

2024.7.05.
友からの推薦で今日は、銀座にて映画鑑賞。毎日厳しい暑さが続いていますが、暑さにめげずやって来ました34°の熱帯亜。まだ7月というのに???
さて、映画ですが実話に基づいたという作品“あんのこと”を鑑賞。流石に猛暑のせいもあり、ウィークデイの映画館は空いている。推薦される前から気になっていた作品は、某TV局の映画紹介で偶然みた“あんのこと”。これはもう観ない訳にはいかないと放映している映画館を探し、時間調節してやっと辿り着きました。おかげさまで、魂を揺さぶられる良い作品に出会い、暑い中来た甲斐がありました。
まずは、感想に入る前に言っておきたいことが・・・。よく今どきの若者が言う「大人は狡くて、汚い」という意見、この映画を見る限り当たっています。大人であることが恥ずかしくなるような、物語は観終わると同時に憤りさえ湧いてきます。これが実在のストーリーと聞けば尚更。神様ってやっぱりいないのだと、悔しさでいっぱいになります。
と言うことで、感想です。まずは物語が実話というところに驚かされる。こんなに不幸を背負った子が、世の中にはいるんのだと言う驚きと、そして哀しみが胸を締め付ける。ニュースでもよく取り上げられるDVや育児放棄の問題。ここまで酷くなるともはや、救いようのない虚しさを感じてしまう。主人公の杏は酷い劣悪な環境に育ち、自分が何のために生きているのかさえ判らない少女。母親から強制され売春に身を落とし、さらに覚醒剤で身も心もボロボロ。当然のように警察のお世話になり、そこでひとりの刑事に出会う。親身になって面倒を見るちょっと変わったその刑事にやがて少しづつ心を開いてゆく杏。そんな中コロナ禍が始まり、再び少女が見つけた安堵の暮らしが、ガラガラと音をたて崩れてゆく。運が悪いと言えばそれまでだが、少女にはあまりにも過酷な運命。母親は最悪でこんな親の元に生まれたらと思うと、正直怒りが湧き上がる。それでも切れない絆が、終盤で表現されそれがまた切ない。自分ならどうしただろうとさえ、考えてしまい怒りが収まらない。それにしても主人公以外の大人たちが皆、はじめに言ったこと「狡くて、汚い」のである。身勝手で自分さえよければ良いと言う、そんな生き方にさえ見えてしまう。中途半端な優しなら、むしろいらない!と私は思ってしまう。そんな優しさが少女の心をさらに傷つけ、追い込んでいったのは明らかである。皆さんはこの話、どう思うのか聞いてまたいです。鑑賞から数日経った今も、やるせなさと憤りが消えません。どうやって心を鎮めたら良いのか・・・。
それにしても、キャスティングの見事さは感動です。主人公の杏を演じた河合優実さんは言葉では称賛し切れないほど。お目にかかるのは初めてなのですが、調べれば結構たくさんの映画やTVドラマに出演している。知らないのは私だけ???もっと早く彼女に出会っていればよかったと、この作品1本で思わせてくれた演技でした。私の大好きな倍賞千恵子さんのちょっと前の作品“PLAN75”に出ていたとのこと。観たかった作品なのですが、残念なことに見落としてしまいました。これを機に探し観てみようと思います。ボーイッシュな雰囲気が独特のイメージ醸し出す、これから注目の女優さんはまだ23歳。これからどんな大輪の花を開くであろうか?目が離せない女優さんです。
取り巻く俳優さんたちも素晴らしく、この作品にかける念いが伝わる演技ばかり。刑事役の佐藤二郎さん、週刊誌の記者役の稲垣吾郎さんほか脇をしっかりと固め、素晴らしい作品を創り上げてくれました。この作品は監督、入江悠氏が社会の歪みを炙り出した渾身の一作ではないでしょうか?それに答えたキャストのみなさんに拍手です。
P.S. 母親春海を演じた河井青葉さんは、汚れ役に徹し圧倒するエナジーを発しています。映画の中だから許すが「本当にダメ親」というか人間としても最低でした。こんな憎まれ役ですが、素晴らしいの一言です。あともう一人、許せない身勝手女を演じた早見あかりさんも秀逸。ラストの空時らしい「あんさんには心から感謝しています」の言葉。イラッと来ました。あんたも狡い人間の一人だよ!!って心の中で叫んでいる自分がいました。みなさん、お勧めの作品です。観てください。世の中に絶望するかもしれませんが、わずかな光を信じ世の中に抗って生きていこうと思います。親爺はちょっと熱くなりすぎでしょうか?