

2022.5.2.
写真家であり映画監督でもある、蜷川実花さんの新作“HoLic”を鑑賞。久しぶりの邦画鑑賞は、独自の美的センスを常に全面に押し出すゴージャスな演出を手掛ける蜷川監督の感性溢れる作品。写真家として活躍する一方で、コミック「さくらん」で映画監督として2007年にデビューし、その独特な世界感を画面いっぱいに表現する演出力は、父親譲りのまさにDNAとも言うべきもの。特に色に拘る表現力は、まさに「百花繚乱」を体現している。女性特有の感性なのかは解らないが、ど派手な色使い中にも繊細かつ緻密なバランスを醸しだし、上品さもしっかりと伝わり不思議と心地良い・・・。これぞ蜷川マジックとでも言いましょうか?
前作の“人間失格”とその前の“Dinerダイナー”を観ていますが、映画と言うよりか舞台を観ているような演出が特徴で、美術やヘアメイクなど写真家としての拘りが随所に表現のコンセプトとなっている事が覗える。原作が持つ不思議な世界感を二次元の世界から三次元へと膨らませる演出をきっと楽しんでいるに違いない。原作はコミックの中でも特殊なものばかりで、異端とも言えるものばかり。あえてそう言うものをチョイスしているだけでなく、作品に惚れての映画制作をしている、そんな感じがします。奔放で外連味のない表現力には、癖はあるが引き込まれてしまう。まさに癖になる毒の魔力かも知れない・・・。
キャスティングもいつもながら豪華で、どんだけお金をかけているんだろうと、つい下世話に考えてしまう。でも観ると思うのは、出演している俳優のみなさんが自分の本質とは違う何かを楽しんでいる様にも見える。ど派手な美術や豪華な衣装、メイクときっとこう言う世界にあこがれている学生たちには、貯まらない刺激ではないでしょうか?観る側がそう感じる以上に、演じている俳優のみなさんたちはそれ以上の高揚感を味わっているに違いありません。きっと楽しい現場ではないでしょうか?主人公・四月一日(わたぬきと読むそう)を演じた神木隆之介、忙しくいろいろな役を演じていますが、何をやっても画になるひとです。そして壱原侑子役の柴咲コウさんは“燃えよ剣”以来の再会ですが、妖艶な出立と振る舞いの女王さま振りにはこの役にぴったり。もともと彫りの深い顔をしているのもあるが、このキャラのもつ雰囲気を最大限に表現し演じています。原作の年齢はきっともっと若いとは思うのだが、キャストのみなさんそれぞれに頑張って演じていて、新しい発見が多くありました。とくに気になったのがヒール役の女郎蜘蛛を演じた吉岡理帆さん。CMでも良く目にする売れっ子さんですが、今回の役どころには度肝を抜かれた感じです。柴咲コウを相手に一歩も引かない妖艶振りでただただビックリ!!続々するキワドイ仕草や目線など、一皮もふた皮もむけたその演技に釘付け状態。今回一番の見つけものとなりました。今後の活躍が多いに期待です。
原作もちょっと見たい、そんな気持ちになっている自分です。感性を刺激する、久々の娯楽作品でした。
P.S. 衣装やメイクに先ほど触れましたが、小道具などにも細かい拘りが観て覗える演出は、付加価値が溢れ見応え充分。いままでTVドラマやアニメで放映されていたことを、全然知らなかったわたし。完全に時代に取り残された漂流者です。“HoLic”は伝統美と新感覚の表現を見事に掛け合わせた、そんな作品ではないでしょうか?劇中の「この世に偶然なんてない。あるのは必然だけ・・・・・・。」という台詞は、確かに・・・と何故かこころに刻まれる。