人気ブログランキング | 話題のタグを見る
よもやまシネマ589 “ザリガニの鳴くところ”
よもやまシネマ589 “ザリガニの鳴くところ”_e0120614_13441519.jpgよもやまシネマ589 “ザリガニの鳴くところ”_e0120614_15564853.jpg




2022.12.06.

公開前から気になっていた作品、“ザリガニの鳴くところ”を鑑賞。公開している劇場や時間がかなり限られていたので、いろいろ調べ錦糸町へ。
なぜこの作品に引かれたか?というと、何と言ってもそのタイトル。子どもの頃、毎日のように近所の池に行き友だちとザリガニ吊りを楽しんだ。「ザリガニって、鳴いたっけ???」という、素直な疑問が全身を貫き、気がつくと劇場へと足をはこんでいた。
わたし好みの作品に出会いました。原作はもとより、制作スタッフのほぼ中心が女性という作品“ザリガニの鳴くところ”。制作のリース・ウィザースプーンが「読み始めたら止まらなかった」と語り、即、映像権を獲得しプロデュースすることになったと報じられています。全世界で1,500万部突破の大ベストセラーミステリーは、日本でも2021年本屋大賞翻訳小説部門第1位に輝いた話題作。これだけコマが揃えば、感性を刺激されずにはいられない。
さて、感想です。原作の著者・ディーリア・オーエンズがノンフィクションの書き手として知られる動物学者という肩書きにもそそられる。その作家がはじめて書き上げたフィクション、それが“ザリガニの鳴くところ”。物語はそんな彼女のベースになっている動物学が、主人公カイアと重なる。実際に物語のような過酷な状況の中で生きる者など、いるはずも無いとだれしもが思う設定だが、気がつくとそれこそ「見始めたら止まらなくなった」。現実に世界中で起こっているDVや育児放棄の問題そして偏見と差別が、ひとりの少女カイアの人生を通し描かれている。さきほども言いましたが、ノースカロライナ州の湿地帯にひとり人との関わりを絶ち生きる少女カイア。彼女が辿ってきた過酷を極める人生は、言葉では言い尽くせないほどのもの。そんな彼女に降りかかった、殺人容疑はさらに人生を揺るがしはじめる。
その昔「野生の少年」という、映画を観た。フランスの巨匠フランソワ・トリフォー監督の作品で、実話に基づいたジャングルで野生児として育った少年の、人としての再生物語が頭に浮かんだ。時代背景は違うがフィクションとして紡がれた“ザリガニの鳴くところ”は、妙にリアリティに溢れている。単にミステリー作品として捕らえるよりも、多くの要素が見事に繋がれた最上級の作品であることは間違いない。この作品もまた「野生の少年」同様に、幼くして親に捨てられひとり、偏見の対象にさらされながら強くいきるものの物語である。彼女を支えているのは、湿地帯の住む多くの鳥類や動植物たち。自然から生きる術を学び、その才能はいつか花咲き本当の再生へと繋がる。そんな彼女の孤独につけ込む、恋愛感情がこのミステリーの核となっています。
今作はストーリーはもちろんだが、映像の美しさは紛れもなくこの作品のレベルを上げています。自然の美しさは主人公だけではなく、鑑賞側にとっても潤いを与えこころに希望の光を与えてくれています。改めて自然の大切さと慈しむこころを忘れてはいけないことを実感しました。そして最後に音楽に参加しているテイラー・スウィフトが提供している楽曲「キャロライナ」が、久しぶりに心に染みた映画音楽となりました。彼女もまた、この作品に惚れ込んでの書き下ろした作品だと語っています。はじめに言いましたが、わたしの中で、大好きな映画作品のひとつに加わりました。
P.S. 主人公カイアを演じたデイジー・エドガー=ジョーンズさんが、とても印象に残る素晴らしい演技をしています。子役の子も素晴らしかったが、メインのカイアを演じた彼女の感性豊かな表現力はこれからの活躍を多いに期待させてくれます。ほぼノーメーク状態での演技ですが、きっとメークをするとガラッと雰囲気が変わる、そんな容姿をしています。私見ですが、ちょっと森泉さんに似ています。
メガホンを取ったオリヴィア・ニューマン監督の演出も、忘れてはならない素晴らしいもの。女性目線の演出は、きっと女性ファンのこころに届く映画となったことでしょう。男のわたしでさえ、響いたのですから・・・。

by eddy-web | 2022-12-11 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
<< よもやまシネマ590 “Dr.... よもやまシネマ588 “ブラッ... >>



エディデザイン室
by eddy
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
最新の記事
カテゴリ
以前の記事
2024年 10月
2024年 09月
2024年 08月
2024年 07月
2024年 06月
2024年 05月
2024年 04月
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 06月
2007年 05月
フォロー中のブログ
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


logobr.gif