
'08.July.26
「ポ−ニョ、ポ−ニョ、ポニョ、さかなの子♪」の主題歌が耳から離れない。呪文のように口から出ていて、フッと気付きあわてて我にかえる。話題の宮崎アニメを家族で見に行った。夏休みということで、会場は家族連れでいっぱい。今回の作品は、監督がこどもたちのために描いたとメディアで言っている。ここ数本の作品はややこどもには難しいテ−マが多く、どちらかと言えば大人向けの作品(もののけ姫・千と千尋・ハウル)が多かった。もちろんどれも素晴らしいのだが・・・。監督は徹底しこどもに解ることを、今回の作品でテ−マに上げた。そして内容だけでなく、表現に於いてもCGを排除しアナログ技法を貫いた。わたしは絵本のペ−ジをめくっていくような、この表現がとても好きだ。CG全盛のいま、逆に新鮮である。もちろん中身がいいからなのは言うまでもないことだが。CGは使ってなくても、相変わらず美しい自然描写。また冒頭でさりげなく汚れている海の様子をいれ、自然保護の警鐘を流している。物語全体の美しいシ−ンをいっそ強調する、底引き網の現実が逆になまなましい。宮崎監督ならではの細やかな演出が感じられる。キャラもシンプルでかわいい。ポニョは魚→半魚人→人間と姿を変える。半魚人の姿はやや気持ち悪いのだが、愛嬌があり笑える。こどもたちにはどう写ったのだろう。
話しは小さな港町ではじまる、少年(宗介)と魚(ポニョ)の恋物語。現代版、人魚姫といったところ。話しの後半で町が水没し大変なことになる。ただ何故か恐怖心は涌いてこない。表現の描写が美しいからなのか・・・。いやもっと深いものがある。そして暮らす人々がおおらかである。逞しいというのか強いというのか、自然と真正面に向かい合っている。また、沈んだ町の上を魔法で大きくなった、おもちゃの船に乗り渡るシ−ンは幻想的で夢いっぱい。さすがのひとこと。水面下の町の上を、ゆうゆうと泳ぐ古代魚の姿は、不思議とこころが癒される。各メディアで賛否が分かれているようだが、わたしには大好きな作品にまたひとつ出会えた喜びでいっぱいである。今回の作品で特に好きなシ−ンがある。いったん海に連れ戻されたポニョが、大波に乗り宗介の乗る車を追い掛けてくる場面。波の上を走る姿がかわいいのと、ひたむきに少年を想うこころが伝わりまた涙。こどもたちでいっぱいの会場で、おやじがひとり泣いているのはやや怪しいかぎりである。ちなみにまわりで泣いている人はいませんでした。ぜひ、ご覧あれ。