているであろう彼女が、無邪気でエロティックな金魚の精を見事に演じ男のこころを翻弄します。二階堂さんの作品は結構みていますが、独特の雰囲気をもつ生まれついての女優さんという感じがわたしの印象。見る度に全然ちがうおんなを演じてくれますが、どれも彼女でなければ駄目と思えるものばかり。今回も彼女以外、この役に合うひとは思い浮かびません。アンニュイな感じで、おとこを手玉に取る小悪魔的少女が見事です。昔なら、さしずめ加賀まりこさんと行ったところ。昭和初期が舞台なので緩やかな時間の流れのなか、交わす言葉が何とも言えず耽美でエロティシズム漂う作品になっています。まさにおとなのお伽噺。それでも全然やらしさはなく、ときに切なくときに滑稽で年齢を超えても男はおとこ。そんな感じが画面いっぱいに溢れ出ています。お相手の老作家を大杉蓮さんが演じ、これがまた妙に色気が出ていて可愛い。絶妙な間合いで二階堂さんと絡み合います。他にも愛人幽霊役で真木よう子、金魚売りに永瀬正敏、そして室生犀星と親交が深かった芥川龍之介役に高良健吾を配し見事に犀星原作の世界観を甦らせてくれました。その他にも愛人役の韓英惠さん、芥川の女を演じた岩井堂聖子さん、どちらも出演時間こそ少ないですが存在感のある演技が光っておりました。
美術や照明、音楽そして衣装など魅かれるもが多くそれだけでも充分楽しめます。映画と言うよりかは舞台を観ている感が強く出ていて、そこが原作のもつ世界観をよく表現しています。古き良き時代の匂いが何とも言えず心地よかったのは、年をとった証拠でしょうか?
ちょっと前ですが、二階堂さんが演じた“この国の空”の女性も雰囲気のある人でした。今回の赤子といい男はこう言うタイプに弱いですね・・・。というか私が弱い???。最後に赤子の衣装と幽霊田村ゆり子の衣装の対比(赤と白)は本当に奇麗で、こころに焼き付いたことを書き記しておきましょう。そして耳に残るセリフ
「おじさま、あたいを恋人にして頂戴。短い人生なんだから、愉しいことでいっぱいにするべきよ」。この
あたいという言葉の響き、妙にくすぐられます。こんなこと言うと危ないオジさんですか。「そうです、わたしが変なオジさんです。」
P.S. 芥川を演じた高良健吾さん雰囲気でたましたねェ~。