

2025.11.21.
山田洋次監督の91本目に当たる最新作、“TOKYOタクシー”を鑑賞しました。寅さんシリーズはもちろん、それ以外でも多くの作品を世に送り出し、いつも私たちのこころを暖かく包んでくれた山田作品たち。今作は山田組には欠かせない存在の名優(盟友)の倍賞千恵子さんを主演に、その相手役を“武士の一分”以来19年ぶりの起用となる木村拓哉を迎えての松竹創業130年記念となる最新作。物語は昭和から令和の現在までの時間枠を超えた一人の女性、高野すみれ(倍賞千恵子・85歳)の波瀾万丈な人生の終活とも言える旅を紡いだ作品。偶然、お客として迎えたタクシーの運転手(木村拓哉)とのたった1日の奇跡の出会いが、生きて来た道とこれから生きて行く道を結ぶ。人生とはを何とも儚くもあり、そして希望に溢れてもいるその全てが生きて来た証なのだと感じる作品です。山田監督が常に大切にしている、「人と人の繋がり」をこの作品も見事に紡いでいます。わたしは子どもの頃から映画が大好きで、倍賞さんの作品も寅さん以外でも沢山観て来ました。デビュー作ではないが“下町の太陽”から大好きな女優さんで、他の女優さんとは明らかに違う庶民的で清楚な雰囲気を醸し出す唯一無二の俳優さんを男女を超えた大好きな存在になっています。年輪を重ね現在84歳との事ですが、失礼ですがそのお歳で主演を晴れる方などいるのか?と周りを見ても思い浮かばない。全然色褪せる事なく、むしろますます輝いている姿に出来うるならばこう言う生き方をと勝手に思ってしまう。何かの評論で倍賞さんの事で「私は毛皮とか宝石が似合わない女優」と語っていたと記されていました。自分のことをこんな風に言える彼女が、大好きです。それ以上に内面から放つ大きな光(愛)に溢れているそんな人(女優)さんでは無いでしょうか?つい最近観た“プラン75”、賠償さんの見事な演技に、人生の終わり方を本当に考えるようになりました。大先輩の人ですが、公私に渡りきっと素晴らしい生き方をしているのだろうと顔が語っています。何だか賠償さんのことばかり話は出てしまいます。自分にとって女優さんという感覚より、お姉ちゃんって感じが強く母にも繋がる存在です。
物語はいきなり柴又帝釈天の山門前から始まり、東京中を巡るたった1日珠玉の時間を描いています。言問橋や浅草、千住の街など私にも馴染みの深い風景が沢山スクリーンに浮かび上がりとても懐かしさを感じました。昭和のシーンも私の知っている原風景と重なり、まるで自分がそこにいるかのような錯覚を覚えました。そんな時代もあったなぁ~~なんて、妙に感傷的になってしまいます。そんな時代を乗り越えて来た人たちは、皆芯が強い気がします。どんなに苦しいことが目の前にあっても、めげない、挫けない、諦めないそんな力を持っていると思います。そんなことも含め、人生を見つめ直すきっかけになる作品では無いでしょうか?いろんな意味でファンタジーなお話でもありますが、とっても暖かい気持ちにしてくれる映画です。
タクシー運転手・宇佐美浩二役のキムタク事木村拓哉さんも言い方は変ですが、すっかり大人の役者さんになりとても真摯な芝居が賠償さんとの絆が結ばれたような深い味わいを感じる人となりを見せています。アイドル時代から高い評価を得ていましたが、今のほうが何百倍も輝いています。偉そうな言い方ですみません。ある意味嫉妬的な部分があっての一言です。二人は宮崎駿監督の“ハウルの動く城”で、声優として共演していますが、あの作品でも魂のこもった声の演技はわたしの胸に刺さり大切な映画の一本になっています。それにしてもその時も思った事ですが、賠償さんの声は若いです。艶があり歳を感じさせません。周りを固めた俳優さんたちも、山田組で緊張もあったかと思いますが、ちゃんと山田監督の思い描く人物像をしっかりと演じていたと確信します。すみれの若い頃を演じた蒼井優さんも、相変わらず良い芝居をしてくれます。一見チャラチャラして危ない女にも見えるが、芯の強い母親の気持ちが驚く結果を招く難しい役。幅のある役者さんだと改めて実感しました。
最後はやっぱり泣かされてしまいました。まんまと山田監督に転がされてしまったわたしですが、とても良い時間をもらい気持ちのいい涙を流すことが出来、感謝です。まだまだ私たちを楽しませてください。次回作を楽しみにしています。どうかお元気でお身体をご自愛ください。