2015.Apr.14
“バードマン”を鑑賞。この作品は、今年度のアカデミー賞作品賞はじめ4部門を受賞した超話題作。久しぶりに力のある映画を見せられた感じがします。とにかくリアルな演出と演技力が火花を散らす、大人の作品である。俳優さんたちのしのぎを削る演技に、圧倒され興奮しました。主演のマイケル・キートンが素晴らしい。なにかが乗り移っている感じで、まさに主人公そのもの。バットマンの時からファンですが、こんなに凄い俳優さんだったんだとあらためて認識しました。監督(アレハンドロ・G・イニャリトゥ)が彼をキャスティングしたのは間違いなく計算でしょう。この監督も徒者ではありません。「バットマンとバードマン」はリンクしキートンの演技へと繋がっているのではないでしょうか?残念ながらオスカーは逃しましたが、ゴールデン・グローブ賞主演男優賞を見事獲得。こころから拍手です。本当に素晴らしい演技でした。キャスティング的にはそう多く俳優さんが出ている方ではないが、出演している俳優さんたちひとりひとりが真剣勝負のガチで演技をしています。それが画面からひしひしと伝わり、場面場面にあたかも自身が遭遇しているようなリアリティを感じます。俳優の演技力がこんなに問われ、そして作品の善し悪しを決定するような映画はここしばらくお目にかかったことがない。設定がブロードウェイの舞台ということもあり、主人公たちとの距離がより身近に感じ画面の中に引きずり込まれる。カメラワークが凄い。俳優さんたちの動きに合わせ、ハンディで追いかけ撮っているようだが観客目線の動きに自分自身がその場にいる気にさえなってしまう。何度も言うが、こんなライブ感が味わえる斬新な演出と撮影技術に喝采です。当然ですが、撮影賞も手にしております。もうひとつ、音楽(音響効果)の巧みな使い方がこれまた緊張感を造り出し、見事に物語を盛り上げています。ドラムの音は見終わったあとも、ズ〜っと胸の奥で鳴り響き一日中止まりませんでした。内容は過去の栄光(ヒーローとして)にしがみつき、晩年再生を図ろうとする主人公の物語だが、「生きることの難しさ、生きてることの素晴らしさ」を考えさせられる。
だれもが持っている「生」への問いかけを、私たちの代わりに主人公が代役として演じてくれているような気分になる。夢(芝居)と現実(私生活)を交差させ心の内面を、絡んだ糸を一本一本丁寧に解いて見せてくれた巧みさに大満足のわたし。ラストはちょっとドキドキしましたが、ファンタスティックなカットにそっと胸を撫で下ろすことが出来ました。みなさん、お薦めです。
Shoji UEKUSA