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よもやまシネマ602 “イニシェリン島の精霊”
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2023.3.13.

危うく見過ごすところだった映画、“イニシェリン島の精霊”。公開前から注目していた作品だが、近い劇場が思ったよりはやく終わってしまい慌てて劇場を探し駆け込み鑑賞。教え子の勧めが背中を後押ししての滑り込みである。今年度のアカデミー賞にノミネートされていたのは知らず、鑑賞後なるほど・・・と納得。舞台となる島の美しい風景が巧みな映像表現で紡がれ、まるで写真集のページを捲るようにこころに深く染み込んでくる。そこで暮らす人々たちがさぞや心豊かに表現されているのかと思いきや、想像を超える感情を押し殺した美しさにはほど遠い内面が浮かびあがる作品に度肝を抜かれる。芸術性の高い表現力はもちろん凄いのだが、それを逆手にとっての脚本と演出のきめ細やかさにまんまと塡まってしまう。創造性に富んだ作品だが、きっと好みが真っ二つに分かれるそんな作品ではないでしょうか?ひとことで表現するなら、大人向けの寓話である。教え子はわたし好みの作品ですよっ!と言って勧めてくれたのだが???何とも答えられないのが素直な感想である。このブログを書くのに、しばらく間を空けたわたし。頭と言うよりはこころの整理が追い着かず、混沌とした自分と向き合う時間が必要になり今日に至った。久しぶりのインパクトで、しばらく後をひきそうである。評論家の評価はメチャクチャ高いと知ったのですが、総合的にみれば頷ける。
さて物語だが1923年、アイルランドの孤島を舞台に巻き起こる、摩訶不思議な二人の男たちのお話。監督は前作“スリー・ビルボード”から5年が立つ鬼才マーティン・マクドナー。本作を見終わると前作の血は更に進化し、感性がさらに激しく磨かれ開花している事が伝わって来ます。前作でも感じた訳の解らない不条理な世界が浮かび上がり、頭の中を駆け巡る感覚は答えを探すのに必死にもがきます。一番恐いのは、自分の中にも主人公と同じ感情がこころの片隅に隠れているという実感。この作品は観た人たちと多いに、語り合いどんな受け止め方をするのかを聞きたい映画のひとつになりました。
わたし独自の見解ですが、限られたスペース(島)に閉じ込められると、そこがどんなに居心地が良くてもこころが壊れていくということ。前作“スリー・ビルボード”はある意味、プロローグ的な作品にも思えてきました。この監督の底知れない想像力は、この先どんなものを見せてくれるのかと完全に蜘蛛の巣に掛ってしまっています。
主人公は島で長く友情を育んできた二人の男。気の良い男パドリック(コリン・ファレル)と初老の男コルム(ブレンダン・グリーソン)の突然の絶縁宣言からはじまる。はじめのうちは観ている側も冗談だろうと思い一笑に伏しているのだが・・・。みるみるうちに怪しい展開へと紡がれていく。スクリーンを観ているこっち側の人間までも、「なんで?なんで??」とだんだん笑えなくなる。あっという間に画面に引きずりこまれ、最後までカオスの中で捜し物を見つけようと藻掻き苦しむ。シュールで重たい作品だが、生涯記憶に残る作品になってしまいました。作品中で交されるふたりの会話でコルムが放つ「お前みたいなつまんない奴とは関わりたくない」と言い、そして「安らぎがほしい」と呟く。この台詞の深さが、ジワジワと沁みてきて自分を顧みてしまいます。どちら側の立場でも、重たくのしかかる問題ではないでしょうか?「生きる意味とは?」を問う、閉塞感に満ちた人間の中に潜む、割り切れない感情が複雑に絡み合う、人間ドラマをあなたはどう捕らえますか?
P.S. コリン・ファレルという俳優さんに対する見方(評価)が、正直変わった作品です。やっぱ監督さんの力って大きいのですね・・・。そしてブレンダン・グリーソンは凄いです。もうひとり記憶に強く残ったのが、風変わりな青年役を演じたバリー・コーガン。個性的な風貌は“ダンケルク”“エターナルズ”でも観ていて、きっとそのうち頭角を現してくるに違いないと思っていましたが素晴らしい演技でこころに残りました。
封鎖社会をテーマに表現された作品は数多くあるのですが、何故か50年も前に観た、デビット・リーン監督の“ライアンの娘”を思い出したわたしです。機会があったら観てください。テイストは違いますが、わたしの中では同じ感性を感じます。最後にもうひとこと。登場する犬、ロバ、馬などの動物たちが、凄い演技をしているので驚かされます。アカデミー賞の動物部門を創って欲しいくらいの名演技です。
by eddy-web | 2023-03-16 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
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