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よもやまシネマ702 “ホールドオーバーズ”
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2024.7.11.

前回に続き、友の推薦による映画作品を鑑賞。作品名は、“ホールドオーバーズ”。素直に良い作品でした。良い作品に出会うと幸せな気持ちになる私。例えそれが悲しい物語であっても、辛い話であっても・・・。そう言う作品に出会うと、いかに自分が幸せかと気付かされ、もっと真剣に生きなければと思う自分がいる。だから映画は自分にとっては、人生の教科書みたいなものと位置付けている。辞められない訳はこんなところにある。

さて、推薦により観た、“ホールドオーバーズ”は、私にとっては家族や人生の在り方を改めて考えさせられるとても素晴らしい作品となりました。

時は1970年代のアメリカ、ボストン近郊にある全寮制のバートン校(架空)が舞台。その学校で繋がる個性溢れる三人の人生が見事に紡がれるヒューマンストーリーに、何度も心が震えてしまう。副題となっている「置いてけぼりのホリディ」は、クリスマスと新年を寮生たちが家族のもとへ帰り、楽しく過ごすはずだった人たちがさまざまな訳で量に残るところから始まる。主人公はその寮生たちの面倒を見ることになった教師ハナムと寮生の一人アンガス。そしてベトナム戦争で最愛の息子を失ったばかりの料理長メアリーがそこに絡む設定。個性の強い三人が織りなす、涙と笑いの数日間を当時のサウンドに乗せ優しく包み込んだ今作は、まだ6月にも関わらず年間ベスト作品に入るそんな気がする作品です。メアリーは別にしても、教師のハナムは生真面目で融通が効かない典型的な古いタイプの教師で生徒はもちろん、教師仲間からも嫌われている人物。そして生徒のアンガスは勉強は出来るが反抗的で常に問題を起こす難しい生徒の筆頭。その二人の間に心に深い傷を負いながらも、気丈に振る舞い生活を続ける黒人女性の料理長メアリーが割って入る。三者三様にそれぞれが心の奥底に閉ざしていた深い悲しみと苦悩を、反発し合いながらも少しづつ理解し合い、それぞれにバディの関係を築いていく。生きるのが下手なひとたちへの応援歌とも言える、そんな作品に仕上がっています。誰にでもあるような現実が浮き彫りになっていて、色々と考えさせらる物語です。映画を観て感じたのは、どんな時も我慢をしないで泣きたい時は思いっきり泣き、腹が立ったら思いっきり怒り、嬉しい時は思いっきり笑う。カッコつけて我慢するのなんて、本当はカッコ悪いということに気付かされる映画です。それとこの作品が気に入ったのは、心に傷を持っている三人が変にベタベタした関係になっていないところがとても共感がもて、本当の優しさを感じました。

P.S. ラストでアンガスを守るために、学長や親たち毅然とした態度で挑むシーンは感動です。後心に残ったシーンはメアリーが妹の家を訪ね、さりげない優しさを見せるシーンは泣けました。キャステイングが素晴らしく、ハナムを演じたポール・ジアマッティ、メアリーを演じたダヴァイン・ジョイ・ランドルフのユーモアに飛んだ演技と深い悲しみを抱えた表裏の表現力は本物。言葉にできないほど、胸に刺さるベストパフォーマンスでした。二人ともアカデミー賞とゴールデングローブ賞にノミネートされ、ダヴィイン・ジョイ・ランドルフは見事、助演女優賞2冠を達成。ポール・ジアマッティはゴールデングローブ賞主演男優賞を獲得し、二人の代表作と呼べる作品になりました。もう一人忘れてはいけないのが、アンガスを演じたドミニク・セッサ。デビュー作にしてこの演技。ナイーブで複雑な感情表現が本当に素晴らしく、きっとこれから出てくるであろうと確信させられる演技力でした。また、この映画の監督アレクサンダーペインの他の作品も、良いとの事なのでぜひ観たいと思います。今年(まだ半年ですが)一押しの作品です。ぜひご覧あれ!!

※パンフのデザインも素敵でした。



by eddy-web | 2024-07-17 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
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