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よもやまシネマ694 “関心領域”
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2024.5.24.

映画配給会社A24が放つ話題作関心領域を鑑賞。A24恐るべしの印象をますます強くした作品は、静寂の中に表現され、身も凍るなんとも言えぬ不快な気分にさせられる。まるで毒を盛られ、ジワジワと全身に痛みが回ってくるかのような気分を味わう。(いまだ毒を盛られた経験ないのだが(^。^)A24作品は、良くも悪くもインパクトのある作品ばかり。好き嫌いは、はっきりと分かれるものが多い。それはいい意味、中身が濃い証拠。作品のレベルは常に高く、五感を刺激する。今作も「好きか嫌いか」と言えば嫌いな作品。以前にあげたミッドサマー以来かも知れない。制作の意図がはっきりとしていて、改めて人間の中に潜む無関心な心のひだを浮かび上がらせる傑作と言える。

今作のテーマは反戦???もちろんその要素は存分に感じられるが、そんな生優しいものではない恐ろしさがジワジワと迫ってきます。今世紀最大の負の遺産とも呼ばれるその地。舞台は第2次世界大戦中の捕虜収容所アウシュビッッツ。いまだに忘れることの出来ない大戦中に行われていた、ユダヤ人大量虐殺の場所である。ナチス・ドイツが国家を挙げて推進した人種差別によるユダヤ人絶滅政策。今も語り継がれるこの地で起きた人種隔離政策(ホロコースト)による犠牲者は、ニュルンベルク裁判では400万人の尊い命が、まるでゴミ焼却のように行われたと認定した。その数は実証されてはおらず、現在は下方修正され110万人となっている。これだけの人間の尊い命を奪ったことは、もはや数の問題ではないことは言うまでもない。アウシュビッッツやホロコーストを題材にした映画作品は、数おおく創られ、その度に二度と戦争を起こしてはならないと観客は思い知らされてきた。

さて、今作関心領域だが、今まで見た事のない切り口で恐怖心を煽る作品に仕上がっている。アウシュビッツ収容所の近くにある風光明媚で穏やかな草原。そこで戯れる、幸せそうな家族の姿が冒頭映し出される。映像も綺麗で静寂に満ちた光景は、大量虐殺が行われている世界とは縁遠い雰囲気。この家族の主人はアウシュビッツで司令官を務める将校。そしてその家族は何不自由なく暮らし、日々の生活を楽しんでいる。この映画は終始、そのような風景を映し出し裏で行われている大虐殺など微塵にも感じさせない。そこがこの作品の、凄さと言える。そんな家族の営みの中、時折壁の向こうから、悲鳴や銃声、そして怒号が鳴り響く。まさに見えない恐怖である。壁一枚隔てて営まれる生きることの矛盾。こんな怖い映画作品がまだ創れるのだ!と息がつまる思いだ。この作品を手がけた監督ならびにスタッフには、その想像力の豊かな表現に拍手である。物語の中心は監督官の父親と母親だが、会話の端端に身も凍るような言葉が何度も交差する。差別の領域を超えた、もはや血のかよう人間とは思えない言動ばかり。なんでこんなこと(ホロコースト)が起きていたのかすら見えてこない愚行の数々。どうしたらここまで人は心を無くすことができるのだろうと、改めて考えさせられる。もちろんこの手の作品を観ると、ドイツ憎しの感情が湧き上がるのだが、ここだけ見て決めることはもちろん出来ない。どこの国にも平和を望む人たちが圧倒的多数いる事は間違いない。ただ人間の奥底に潜む、偏見や差別、そして独り善がりな感情が時々大きなうねりを起こし、視野の狭い愚行へと走り出すのかもしれない。どうしたら戦争は無くなるのでしょうか?答えの見つからないこの問題は、永遠のテーマかも知れません。だからこそ私たち一人一人が真剣に平和について考え、常にアンテナをはり人ごとではないことを認識することが求められているのかも知れません。

P.S. 物語の母親が、夫の転勤でストレスを抱え、給仕の娘に浴びせる言葉「お前なんかいつでも灰にして庭にまけるんだからね」と言うセリフ、めちゃ怖いです。子供がベッドの上で遊んでいるシーンでは、遊具と思いきや人間の銀歯だったりと、凄い描写の連続。まだまだいっぱいりますが、言葉にするだけで気持ち悪くなるのでやめて起きます。

また意図は分かりませんが、2回ほど夜中に行動する少女の姿が、ネガティブ表現で浮かび上がる。妙に静かでアート的な表現になっています。さらにもの凄いインパクトを感じさせる演出で、聴覚を刺激する効果音が何度も使われています。絶妙なタイミングで使われ、心を逆撫でする嫌な感覚がず~~~っと残ります。五感全てを刺激するそんな作品はアメリカ、イギリス、ポーランドの合作作品。アカデミー賞をはじめ多くの映画祭で高い評価をもらっています。A24が提供する作品は、刺激の強いものばかりだが、癖になります。次はどんな作品を提供してくれるやら・・・。

※購入したプログラム、内容とは全く違う美しい写真が使われ、その優れたアイディアにクリエィターの力を感じます。


by eddy-web | 2024-05-28 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
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