07.Dec.10.

見たくてしょうがなかった映画を見た。森田版「椿三十郎」である。黒澤監督にどう挑むのか、と野次馬根性で見ている自分も実は少しあった。しかし森田監督、お見事の一言である。オリジナルを大切にしつつ、自分らしさを存分に出し、楽しんで創ったようである。主演の織田裕二が、どんな三十郎を演じるのか?監督と同じに、三船三十郎に挑む彼もまた、大変だったと思う。ある番組でこの映画のプロモーションを兼ね、俳優陣のインタビュウーをやっていた。織田はそこで脚本のすばらしさを語り、全然古さを感じない作品だと言っていた。むしろ新しささえ感じるとも・・・。あと三船さんを意識しないというのは嘘になるが、あくまで自分らしさを出すことをこころがけ演じたといった。はじめ少しオーバーな感じを受けたが、これは計算された森田演出で、全編誇張した創りになっていた。まさにエンターテーメント。脇を固める俳優たちも、良い味をだして大いに笑わせる。音楽も昔のままで、懐かしさがこみあげた。最後の有名な決闘シーンも、いろいろな問題をクリアし違った意味で、迫力のある殺陣になっていた。二本の「椿三十郎」は同じでありながら、同じではない作品である。わたしはどちらも大好きである。

あっ!そうそう、ちょっとひとことだけ。襖を開けるシーンが何度かでるのだが、やたらオーバーでコントを見てるような気分になった。あと、若侍を演じた俳優たちがとても、新鮮。初々しさと緊張感がしっかりはまっていて、とても良かった。松山ケンイチ以外、みなオ−デションで選ばれたそうである。最後にもうひとこと。玉緒さん演じる奥方の名ゼリフ「あなたは抜き身の刀のようなひと。よくきれる」「でもほんとうに良い刀は鞘に納まっているものですよ・・・」。これはほんとうにこころに残る。わたしはやはり、まだ三十郎。いや五十郎である