2023.4.10.
2月に観賞した“仕掛人・藤枝梅安”の続きが、ようやく公開された。池波正太郎の生誕100年を記念しての企画もの。前作でも述べましたが、日本映画の王道ともいえる時代劇は日本人にとってどんなエンタメよりワクワクする題材。ましてや池波正太郎の代表作が原作となれば、原作ファンも映画ファンも観たくてたまらない。池波正太郎の代表作と言えば「仕掛人・藤枝梅安」「鬼平犯科帳」「剣客商売」。時代小説の三大シリーズとして今なお人気の高い作品である。中でも今作の“仕掛け人・藤枝梅安”は、表の顔は人の命を救う鍼灸師で誰からも信頼される腕のいい先生。実はその裏ではひとの恨みをお金で殺める闇の仕掛け人(暗殺者)と言う二つの顔を持つ人物。善と悪、表と裏という人間が内に秘めた本質に迫り、時代劇という枠の中で見事に表現した娯楽作品と言える。TVでシリーズ化され何十年もの間人気を誇り、今なお定期的にドラマとして続く人気作品はファンが多い。わたしもその一人…。前作を観て素直に感じたのは、これこそ日本が世界に誇れるテーマであり日本を代表するエンタメの題材だと確信したことでした。この作品に集まったスタッフはみなきっと池波正太郎氏のファンだし、“仕掛け人・藤枝梅安”のファンに違いない。監督はもとより撮影陣やキャストの皆さんの画面からあふれ出るエネルギーが半端なく、それがしっかりと伝わってくる上質の映画作品となっています。
時代背景を丁寧に創り上げた脚本、美術、音楽、照明など時間がゆっくりと流れる様がなんとも心地よく、そして風情が感じ取れる演出の数々に、この作品への思い入れが強く感じられたまらない。まるでタイムスリップしたかのような静寂に包まれながら、主人公たちが見せるギリギリの感性には言葉ではないこころの叫びが読み取れ胸が熱くなる。雑音の多い現代劇では表現できない、人間本来の姿(表裏)が巧みに描き出される物語は上質ご馳走である。
前作では梅安の過去を浮かび上がらせ、今作では相棒・彦次郎のつらい過去にスポットを当てた仕掛け話となっている。カメラワークがとても綺麗で光と影を見事に調和させての演出効果は、緊張感に包まれ怖さを超え美しくさえ感じる。アート作品のような作りこみには、TVでは表現できない緻密さが感じられ、これぞ映画と納得。短い尺でまとめなければいけないTV作品では見ることのできない、凝縮された深みがスクリーンから溢れ映画の素晴らしさを改めて感じる時間となりました。
梅安を演じた豊川悦司さんは前作同様人間味あふれる演技で、内に秘めた強さと弱さを見事に表現しています。また彦次郎を演じている片岡愛之助さんが、梅安が唯一こころから信頼する心優しい仕掛け人を演じていてかっこよかったです。おもんを演じた菅野美穂さんも何も求めずひたすら梅安を慕う自然体の女を、ゆったりと包み込むような演技で安らぎを与えてくれます。こんな女はなかなかいません。脇を固めた俳優さんたちはみなさん素晴らしい役をこなし、この作品の質をさらに高めていたと言っておきましょう。みなさんいい仕事をされています。主役の二人が輝く人物像を創り上げられたのは、脇を固めた俳優陣の素晴らしい演技があってのことと、素直に思えるキャストの熱演に拍手です。素晴らしい作品をありがとうございました。これで終わらせるのはもったいないので、ぜひ、もう1・2作創っていただけないでしょうか?関係者のみなさま、いちファンの勝手な願いをどうか聞いてください。よろしくお願いします。
P.S. エンドロールに平蔵の名が出ていたので気にはなっていたのですが…。これってどう受け止めたらいいでしょうか?ただのサプライズ?それとも…。気になります????