2024.1.26.
既にヴェネチア国際映画祭で大絶賛を受け、最高賞の金獅子賞を受賞している話題作、“哀れなるものたち”を鑑賞。作品は、“女王陛下のお気に入り”で、映画賞を総なめにし天才の名をほしいままにしているヨルゴス•ランティモス監督。その作品で見事な演技で魅了したエマ•ストーンと再びタッグを組んだ、今作“哀れなるものたち”。今までに味わったことのないアバンギャルドでエモーショナルな作品は、観客の感性を刺激しなんとも言えない不思議な世界へ誘う。まるで絵画の中を旅しているような感覚を覚える映像表現は全てが美しく、そして大胆な演出構成で唯一無二の作品が出来上がっています。感性を解放し観ることをお勧めいたします。かなりアバンギャルドな作品ですので、ついていけない人も???現に鑑賞後、劇場の出口であるおじさんが「なんだかよく解らなかった!」と溢している場面に遭遇。想像力をMAXにして臨む、そんな作品です。この手の作品好きには、堪らない刺激を感じると思います。物語は簡単に紐解くと、「フランケンシュタイン」の女性版とでも言う、そんな内容です。過激な演出も多いが、ユーモアセンスの効いた台詞が飛び交い心地よい毒を味わう事ができる。大人の寓話です。
主人公・ベラを演じたエマ•ストーンの演技力に魅了されることは間違いありません。彼女の出演した作品のほとんどを観てきましたが、一歩突き抜けたそんな印象を受けました。この作品にかける女優魂が宿ったそんな作品でもあると確信する。脇を固めた俳優さんもハリウッドを代表するアクター(ウィレム•デフォー、マーク•ラファロなど)ばかりで、それぞれの個性を遺憾無く発揮し、作品のクヲリティをさらに高めている。そしてこの作品の凄いところは、俳優さんたちの演技をさらに強調するかののように施された撮影スタッフのエネルギー。背景を彩る贅沢な舞台美術、エキセントリックな衣装の数々とヘア•メイク、そして全体を包み込むよに使われる音楽(音響効果)。その全てをまとめ上げるカメラワークの巧みな技術力。どれをとっても超一流と感じる、極上のクリエイティブ作品に仕上がり映像が生み出すアート(芸術)作品と言っても過言ではありません。きっと何度も見返し、その深い表現をどこまでも探ってみたくなる作品ではないでしょうか?わたしの五感は、震えが止まりません。こんな作品を生み出した、才能の感謝です。そして羨ましい限りです。
ハリウッドでは興行収益最優先にした映画制作の潮流が、少しづつ変化が出始めていると個人的には感じている昨今。今回の作品はパンフの前説で「映画ファンが“本物の映画”ともっと出会う機会を」をテーマにしたスタジオ、「SEARCHLIGHT PICTURES ISSUE」が携わっている。この会社同様に活躍している「A24」もそうだが、低予算でありながら監督、脚本家、アクターなどの新しい才能を発掘するコンセプトのクリエイティブ集団の勢いが止まりません。映画ファンには本当に頼もしくもあり、嬉しい限りの映画会社の存在。これからもわたしたちの、こころを豊かにしてくれるそんな作品をいっぱい創ってくれることを期待しています。
P.S. タイトルの“哀れなるものたち”は、間違いなくわたしたちを指し示す言葉。主人公のように何の制約にも捉われず生まれたままの好奇心を、躊躇う事なく発散し生きられたらどんなに幸せでしょう。ある意味、贅沢の極みだと・・・。エマ•ストーンの渾身の演技は、「ラ•ラ•ランド」をさらに一歩、いやそれ以上の領域に入った、そんな凄みを感じさせこれからのさらなる進化に目が離せません。