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よもやまシネマ637 “ミツバチのささやき/午前十時の映画祭”
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2023.9.12.

観たい作品がほぼ無くなり、ひらめいたのが「午前十時の映画祭」。デジタルで永遠の名作を蘇らせてラインアップするプログラムでかなりお世話になっている。時代を超えて記憶に残る数ヵの傑作を、スクリーンに蘇らせる企画は映画ファンにはたまらない。
今日は観たくてたまらなかったが、なかなか観られずにいたスペイン映画“ミツバチのささやき”を鑑賞。公開から38年も経つものだが、タイトルと少女の優しいまなざしがこころに響き必ず観ると誓っていた作品にやっと出会いました。思っていた通りの感性を刺激する素晴らしい作品でした。映像、音楽、効果音、舞台設定(ロケ地)など、すべてが巧みに絡み合い幻想的なシーンを創りあげられています。物語は少し難解ですが、解説で深いメッセージが込められていることを知り、監督や脚本などスタッフの念いが込められてことに深い感銘を受けました。感性で観る作品と想像力を駆使して鑑賞したわたしでしたが、制作の背景にある重いメッセージを知り、素晴らしいから凄いへと感想が変わりました。正直解説の情報を知らなければ、想像力の高いお伽噺と捉えていたに違いありません。たぶんほぼみなさん同じでは無いでしょうか?映画制作の大変さはもとより知っていたつもりですが、まだまだです。
物語は少女アナがある日観た「フランケンシュタイン」の映画に衝撃を受け、生と死の意味を知るために迷いこんでしまった迷宮の旅を幻想的に表現している。少女アナが経験する夢と現実の中を彷徨う姿を通し、ひとの生き方を説いています。スペインの片田舎で暮す少女アナとその家族を中心に展開する、何とも言えない不可思議な世界が観る側を迷宮へと誘ってくれる。長い台詞はほとんど無く全体的に重たく閉塞感が漂う。目や仕草などの表情をきめ細やかに浮かび上がらせ、感情を見事に表現しています。きっと何度も観るともっと深い物語の本質に触れることが出来ると思います。そして何度も観たくなる作品です。わたし好みの作品で、なんでもっと早くに観なかったのかと思っています。少女アナはお姉ちゃんのイサベル(悪戯好き)と父親フェルナンド(厳格)、母親テレサ(物静か)と四人暮らし。それぞれに言葉に出来ない何かをかかえ生きている。子どもはまだしも親たちの行動は何か不自然でつかみ所がない。アナが巻き起こす出来事から、家族それぞれの深い念いが少しずつ解き明かされてゆく展開ではあるが、時代背景や内乱という問題までもは流石に理解は難しい。単純にお伽噺と捉え想像力を駆使して楽しむ方が、きっと良いと思うし充分質の高い作品です。今でこそこの作品に込められたメッセージが解き明かされていますが、それを抜きにしても充分芸術性にとんだ良作であることは間違いありません。わたしは言葉にならない感銘を受け、大好きな作品郡に新しく1本が加わりました。
主人公のアナを演じたアナ・トレント(当時6歳)はこの作品で見せた、純粋で自然な演技により高い評価を得て、多くの賞を受賞しその後も数多くの作品に出演。本当に瞳の美しい汚れを知らない容姿に、観客はみな虜になったに違いありません。姉のイザベルを演じた、イザベル・テリェリアのはちょっとこまっしゃくれた役ですが、とても印象に残る素晴らしい演技でアナとは好対照な難しい役をこなしています。こちらも可愛かったです。この作品はお勧めの一本です。DVDを買おうと思っているわたしは、もっと深くこの作品に触れてみたいと・・・。

P.S. お気づきかと思いますが、家族4人とも、実名の名で出演しています。子どもたちに自然体で演じてもらうための、演出だったのでしょうか?いろんな意味で興味が尽きない作品です。寡作の巨匠と謳われる監督のビクトル・エリセ(83歳)はまだ現役ですがこの作品を含め、たった4作品しか制作をしていません。どの作品も高い評価を得ていますが、このあたりも監督のスピリッツを感じるわたし。他の作品にも俄然興味が湧いています。


by eddy-web | 2023-09-14 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
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