

2025.11.11.
日本映画の勢いが止まらない・・・。バブルがはじけた時期だったかと思うが日本の映画界は勢いが無くなり、年間に製作される作品は限られ出口にない低迷期を迎えた。洋画に圧倒され、このまま日本映画は終焉を迎えてしまうのでは?と思ったこともある。だがどうだろう、今や邦画の公開本数は洋画を超え毎週のように新作が発表されている。映画ファンのわたしはどっちがという垣根はないが、日本の映画界の頑張りには素直に拍手を贈りたい。その分洋画には頑張ってほしい気持ちが、ちょっと芽生えています。
さて、今日紹介する作品は“盤上の向日葵”。ちょっと硬めのタイトルですが、ミステリーとサスペンスを融合したような作品になっています。原作は柚月裕子氏によるもので2018年に本屋大賞2位と将棋ペンクラブ大賞優秀賞を獲得している。監督は熊沢尚人氏で残念ながらこの方の作品ははじめての鑑賞となる。将棋界を舞台にした物語は真剣師(掛け将棋を生業とする者)東明と突然将棋界に現れた無名の天才棋士・上条とのかかわりから浮かび上がる二人が背負ってきた過酷な運命を紐解いていきながら進むサスペンスドラマ。長野県諏訪の山中で発見された謎の白骨死体から刑事ドラマの様相ではじまる物語。W主演の俳優さんは東明を渡辺謙、上条を坂口健太郎がつとめ見事な役づくりで観客を圧倒します。この作品で坂口くんのイメージが一変したわたし。端正な顔立ちで優しい目をした俳優さんだが、いままで観た作品はほぼ朴訥でもったりした善良な人ばかり。唯一ちがった作品をあげるとすれば“ヘルドックス”のアナーキーな殺し屋の役ぐらい。あれはかなりインパクトがありさすが俳優さんと感動しました。彼の作品すべてを観た訳ではないので、偉そうなことは言えませんが若手俳優さんの中では注目している俳優さん。先日番宣でとあるTVに出演していてインタビューを受けていましたが、とても好感のできる芯のしっかりした俳優さんだと言う事知りちょっとファンになりました。今作でも見事に主人公・上条の闇の部分を繊細に紡いでみせ心が揺さぶられます。また一皮むけたような、着実に俳優としての力をつけ大きくなっているようです。モデルあがりだと言う事はぜんぜん知りませんでしたが、やっぱイケメンですね!いま、韓国では超人気で世界を視野にして活躍をしているようです。かたやがっぷり四つで迎えるのは、すでに世界を股にかける国際俳優の称号が板についいてきた渡辺謙さん。芝居の熱量が半端なく言葉を失うほど、力感あふれる芝居には圧倒されっぱなし。魂のこもる演技とはこういうのを言うのかも知れません。良い芝居を見せてもらいました。
物語はさきほどちょっと言いましたが、過酷な運命を背負った二人が互いに引き合い、将棋という勝負の世界から逃れる事の出来ない運命に抗いながら生きて行く様をコンセプトにしたミステリー。将棋は解りませんがその魅力にはちょっと触れた気がします。
実はこの作品を観ながら思い出した作品があります。日本映画の名作、野村芳太郎監督の“砂の器”です。1974年公開の作品ですが、今観ても泣ける映画です。主人公の過酷な運命という共通点と、それに抗う姿はリンクしています。こちらは犯人を追う刑事二人がキーポイントでしたが・・・。人との関わりの中で生まれる「諦めない人生」に向っていく姿はわたしたちに強いメッセージを残してくれました。こちらも泣けます。汚れ役の坂口くんも良いですよ!
P.S. 脇を固めていた真剣師の兼埼役を演じた柄本明さんの鬼気迫る演技には脱帽です。謙さんとの攻防は息を呑むほどの緊張感が画面から溢れ出していました。上条の少年期を演じた小野桜助くんも、忘れてはならない素晴らしい演技でしたので付け加えておきます。将来が楽しみです。どんな人生をおくるのかはわかりませんが、この経験はきっと人生を支えるものとなるでしょう。
最後に主題歌「暮れゆく街のふたり」がエンディングで流れるのですが、まさにこの作品のコンセプトを凝縮したような楽曲で聴いただけで、涙を誘います。桑田圭祐氏の感性にあらためて驚かされます。“砂の器”どうよう、映画を包み込むようなエモーショナルな楽曲はこころに残る一作になっています。