

2022.3.29.
独自の世界感で映像美を追求するギレルモ・デル・トロ監督の最新作“ナイトメア・アリー”を鑑賞。デルトモ監督は2017年、“シェイプ・オブ・ウォーター”見事アカデミー作品賞・監督賞ほか4部門を手にし、その名を世界に知らしめた人物。新作を発表する度に、個性豊かな映像表現が話題になりファンのこころを掴んではなさない。その想像力は他のどの監督とも異なる表現で、きっと好き嫌いがはっきりと分かれるそんな監督ではないでしょうか?“シェイプ・オブ・ウォーター”がアカデミー賞を受賞した時は、正直驚きました。かなり異端の作品ですからまさかと思ったのがわたしの私見。ヴェネツィアやカンヌなどで評価されるのは、何となく解るのですが、アカデミーでこの手の作品が選ばれるとは夢にも思いませんでした。個人的な意見ですので他意はないのですが、個性が強い作品ゆえアカデミックな映画賞とは縁がないものかと、勝手に思っていました。ある意味、評価基準が時代と共に変わってきたということなのでしょうか?それ以上でもそれ以下でもありません。わたしは監督の作品はかなり好みな方なので、いつも新作を出す度注目しています。
監督が表現の源にしているネオ・ノワール(※)の陰影を強調した、物語の不穏性や悲劇性を特徴とする世界感ははまると癖になる。きっとデル・トロ監督を好むファンは、完全に中毒になっていると感じます。似たような感覚はリンチやバートン共繋がるのですが、深く読み解けばそれとも違うと感じる。生死の表現もかなりリアル且つきわどいものが多く、常にR指定がついてまわる。ベースはファンタジーの世界だが、冠にはダークがつくのが常の作品群です。“パシフィック・リム”はちょっと違っていましたが、根っこはいっしょ・・・。
さて今作“ナイトメア・アリー”ですが、デル・トロ監督の集大成みたいな映画となっていました。物語はひとりの闇をかかえた男が、果てしなくつづく欲望の迷路に彷徨っていく姿を浮かび上がらせています。暗くて重くて、どんどん引きずり込まれていく闇に息苦しささえ感じてしまう作品になっています。見終わって思うのは、大人向けのファンタジーを独自の拘りで極限まで突き詰めた感覚作品といったところ。いままで以上に賛否が分かれる作品というか、もっと言えば好き嫌いが分かれるそんな作品です。あなたはどちらでしょうか・・・???
因果応報を結論としてラストを迎えますが、きっと納得の結末ではないでしょうか?
余談ですが、デル・トロ監督は大の日本ひいきは有名です。とくに特撮やアニメ、漫画に造詣が深く、円谷英二や手塚治虫の大御所、そして永井豪や楳図かずお、大友克洋など影響を受けている作家が多い。表現だけで無く、美術や衣装などさまざまところに、それらは現われているようである。彼が尊敬していると公言している人物が押井守さん。これだけ聴いても彼自身がかなりCoreな世界感に、心酔していることが覗えます。デル・トロ監督は監督である前に、かなりのオタクということ。きっとデル・トロ監督が好きなファンは紛れもなくオタクです。わたしもそのひとりということになります。これからも追っかけ続けようと思っています。
ちょっと俳優さんたちの話を・・・。キャストの豪華なことは連なる名前をみれば一目瞭然。
ブラッドリー・クーパー、ルーニー・マーラー、ケイト・ブランシェット、トニ・コレット、そしてウィレム・デフォーといずれ劣らぬアクターが勢揃い。まるで共演楽しむのではなく、それぞれが演技対決をしているような緊張感が画面からひしひしと伝わって来ます。どの俳優さんも妖艶で、耽美な演技を醸しだし最上のサスペンス・スリラー作品を創り上げています。
※ネオ・ノワール/1945年から1960年にかけて流行したフィルム・ノワールの復興を目指したアメリカ映画のジャンル。フランス語「film noir」ガ起源で、直訳すると「暗黒映画」となり、従来の映画より陰影をより強くした画面づくりが特徴。