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よもやまシネマ736 “ぼくのお日さま”
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2025.1.30.

お気に入りミニシアター「Stranger」にやってきました。久しぶりに観たいと思う作品がやっていたので・・・。作品はぼくのお日さま。監督は若干28歳という、これから日本映画を引っ張っていくだろうと期待される奥山大史氏。昨年阿佐ヶ谷に出かけ観た映画「僕はイエス様が嫌い」という作品。この作品は奥山監督が青山学院大学の卒業制作で初めて手がけた長編映画。この作品がスペインのサンセバスチャン国際映画祭に出品され、史上最年少で最優秀新人監督賞を受賞。それが話題となりまずはTV放映、そして一般公開へと・・・。作品はミッション系の小学校へ転校した少年ユラの目の前に現れた小さなイエス様が、慣れない学校生活の中で様々な願い事を叶えてくれるというファンタジー。ところが・・・。ある日大きな試練が降りかかり???

資料には監督の原体験がベースになっているとのことで、辛い物語だがとても身近に感じられる少年期の思い出として共感したわたし。背伸びをしていない等身大の主人公を描き、久しぶりに胸に刺さった作品でした。その時にBLOGに書いたのですが、凄い新人が出てきたと心から思ったわたし。

その監督が創った商業映画デビュー作が、今作のぼくのお日さま。久しぶりに胸をときめかせながら鑑賞に挑みました。「僕はイエス様が嫌い」と同様に少年期の揺れる感情をベースにした作品は、わたしの心にヒットしますますこれからの監督の未来が楽しみになりました。監督は少年の心を今も持ち続ける、ピュアな人なのだろうと勝手に思ってやまない。

物語は雪で覆われた田舎町を舞台にした、吃音でホッケーが苦手な少年とフィギュアスケートを学ぶ少女、そして謎めいた少女のコーチが織りなす、一冬の物語。何気ない風景の描写が何とも言えない哀愁を醸し出し、そこで一生懸命にスケートを通して成長していく少年と少女。コーチを含め次第に心を通わせ、真剣に競技に取り組みバッジテストまで漕ぎ着けた矢先・・・。コーチの過去が思わぬ形で三人の関係に溝をつくり壊してしまう。少年タクヤを演じた越山敬達くんと少女さくらを演じた中西希亜良ちゃんの瑞々しい存在感と自然体の演技が見事なカメラワークを通し、美しくそして儚い夢のような現実を創り上げています。間に入ったコーチ荒川役の池松壮亮さんも子役時代を経て、素晴らしい大人の役者になったなぁ~~っと実t観しました。元々陰のある役が多いかと思いますが、今回も闇を抱え葛藤しながら生きている人物を見事に演じています。三人が織りなすトライアングルのの音が、ひょんなことから不協和音になりそれぞれが夢から醒めてしまう現実が悲しくもあり、儚くもある。それぞれに一生懸命にその人を想っているのに・・・。

二作目もやられました。こういう作品にめちゃ弱いわたしは、監督の第ファンになりました。まさに推し活(最近覚えた言葉)です。忘れかけた少年期の揺れ動く心が蘇り、何とも言えない気持ちに揺らいでいます。さくらのスケートシーンやタクヤとのアイスダンスシーンがとても美しく描かれていて、画面に引き込まれてしまいます。似たような思い出があるのですが「リトルダンサー」という作品で同じ感覚を覚えたのが蘇ります。触れてはいけないような神々しい輝きが映し出され、音楽(ドビュッシー・月の光)がそれを包み込むような演出はこの作品のメインカットとして忘れられないシーンとなった。今国会でも議題として取り上げられているジェンダー(差別問題)などがさりげなく織り込まれていて、監督の時代に特化したメッセージも感じられる秀作ではないでしょうか?これは是非、観ていただきたい日本映画の1本です。

P.S. 音楽の使い方が特徴的な監督ですが、今作のタイトルぼくのお日さまH・ハンバートが2014年にリリースしたアルバム「むかしぼくはみじめだった」の収録曲「ぼくのおひさま」と出会いインスピレーションが湧き、この楽曲がタイトルと主題歌になったそうです。「僕はイエス様が嫌い」の時も同じように洋楽を上手に取り入れ、光と影のコントラストを見事に演出していました。洋楽がかなり好きなようです。早く次回作が観たいと思うわたしです。

※奥山監督は尊敬してやまない橋口亮輔監督に対談時で言われた、「痛みが描かれた映画を追体験することで救われる人がいる」という言葉を大切にしていると語っています。



by eddy-web | 2025-02-07 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
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