07.Nov.22.
今年、カンヌでコンペティション部門グランプリを受賞した、
河瀬直美監督のデビュ−作品
「萌の朱雀」を鑑賞した。最近、一番気になる監督である。グランプリを取った
「殯の森」をと思ったが、はじめはと考え直し見ることにした。静かに物語ははじまり、静かに進んで行く。映画はエンタテイメントと思う人にはすこし???作品かも・・・。わたしはこだわりのない、ただの映画好き。知らぬ間に、この映画に浸りきっていた。
山奥の村の、ひっそりと暮らす家族が画かれている。時間がゆっくり流れていく。決して楽とは言えない日々の暮らし中、小さな幸せに感謝する家族がそこにいる。そんな家族に、突然訪れる不幸の兆し。最後は・・・。
どんなにささやか人生にも、生きてゆくことには重さがあり、人は皆それを背負っている。そんなことを思い知らされる。少し歯車がくるっただけで、家族という形が壊れてしまう。たんたんと画かれた作品に心引かれた。

女性ならではの、一歩もニ歩も引いて捕らえている感性ではないだろうか?とくに印象的だった、音の使い方。全編で聞こえる自然の音。「葉を揺らす風の音。雷鳴、雨音、ひぐらしの声。草を踏む足音、風鈴の音色。納戸を開ける音や竈の火が燃える音。」それは確かな生きている音なのだ。映像も素晴らしい。途中8mmで撮影した場面をいれ、主人公二人の心の動きを臨場感とともに出す巧さ。27歳でこれを撮った河瀬監督のこれからが、本当に楽しみな自分である。(1996年の作品)
P.S.
出ている俳優さんたちは、國村隼をはじめ、みな素晴らしいのひとことだが、おばあちゃんの自然体の演技がこころに深く残った。ドラマなどで活躍している、山口沙弥加が主人公の少女時代をやっていたのを、エンディングで知った。