2022.10.12.
連休明け、今にも泣き出しそうな空を尻目に劇場へとチャリを走らせたわたし。今日観る作品は“マイ・ブロークン・マリコ”という、まえまえから気になっていた映画。主演は永野芽郁と奈緒のふたり。二人は連続TV小説「半分、青い。」で共演以来、公私ともに大の仲良しということは周知の事実。奈緒のほうが少しお姉さんだが、そんな壁は微塵もないほど二人の間に壁はない。ある番組でふたりの仲良しさが伝わる映像を観た。屈託のない会話の中に、お互いをリスペクトした深い関係が見て取れ、とても羨ましいと思ったわたし。そんなふたりが4年ぶりに共演した映画となれば、「半分、青い。」を思いだし、足は自然と劇場へと向っていた。
若手を代表するふたりの女優さんが、4年経っての姿には物語とは別の意味で興味がある。さて、感想です。この作品がSNSで話題になった、平庫ワカの同名人気コミックが原作だとは知らずみたわたし。こんな漫画があったなんて、映画を観るまで想像すらしなかった。というか観ても結びつかなかったのが事実。内容的には漫画の題材になるのかと思う、やや暗めの社会的背景がベーストなり、ふたりの奇妙な友愛が描かれていたからだ。映画ももちろん良く出来ていて、こころの中で忘れていた感情を蘇らせてくれる。日常の中に埋もれてしまいそう些細な出来事でも、その人にとっては何にも比べられないほどの出来事が丁寧に紡がれ胸が苦しくなる。そう考えると原作の凄さが、本当に伝わる。作品は全1巻の完結もので、第24回漫画部門 新人賞を受賞したとのこと。日本の漫画市場は、想像を遙かに超え世界を拡げているようです。
物語はまったく異なる性格の幼なじみが織りなす、ともにけっして恵まれてはいない孤独を知る魂の結びつがテーマに描かれています。忙しい毎日に流されてる時に、友の死を知る主人公シイノモトコの姿が写しだされストーリーははじまる。だれもがおくる日常に突然おきたTV報道による友の訃報。こんな事が現実に起きたらと思うと同時に、わたしはすでにスクリーンの中に取り込まれていた。友に何もしてやれなかった悔しさと、自身の無力さを嘆き苦しむ主人公シイノモトコの姿は痛々しいほど切ない。あっという間の放映時間が過ぎ、見終わった後に何度もいくつかの場面が蘇り「なんで?」って思うわたし。きっと主人公と同じ思いをしていたに違いない。「時間がこころの傷を癒やす」なんてよく言われますが、そんな事はないとわたしは思います。どんなに時間が経っても忘れる事なんて出来ないこともあり、それが自分を支える芯になっているとわたしは思っています。忘れられないひとがいることで、その人は生き続けていると信じています。いろいろと考えさせれる映画に出会いました。良かったです。
P.S. 主人公(シイノ)を演じた永野芽郁さんが、今までに観たことのない表情を見せはじけています。ちょっと不良っぽさを出しつつ、こころの葛藤や悲哀を実に見事に演じています。親友のマリコを演じた、奈緒さんも難しい役どころを見事に創り上げ素晴らしかったです。ブロークン(壊れた)の意味が、深く刻まれたマリコの姿は、本人にしか解らないであろう虚無感を表したタイトルではないでしょうか?劇中に使われた手紙のやりとりが、とても印象に残っています。「Dear シーちゃん」ではじまる文章には、素直なマリコの感情とは別に救いを求めるこころの叫びが綴られ胸が張り裂けそうに何度もなりました。
重たい作品ではありますが、それでも人は生きて行くというメッセージが込められているそんな気がします。