2022.10.3.
新海誠。彼の名を知らないアニメファンは存在しない。「新海ワールド」と称される風景描写は、その緻密さに実写では得られない美しさを創り上げ観る者たちのこころを癒やしてくれる。彼を知ったのは大ヒット作、“君の名は”を鑑賞した時。アニメ界を牽引してきたジブリの作品やディズニーはほぼ観ているわたしだが、そこに割って入ってきた監督がこの人。まえまえから高い評価を得ているクリエーターのひとりだとは知っていたが、鑑賞する機会に恵まれずやっと観たのが“君の名は”。タイトルを聞いたとき、往年の日本古典映画が頭に浮かびイマイチピントこなかったことを思い出す。ところが観るやいなや壮大なスケールで展開していく独自の創造性と、背景に使われる風景描写の美しさに目が奪われ「開いた口がふさがらない」とはまさにこの瞬間だった。ジブリやディズニーの高い技術もそれぞれ違いはあれど、凄いと憧れさえ感じていたわたしだが・・・。どちらでもない独特な世界感が目の前に現われ、わたしは目はおろかこころまでも奪われてしまいました。日常の中にともすると見過ごしてしまうような風景が、その緻密な表現力と感性でまるで違う自然が秘めた本当の美しさを浮かび上がらせてくれる。こんなにも身近なところに、幸せな気持ちにさせてくれる風景があるのだと気づかされる。美しいものを美しいと感じる瞬間とは、きっとこころの持ち方なのだろう。そこが解っている監督だから、「新海ワールド」とまで言われる世界を生み出したに違いありません。
さて、先ほど言いましたが監督作は“君の名は”以降の作品しか観ていなかったわたし。そこへ嬉しいことに、「新海誠IMAX映画祭」と銘打たれた監督の3作が公開された。監督の美しい描写力をIMAXで観られるなんて、こんな機会は逃すわけにはいきません。そしてなんと言っても3作の中の一本が、“秒速5センチメートル”という、監督が初期の頃に創った作品。デビュー3作目にあたる作品。まえまえから気になっていた作品で、他の作品とは少しテイストの違う作品と聞いていて、ぜひこの目で確かめたいと思っていた。
感想です。いままで観た作品(後期)とは違い、ファンタジーのようなスケール感はない。初恋をベースに短編3部作(桜花抄・コスモナウト・秒速5センチメートル)で構成されごくありふれた日常の一遍を、丁寧に紡いでみせた誰もが通ってきた道が描かれています。儚くもあり、切なくもある。この作品が公開された時、見た観客はその結末に哀し過ぎるとの声が多く寄せられたと聞いている。そしてそのコメントに監督がひどく落ち込んだということが何かに載っていました。監督の真面目さや繊細さが覗える話です。作品のキャッチフレーズは「どれほどの速さで生きれば、君に会えるのか」。そして劇中に出てくる台詞「1000回メールしても、こころは1センチくらいしか近づけなかった」は、こころにしっかりと刻まれました。良くも悪くも相当影響力のある作品だったのでしょう。わたしは実は、この作品一番好きかも知れません。全部見ていないので軽はずみな事は言えませんが???だれもが一度は通って来た、ほろ苦い一ページ。青臭いと言えばそれまでだが、誰もがはじめは青臭いのです。そこから幾度かの経験をし、知らない間に時間に流され社会に染まっていくのです。歳を重ねればいずれ解ります。観る人によってきっと好き嫌いがはっきりと分かれる作品だと思います。世の中、そんなに思い通りにはなりません。それでも前に進まなければ生きていけないのですから・・・。すべて自分の糧として大切にするのは、どうでしょうか?難しい事とは思いますが・・・。みなさんはどんな感想を持つのでしょうか?みんな違ってそれでいい。あれっ、どっかで聞いた台詞ですね!取りあえず映画館に行って、美しい自然の中に身を浸してみてください。
P.S. 近日公開予定にの、新作“すずめの戸締まり”を前にした企画でしたが、とても嬉しい出会いに感謝です。新作も期待大ですが、やっぱり昔の作品も含めすべて観たくなりました。頑張ります。