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よもやまシネマ595 “BELFAST/ベルファスト”
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2022.4.19

週一で通う映画館の日常。一週間以上感覚が空くと、まるで水を欲するかのようになり身体が渇き苦しくなる。そうは言っても、そうそう観たい作品がある訳もなくそして時間も合わせるのに苦労する。10日も空いてしまった映画鑑賞の時間だが、見逃していた作品“ベルファスト”をやっともいる事ができた。久々に電車に乗り日本橋まで足をのばしたわたし。
今年度アカデミー賞脚本賞を手にした作品は、激動の時代に揺れるアイルランドの街ベルファストを舞台にした、叙情溢れる美しくも哀しい少年期の主人公と家族の物語を紡ぎ出してみせる。冒頭、物語は少年バディの屈託のない笑顔と、平和で豊かな繋がりが覗える街並みと住民たちの姿が画面から浮かび上がる。そしてその風景が一変し、みるみるうちに様子が変わり町中が混乱の渦に巻き込まれて行く。いったい何が起こったのかは画面の中のひとたちはもとより、鑑賞しているわたしたちたちさえ解らない。それは北アイルランドで1960年代末にはじまった、「北アイルランド紛争」への突入の合図になる暴動を捉えた序章。ほんの少し前まで、町中に子どもたちの笑顔が溢れ、そして優しさと思いやりに包まれていた街ベルファスト。映像はモノクロで表現され、突然ベルファストの街を分断するプロテスタントとカトリックによる反目の長い戦いへと扉が開いてしまう。宗教改革に伴う対立の根が「北アイルランド紛争」というかたちで現われた暗く哀しい時代。この物語はそんな中、深い愛で結ばれた家族と主人公バディの目線で捉えた、理不尽な時代への憤りとそれを乗り越えていく家族の絆が強く描かれ胸を打つ。背景は違っても、これはまさにいまウクライナで起きている戦争となんら変わりない話しである。平和な日常が突然奪われる瞬間とは、まさにこういうことなのだろう・・・。映画の中では戦いでの死は写し出されない。それはある意味救われるのだが、それでも暴徒とかした顔見知りの街のひとたちがスーパーを襲い、物品を盗んでいく景色には恐怖を覚える。争いは人のこころを狂わしていくという、そんな息苦しい瞬間を目の当たりにするシーンである。主人公バディは、この経験をどう受け止め大人への階段を上って行くのだろう?父、母の苦悩、そしてやさしい爺、強い婆の後ろ姿に・・・。
この作品は監督であるケネス・ブラナーの実体験がもとになっていると書かれている。ブラナー自身が当時を思い浮かべ、いまは平和となった街ベルファストに敬意をこめ創り上げた秀作ではないだろうか?インタビューで当時のベルファストは白黒の世界に見えたと語っています。なにか凄く深い意味を感じてしまいます。作品創りの手段ではあると思っていたが、これを聞くと監督のこころの断面が見て取れる。作品中に家族で映画館に行きアメリカ映画を楽しむシーンが写し出される。はじめは「恐竜100万年」である。主人公バディよりは歳が5つくらい上だったと思うが、わたしも映画館で観ていた。ラクエル・ウェルチという女優さんが写しだされ、子どもに見せていいものなのかと気をもむ父母の姿が何とも微笑ましいシーンである。また別のシーンでは「チキチキ・バンバン」のディズニー作品は写し出され、車(クラシック)が断崖から落ちていくシーンに同じ仕草で驚く家族の顔が、これまた何とも言えない。そして車に羽が生え空へと浮かび上がるとみんな目を輝かせ笑顔が満開となる。この作品の一番コンセプトと言えるそんなシーンである。この作品もわたしには思い出深い作品でしたので、まるでこの家族とこころが繋がったかのような気になりました。作品は白黒なのですが、写し出されている映画はカラー。この粋な表現はたまらなくこころに刺さる演出。映画全体が写真集を1枚1枚、ページを捲っていく、そんな作品なのですが決めの細やかな表現におおくのメッセージが込められていると感じます。さきほど監督のコメントで当時は白黒の世界だったとのべ、そのあと「シネマは想像への世界への逃避だった」とも語っています。純粋な感性の持ち主なのが伝わるコメントでとてもファンになりました。出演していた俳優さんたちも素晴らしい表現力で言葉だけで無く、仕草や振る舞いに至るまで豊かさに溢れ見応えのある演技です。ジュディ・デンチのおばあちゃんの存在感は顔に刻まれた皺の数の美しさ同様に凄かったです。
見終わった後に、どうして浮かんでくるウクライナ。なにも出来ない歯がゆい自分ですが、一日もはやい平和な日々が訪れることを願ってやみません。
by eddy-web | 2022-04-20 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
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