

2024.10.15.
最近ハマって(推し活)しまっているのが、女優の河合優美さんと映画監督の黒沢清さん。二人とも次に何が飛び出すのか、推測できない危うさが感性を刺激する人。今日は黒沢監督の最新作、“Cloud”を観てきました。映画の話の前にちょっと黒沢監督の事に触れたいと思います。監督はすでに多くの作品を世に送り出しているのですが、わたしは“スパイの妻:劇場版”がの鑑賞で、正直あまり知りませんでした。ところが歴史を紐解くとデビュー2作目の“ドレミファ娘の血が騒ぐ、”はなぜか記憶にあるのです。それはその作品に主演した洞口依子さんのファンだったからに他ならない。彼女にとっても映画デビュー作で、とてもキラキラしていたことが思い出されます。もともと日活ロマンポルノ映画の外注作品として創られたものが、内容表現で納品拒否されあわやお蔵入り。そこで一般映画として編集し直し公開に漕ぎつけたという。曰因縁の作品の制作当初のタイトルは「産地直送 もぎたてのお尻」だったそうである。私の記憶ではもちろん絡みのシーンもあったが、ある意味青春映画みたいな感じしか覚えていません。もちろん編集前がどうだったかはわかりませんが・・・。洞口さんが可愛すぎて、内容は入って来ませんでした。すみません、若気の至りといったところです。その作品が1985年制作ですから、かなりのベテランになります。何かの雑誌対談の記事で、相手が「監督はもっと自由に作品を、創るべき時では無いですか」という言葉をかけられていました。どんな流れの中での会話なのかは、推測の域を出ませんが商業ベースに乗った作品作りから離れて創って欲しいとの願いと願望が込められていたようです。
そんな時観た作品が、今話題の短編映画 “Chime"でした。短い作品の中にギュッと凝縮されたようなストレスの塊を表した作品に、頭を殴られた感覚を覚えました。好きな映画とは呼べませんが、人間の中にあるモヤモヤした感情が怖いくらい素直に表現され息を殺し見入ってしまいました。この時先ほどの対談の言葉が頭をよぎり、これか?こういう事なのか??と、勝手に解釈をしてしまいました。正しいかそうで無いかは、まだ分かりません。ただ、“スパイの妻”とは明らかに違う事だけは感じる作品になっています。その後間を空けずに観たのが、“蛇の道”。これはしっかりとコンセプトに基づいた作品に仕上がったものでしたが、 “Chime"のクリエイティブを継承し疑心暗鬼を誘うような仕掛けが随所に散りばめられていました。見る側を不愉快にさせるテクニック(音や映像)のオンパレード。そして今作“Cloud”とは・・・。
感想です。不愉快にさせるという意味では、繋がっている映画となっています。ただ少し気になるのがアクションシーンがやけに派手になり、リアリティが薄くシュールな感覚が消されてしまっていたような感じます。あのなんとも言えないジトッとした嫌な感覚が伝わってこないのが、ちょっと私的には残念でした。
物語の軸になる「転売ブローカー」という職業をテーマに挙げているのはさすがに目の付け所ろがいいなと思います。ただ主人公がちょっと美化されすぎているような感じで、出てきた人々の中ではこいつが一番悪い奴だと最後に思ってしまったのは事実です。初めからそんなテイストで主人公は創られているようでしたが、後味の悪さが持ち味の黒沢映画にしては、もうちょっと揺さぶりを掛けてくれたら満足できたような気がします。
個性派の俳優さんがたくさん出ていたのだが、もう少し絞っても良かったかなぁ~~っと思います。互いを打ち消し合い、もったいない気がしました。あまり観たことのない汚れ役の主人公を演じた菅田将暉が、現代の若者が抱えた心の渇望を見事に表現しています。どこか冷めていて、人を見下しているようなそんな若者を演じ、ちょっとイラッとさせます。現代社会の闇をテーマに周りを取り囲む人たちも皆、生活に困窮しギリギリのところで踏みとどまっている感じがひしひしと伝わり、妙に共感を覚えてしまう。そんな危ない人たちがある日、プツンと糸が切れるかのように信じられないような行動に移るというい仕掛けはまさに黒沢ワールド。終わりも釈然としませんが、危ない人たちのハロウィンパーティーのようでした。