
07/Nov.20
ある深夜、何気なくつけたTVのニュ−ス番組。ひとりの青年が取り上げられていた。彼は自転車のうしろにリヤカ−のようなものを付け、その上に水車をのせ山道を走っていた。何とも不思議な光景がそこにはあった。私も若い頃、自転車で日本中を旅したことがあり、リヤカーを引いて旅する人や乳母車を押して旅する人と出会った。世の中にはいろいろな人がいて、それぞれに何か目的を持ち旅をしている。TVに映ったその青年は、ある本を日本中の公共図書館に置いてもらいたいと、ひとり旅を続けているとのこと。荷台の水車は本棚の代わり。青年をそこまで駆り立てるものは何だろう。どんなに小さな山奥の図書館でさえ訪ね、その本をぜひ置いて欲しいと係の人にお願いしていた。彼はすべて自費でその本を購入し、回っているそうだ。
その本の題名は
「百年の愚行」。100枚の写真と寄稿文で構成された本である。以前から知ってはいたが、手元にはなく、さっそく手に入れた。さまざまな賞をもらっている本である。「20世紀を振り返り、21世紀を考える100枚の写真」と帯びに謳っている。一枚一枚がほんとうに重たい写真の連続。LIFEなどで目にしたことのある写真も含まれていた。青年が感じたものが、ひしひしと心にしみてきた。胸が痛い。人はどれだけの犠牲の上に幸せを掴んだのだろうか?いや、ほんとうは幸せではないのかもしれない。人はだれも過ちをくり返し生きているもの。でも残してはいけない過ちもある。この本は静かに私たちに呼び掛けてくる。

青年はもう1年以上旅を続けている。日本中を回るだけで、まだ1年以上かかると言う。彼はこの本以外も自分で選んだ、見て欲しい本を持ち、図書館などない山奥の村など、先々で自転車をとめ本を人々に手渡している。いまこの時間にも・・・。回ったすべての図書館に、この本が置かれている訳ではない。時折彼は、回った図書館を再び訪ね置いてくれているか、確かめたりもしている。ないと心が沈み込む。それでもまた彼は走り出す。彼のような青年がいることを、素直のうれしい。頑張れ!なんて言えない自分が少し恥ずかしい。彼の夢(目的)が叶うことを心から願いたい。そして生きることにもっと真剣にならなければと、いまさらながら思った自分である。