

2022.6.8.
サイコパスの上をいくシリアルキラーを題材にした、衝撃作にであってしまった。作品名は“死刑にいたる病”。題名を聞いただけでも、何か興味をそそる。海外作品では良く創られている題材の作品だが、日本では珍しいのではないでしょうか?シリアルキラー出はないが綾野剛主演の“楽園”は、サスペンス仕立てで少し同じ薫りが漂う作品かも?
犯罪ドラマでここまでリアルに殺害現場を表現しているのを観るのは、“ミッドサマー”以来。苦手な分野で好んで観る作品ではない。実際“ミッドサマー”はその年観た作品では、良くも悪くも一番嫌い(苦手)な作品として残ってしまった。今回の作品“死刑にいたる病”はPG12の年齢制限が掛かっていますが、観た感じちょっと緩いきもする。作品の善し悪しは別として、観せる年齢はかなり考えなければ行けない作品と感じました。公開されてからかなり時間が足っていますが、結構観客は平日にも関わらず多かった。劇場に来る人たちをときどき観察することがある。いろいろなタイプの人が映画によって違うのが読み取れ、つい観察してしまうわたし。今日は隣に座った男性が、始まって5分経つか経たないかで籍を立ち戻ってこなかった。きっと苦手な作品だったのだろう…。冒頭からかなりショッキングなシーンが映し出され、まともに画面を注視できない滑り出しは強烈。後部座席に座ったアベックも予告編のときは、楽しそうに談笑していたが終了後は沈黙状態。彼にしては「やっちまったっぁ~~!」って気分ではないでしょうか?
前置きが長くなりましたが、そんな作品です。
さて、作品ですが監督は“凶悪”で脚光を集め日本を代表する監督のひとりとなった白石和彌監督。近作“孤狼の血”でも、リアルな演出と映像表現で世間をあっと言わせたばかり。観ましたが人間の中に隠れている狂気みたいなモノがあふれ、背筋が寒くなります。今作の“死刑にいたる病”は連続殺人鬼の起こした殺人事件のひとつが冤罪であるという話からはじまる物語。主演は同監督作“彼女がその名を知らない鳥たち”で主演をした阿部サダヲさん。この手の役はおてのものと言わんがごとく、犯人・榛村大和を不気味に演じていてまさにはまり役。彼のスキルの高さは半端ありません。W主演の大学生・筧井雅也くんは最近めきめきと力をみせる若手俳優のひとり。理想とはかけ離れた大学に通い、鬱屈した日々を送る自己表現の苦手な青年を見事に演じ、阿部氏とがっぷり四つの演技をし素晴らしい存在感を出しています。二人の留置場での接見場面の物静かなやり取りは、なんとも不気味な雰囲気でゾクゾクし張りつめた緊張感を造り出しています。作品としては良く出来た一級品だとは思うのですが、個人的にはちょっと苦手な作品です。心理描写が緻密に紡がれているので、心理学的観点の勉強にはなるかと思うのですがやはりちょっと怖いです。もし自分の中にもそんなモノがあったなら?と考えるだけで寒くなります。あまり知らない俳優さんたちが多く出ていましたが、みな白石組(業界)に参加出来たことを誇りに感じているとインタビューで語っています。言うだけあって、みなさん、どの方も素晴らしい演技をされていた。筧井の母親・衿子役を中山美穂さんが演じています。年齢を重ねベテランのイキにきた彼女の、影を背負った儚げな演技にも目が離せません。彼女と大和の関係が浮かび上がる終盤は、もやもや感がMAXになり最後まで緊張の連続が続きます。
サスペンス好きなひとには、観て損のない作品ですがリアルな殺人場面の描写にはくれぐれも覚悟を持ってご覧下さい。デートにはあまりお勧め致しません。
P.S. 好きにはなれませんが、良くできた作品です。しっかりとこころに刻まれた作品となりました。