2024.9.03.

今日の鑑賞作品は、“ラストマイル”。　見る映画をチョイスする時は、さまざまな選択事項を用意する。例えば、日にち、時間、そして場所。そして観たい作品の順位。そこに忘れてならないのが天候。実はこれが結構重要で、雨は基本パス。軟弱かと思われる人も多いかも知れないが、天気のいい日に観ると暗い作品を見た後も気分が晴れる。ただ天邪鬼な私は逆に、雨の日は遠出をして電車に揺られ普段行かない街の映画館を訪ねる。そんな点と点が結ばれた時に、映画館へと出向く。そして素晴らしい映画に出会うと、言葉では表せないほどの幸せな気分になるのである。

観たい作品にもランクがあり、今日の作品はもっともシンプルな主演女優さんファンだという、ただそれだけの理由。要するにミーハー的なチョイス。

さて、その作品名は、“ラストマイル”。主演女優の名は、満島ひかりさん。TVドラマや映画でお馴染みの彼女だが、元々はアイドル出身。その頃のことは全く知らない私ですが、TVドラマ「それでも生きていく」や映画「悪人」や「愚行録」などの演技力の高さにいつの間にかファンになっていました。その後過去の作品なども観るようになり、どの作品を観ても違う顔があり彼女の幅の広い豊かな個性に多いに引かれています。弟の満島真之介くんも大活躍でいいライバルかも？？？ちなみに一番搾りのCMで、美味そうにビールを飲む彼女の顔大好きです。

映画の感想に移ります。はじめからラストまで駆け抜けるような早いテンポの展開に、ワクワクドキドキの連続。内容は特に新しさはないものの、畳み掛けるような時間との戦いをうまく連動し飽きさせない進行になっていた。現代社会の物流が抱えている問題や、社会に広がる心の闇と歪みが浮き彫りになり、これから人は何処へ向かっていくのか？と考えさせられる。この作品に描かれているのは、私たち自身。当たり前の生活の中で、ただひたすら穏やかな日々を過ごす中、生きがいとか生っちょろい言葉さえ浮かばない人たちが私たちの生活を動かし守っている事実を知る。大きな企業に飲み込まれながらも、真摯に仕事と向き合う人たちがいることに救われる。まるで機械のように感情を持たない人たちが働く場所。この現実から目を背けてはいけないと感じた。そんな中で起きる連続爆破事件。犯人の目的は？とこれがこの作品のテーマですが、終わればなるほどと納得の結末。予定調和のラストへと続きます。単純に面白い作品だと思います。CGを使った爆破シーンも解っていても、ドキドキするし緊張感がある。馬鹿みたいにこんなことが起きたら、世の中どんなことになっちゃうの？？？なんて本気で思ってしまう。怖くて宅配なんて頼めなくなるし、まさに日本の生活基盤を揺るがす一大事。人は何のために生きているのか？を一度見つめ直す時間なのかも知れません。人間は人間で、ロボットではないのです。生きづらい社会ですが、自分を見失わずに主人公のエレナ（満島ひかり）がラスト近くでいう言葉「やめちゃいましょ？！」。この言葉に覚悟を感じました。自分に正直に生きることは難しい世の中ですが、自分らしさを無くすくらいなら潔く引くのも強さだと思います。そんな生き方を感じる作品でした。

満島ひかりがバリバリのキャリアを演じています。初めは鼻につく典型的な嫌なタイプの女を演じ、話が進みにつれその繊細な感情が露わになっていく。なが台詞がめちゃくちゃ多い主人公で、時折専門用語が機関銃のように火を吹きその上英語まで絡める。大変な役ですが、見事彼女はそれをこなし主人公同様スキルの高さを見せてくれる。きっと頭のいい女優さんなのだろうと確信する。NHKの朝ドラに出演している岡田将生さんが片腕の部下を演じていますが、彼の存在もかなり大きな救い的な役柄です。会話のバトルの中でも、どこか癒される正義が見てとれ人間味のある人物を好演。いいコンビになっています。いいコンビといえば刑事役の酒向芳と大倉孝二、宅配便の御者で親子の火野正平と宇野祥平の演技は親近感を感じてしまういい味を出していました。仕事に対する誇りを感じました。こういう人たちが日本を支えているのでしょう、きっと・・・。対照的だったのはベルトコンベア式の物流倉庫の中、人が機械の歯車のひとつとして働く様が怖かったです。

P.S. 流通をテーマにしたサスペンス“ラストマイル”を制作した監督・塚原あゆ子氏と脚本を手がけた野木明子氏はドラマ「アンナチュラル」「MU404」でタッグを組み互いをリスペクトする関係。女性の視点から見た物語は、独特の艶がありファンも多い。残念ながらドラマをあまり見ない私は、どちらも見ていない。ただし監督の「中学聖日記」「下剋上球児」は見ていて好きな作品です。野木さんの「罪の声」は大好きな映画です。女性のクリエーターがどんどん出てきて活躍していますが、これからも応援しています。

今作はサプライズでアンナチュラル」「MU404」のキャストが絡んでいますが、さっきも言いましたが見てない自分にはさほど感動はなく、会社通しの忖度が感じられてしまいました。私だけでしょうか？？？