
青春小説の古典的名作として、今なお世界中で読み継がれているサリンジャーによる長編小説。1951年に出版された当時は、主人公ホールデン(17歳)の言葉遣いや態度を教育委員会が問題視し、学校や図書館から追放される騒動になった。21世紀になった今でも、アメリカ国内では思慮的な記述や、過度の暴力、性行為のシーンなどが問題視されるなど話題がつきない本書。それでも若者に絶大な支持を受ける作品は、現代社会でも通ずる社会や大人の欺瞞や建前を、インチキとして拒否し、その対極として子供たちといった純粋で無垢な存在を肯定する。その結果、社会や他人と折り合いがつけられず孤独感を深めていく主人公の心理が一人称で描かれ、共感を得ている。今もあるあるな、生きるのが下手な人たちへの桜援歌とも言える作品。今回はタイトルだけでも十分そそられるのだが、青春期の不安定な心の揺らめきをどう表現しようかと考えていたとき、見つけた1枚の絵にピタッとイメージがリンクし創ってみました。麦畑の隙間から見える青い空が、皆さんの心の扉を開いてくれると嬉しいです。※イラストはT.Mizuno氏の作品。
P.C. この本や本文は、よく引用され使われることがある。例えば2002年のアニメ作品“攻殻機動隊”では、「笑い男事件」に登場する笑いマークの縁取りに(僕は耳と目を閉じ、口をつぐんだ人間になろうと考えた」との表記が・・・。これは“ライ麦畑でつかまえて”の中に出てくる一文である。最近では、新海誠監督の「天気の子」の主人公・帆高が“ライ麦畑でつかまえて”の本を持ち歩いている描写があり、主人公と社会全体の対立を匂わせている。他にもたくさん引用はあるが、これは少なからず本書に強い影響を受けたクリエーターたちが多いという証です。