'07.Dec.27.

師走の忙しい時間をぬけ、板橋美術館に足を運んだ。わたしがグラフィックデザインを目指すきっかけになった、巨匠ブルーノ・ムナーリの展覧会がやっているためである。19才の頃、一度だけ友人を訪ね近くに来たことがある。閑静な住宅地の中、静かな森に囲まれ美術館はある。寒空の下、人気はなくひっそりとそれは建っていた。来年の1月半ばまでの開催なのだが、持ち越しはしたくなく、慌てて出かけて来た。思っていたほど大きなスペースではなかったが、ムナーリのすごさを感じるには充分すぎる作品たち。絵本はもちろん、その原画やアイデアをまとめたラフがところ狭しと並んでいた。グラフィックだけでは満足出来ず、あらゆるジャンルの壁を超えて作品を創っていたムナーリ。晩年もそのエネルギーは衰えず、それどころかますます増していたようである。本当にすごい!ムナーリの作品を見ていると、自分も含み、いま世に出ている新しいとされるグラフィックの作品たちは、その後をただ追っかけているだけに思えるのは私だけだろうか?柔らかい発想力に声もでない。私がデザインを目指すきっかけになった作品「きりの中のサーカス」もそこにあった。晩年のムナーリの映像が会場で写し出されていたが、その瞳がこどものように無邪気だったのが印象的であった。こんな人はもうぜったい出てこないのだろう・・・。
最後に展示作品の中に、武満徹が作った打楽器奏者のための図形楽譜「ムナーリ・バイ・ムナーリ」がある。ムナーリの「読めない本」に手を加え作られたそうだが・・・。傍にコメントがあり、こう書かれていた。武満は「奏者は色を聴き、メッセージを全身で送りだし、永遠の時空間を
『無なり』へと変貌させる」と語っている。と記されていた。ムナーリの想像力の源はまさに、この
『無なり』から生まれているのだと思う。
B R U N O M U N A R I
生誕100年記念
ブルーノ・ムナーリ展
「あの手 この手」
●12・1(土)→1・14(祝)
9時30分→17時
●板橋区立美術館
年末年始
(12月29日→1月3日)休館