

2025.3.31.
最近ハマっているA24の作品。その最新作、“ベイビーガール”を鑑賞しました。すでにA24のことは何度か紹介していますが、今一番勢いがあり映画ファンの心を揺さぶっているのが、アメリカのインディペンデント系エンタメ企業。ニューヨークを拠点にした会社は映画やTV番組の制作、出資、配給を専門にし話題作を連発している。2016年に発表した“ルーム”がアカデミー賞に輝き、それ以降数々の話題作を生み出し今年も“ブルータリスト”で、アカデミー賞3部門を受賞。飛ぶ鳥を落とす勢いのある、注目の映画制作会社です。
この会社の凄さは才能あるクリエーターを探し出し、新たな可能性に投資を惜しまず、今までにない映画を制作し続け映画ファンを楽しませてくれていること。作品はいつも刺激的で良くも悪くも、強烈なインパクトを残してくれる。私もかなりの数、A24作品を見てきたが期待に沿わない作品は一度もありませんでした。
さて、今作“ベイビーガール”の感想です。久しぶりのニコール・キッドマン主演の作品は、新時代のエロティック・エンターテイメントと銘打たれ彼女は「役者として、人として、全てをさらけ出した」と述べています。圧巻の演技を披露し「第81回ヴェネチア国際映画祭・最優秀女優賞」を獲得。若い頃の彼女とは違う、年輪を重ねた女の匂い立つような美しさが画面からこぼれ落ち、ファンの胸ぐらを掴んで離さない。彼女のコメント通り、まさに「全てをさらけ出した」の言葉通り圧巻の演技です。
物語は愛する家族と、地位も名誉もそして美しまでも兼ね備えたキャリアの女性CEOロミーを主人公に描かれている。そこに突然現れた一人の男と出会いが、満たされない乾きを抱えるロミーの心に火をつけ、燃え上がる危険なパワーゲームが始まる・・・。相手役サミュエルを演じたハリス・ディキンソンの目がなんとも言えない光を放ち、ロミーの心揺さぶっていく展開は昔一度感じた感覚。記憶を辿っていくとそれは、1986年に公開された映画、“ナインハーフ”。当時その性描写が話題になり一大センセーショナルを生み出した。危険な香りが漂う作品は文字通りの男女の9週間半の愛を描いている。今作とのパワーバランスこそ違いはあるが、匂いは同類。きっと多少の影響があるのではと、感じるところがある。あと、もう1本思い出したのが映画、“危険な関係”。これも異常な男女の交差した関係を表していた。いずれにしても男と女は、摩訶不思議な生き物であることは間違いない。一見誰もが羨むような生活を送っているように見えても、どこか心は満たされぬまま乾いているようである。
そんな訳で思っていたより、衝撃は受けなかったとまず言っておきます。主人公二人の演技バトルは素晴らしいし、感性に響きました。音楽や音響がまた、素晴らしい効果を呼び起こしさらに鑑賞側を刺激する演出はA24って感じです。画面の構成(カット割)が見事で、気品さえ感じる美しさでした。かなりこだわった構成では無いでしょうか?美意識を感いる作品に仕上がっています。これだけでも見る価値は十分。
監督はハリナ・ラインという女性で今作では脚本とプロデューサーを兼務。オリジナルで書き上げた作品は女性ならではの視点に立った男女間の危うい倫理観にメスを入れています。見終わって買っじたのは、理屈では解決できないのが男と女の複雑な感情といったところ。きっと一生、解らないかも知れません。
P.S. A24作品で好きなのは“ルーム”“スイス・アーミー・マン”“ムーン・ライト!“などおげればキリがない。最近ではやっぱり“ホエール”。“ミッド・サマー”は嫌いとこのサイトで言ったのですが、嫌いになる程エグい表現だったことは間違いなく評価しています。主役を演じたフローレンス・ピューは今イチオシの女優さんですし、監督のアリ・アスターも観たいと思わせる監督さんの一人です。
※プログラムの表紙を画像にしていますが、今作もシンプルで美しいです。A24作品はいつもこんなところにも力を惜しまずクリエイティブしています。