

2023.1.30.
久しぶりの洋画鑑賞です。ようやく洋画公開が動き始めました。選んだ作品は話題作“SHE SAID"。前々からチェックしていた映画だが、この作品ほど皮肉といえるものはないように感じる。時は2017年、ニューヨーク・タイムズ紙が報じたひとつの記事が世界中に衝撃を走らせそして社会現象を巻き起こす。映画界にはびこる闇の圧力を暴いた問題作は、ニューヨーク・タイムズ紙の調査報道に基づきまとめられた傑作ノンフィクション「SHE SAID」が原作。事件後、記事をもとに出版され、世界中で大ベストセラーとなり世界を接見し、作品はピュリッツァー賞を受賞。アメリカの良心と言うか、メディア界の良心を問うそんな作品となり、あらためてジャーナリストという職業の責任の重さや誇りなどを問いかけています。
ハリウッドの絶対権力者で実在の人物、大物映画プロデューサー・ハーヴェイ・ワインスタインが起こしたセクハラ/性的暴行事件の全貌が証される衝撃の実話に胸を揺さぶられる。
いままでもこのようなテーマの作品は映像化されていますが、ごく最近では“スキャンダル”が頭に浮かぶ。こちらもTV業界の闇を浮き彫りにした話題作で、豪華女優陣(キッドマン・セロン・ロビー)が顔を揃えアカデミー賞を受賞した。思うにメディア業界はこうも権力がはびこる、まるで裏社会のような怖い世界という印象を残した。そしてそれをまた、作品にしてしまう業界の凄さ怖さを感じてしまったわたしです。
“SHE SAID"の、告発された大物プロデューサーは、「グッド・ウィル・ハンティング」「恋におちたシェークスピア」「ロード・オブ・ザ・リング」「英国王のスピーチ」など多くの名作を創り上げた人物である。作品を観て感動したのは確かなことだが、何か残念と言うか悲しい気持ちにさせられた。先に上げた名作たちはみな素晴らしい作品ばかりで、その作品たちでさえ泥を塗られたように思えてとても残念である。映画製作の関わったひとたちは、どんな気持ちになるのでしょう?人に夢や希望を観させ、そして感動と共に明日への活力を与えてくれる業界の裏側にこんなに深い闇が存在していたという事実。わたしには感動とはウラハラに、イヤな気分も少し残った作品となりました。
さて、作品を観た率直な感想は映画を楽しむというよりは、「ひととしてどう生きるか?」を考えさせられました。主人公の二人の女性記者・ミーガンとジョディを演じた、キャリー・マリガンとゾーイ・カザンは真実と向き合い被害者の立場に寄り添い地道に真相に近づいていく姿を見事に演じています。“スキャンダル”のようなエンタメの派手さはないが、厚みにある作品に仕上がっています。ノンフィクション作品なのでリアルなのは当たり前ですが、この作品は出演者たちの見事な演技とそれを手がけたスタッフの情熱が創り上げた秀作ではないでしょうか?被害者を演じた女優陣もみな素晴らしい演技で、胸にくるものがありました。面白い映画ではありませんが、鑑賞して損のない作品です。ジャーナリストたちの葛藤と真実と向き合う姿にあなたは何を感じますか?ぜひ、観て下さい。
P.S. 大好きな女優さんキャリー・マリガンさんは今回やや控え目な役どころでしたが、芯の強さをしっかりと伝えてくれました。もうひとりの主人公を演じたゾーイ・カザンさんは、この作品では一番の功労者ではないでしょうか?繊細な演技で何度もこころを揺さぶられました。“ニューヨーク 親切なロシア料理店”ではじめてお目にかかりましたが、いずれ映画賞を手にする日がやってくるそんな女優さんでした。