2024.6.22.
M・ナイト・シャマラン監督の娘、イシャナ・ナイト・シャマランが脚本と監督を務めたデビュー作品。シャマラン監督といえば“シャマラニズム”とさえ言われる独自の世界観が、愛好者にはたまらないものになっている。作品により評価は著しく賛否が分かれるのだが、ファンはその全てを受け入れ鑑賞を楽しむ。正直ファンでさえ、これはちょっとと思う作品もあるのだが、なんとも言えない何か得体の知れないものに惹かれてしまうのである。まるで彼が描く得体の知れないものに引き寄せられるかのように・・・。これはまさに魔法にかかったかのようである。今作はここ近年助監督として父と仕事を共にした彼女24歳のデビュー作。鑑賞して感じたのは、間違いなく父親のDNAを継承しつつただそれだけにとどまらず、彼女の感性がしっかりと作品に投影されていること。見る限りやはり女性としての視点で創られているところを多く感じられた。登場人物たちがほぼ女性で、全体的に女性目線で物語は進んでいく。主人公もミナ(ダコタ・ファニング)はアーティストという設定でどこか闇を抱えている女性。そんな彼女が生活のために時折している、物品の届け仕事で森深くの住所へと車を走らせるところから物語が始まる。気がつくと森の深くで車が故障し、立ち往生。お決まりの設定である。これこそ“シャマラニズム”の表現とも言える。そして不気味な気配が漂い、よせば良いのに森へ森へと足を運ぶ主人公ミナの姿。こら闇の中から聞こえる物音や獣や鳥の声。そしてバックに流れる感覚を刺激する音楽。そしていつしか気がつくと見たこともない箱状の部屋にと誘われる。その部屋の外には夜な夜な得体の知れないものが近づき、じっとこの部屋を覗いているという設定。この違和感こそが“シャマラニズム”で、理屈など無視した演出の気がつくとグイグイと引き込まれている観客。今までのシャマラン監督の作品はほぼ、この形態の流れでなんでこんなところに?なんでこんなことが?なんでこうなるの?の連続。気がつくと迷路に迷い込んでしまっているのだ。イシャナ監督は今作で昼と夜を巧みに使い分け、「開放感と閉塞感」を紡いで見せている。森の中の箱のような部屋は、奇妙なシンボルライズ効果を生み出して、ある意味美しいとさえ思える。中にはミア同様に森を彷徨いたどり着いた4人の男女が・・・。街で出会えばごく普通の人たちも、この箱部屋の中では皆怪しい。こんな疑心暗鬼を上手に操りながら、物語は思わぬ方向へと進んでいく。夢とも現実とも思える心理サスペンスにホラー、ミステリー、そしてスリラーと結構欲張りな展開である。ここら辺は親ゆずりの才能かも知れません。お父さんはこれをやりすぎて、結構失敗していることが多い。私はそういうところも好きですが???彼女はそのあたり絶妙なバランスて映画を創り上げています。訳の分からないモヤモヤとした終わり方にはなっていないので、そこは彼女を評価したいと思います。24歳という若さでこれだけのものを創れるのだから、この先が楽しみです。お父さんを超える作品をどうか生み出してくれることを願います。
P.S. 妹のエル同様、子役でデビューした彼女。ショーン・ペンの娘役で出演した“アイ・アム・サム”は未だに忘れることのできない名作のひとつ。この作品で彼女は世界中の映画ファンの心を掴んでしまった。そのイメージが強く、大人になった彼女を見る度大人になったなぁ~~~っとしみじみ思う私です。愛らしい表情や今回のようなクールビューティな冷たい表情と使い分ける彼女はやっぱり天才かも知れません。すでに30歳と聞き驚いていますが、まだまだこれからの活躍を期待するばかりです。