

2022.3.09.
きっと泣くと思って来ましたが、やっぱり泣かされました。今日鑑賞した作品は“余名10年”。予告を観ていらいずっと気になっていた作品で、予行編ですでにウルウルしてしまう始末。ただ、物語が進行していくうちに主人公や家族の気持ちが胸に響き、泣いたら失礼だとず~~っと我慢してたのですが後半からは涙を止める術を無くし号泣。ほんとうにすみませんでした。涙腺の緩いわたしにはこの作品は反則です。もし自分だったら、こんなにも素直に生涯を全う出来るだろうか?と考えさせられました。出演者のみなさんがそれぞれの役を、全身で表現していて映画を超えズンとこころにのしかかり、1分1秒も無駄に時間を過ごしてはいけないと心底思う自分です。
原作は物語の主人公・高林茉莉(まつり)と同じ数万人に1人という難病、肺動脈生肺高血圧症という病に侵され、この作品が刊行される3ヶ月前の逝去した小坂流加さん。自身を投影し描かれた作品に間違いはないが、余名10年であることを知った20歳の女性が死に向って精一杯生きる姿を創作として紡がれています。この作品を映画化した藤井道人監督は、製作にあたり「普段見落している四季折々の自然の変化や茉莉が過ごした日々は、彼女(小坂流加)が思い描いていた『夢』だったように感じ、それを映像化したかったと語っています。映画を観るとまさにそんな気配を感じることが出来ます。
映画は原作とは異なるスチュエーションも多く、原作とはまた違った世界観を創り上げています。ただ、はっきりと感じるのは「生きる意味」の重さがどちらにもしっかりと描かれているということ。この作品を読み、または観て少なくとも命の重さを感じないひとはいないだろう。うまく言葉にはできないが、一生懸命に生きることは例えどんな人生であれ尊いものではないでしょうか…。
高林茉莉を演じた小松菜奈さんの魂のこもった演技は主人公に乗り移りとてもリアルな感情表現となり胸が打たれました。また、恋人・和人を演じた坂口健太郎くんもとても良かったです。彼はこういうちょっと頼りなげな人物をやらせるとぴか一。映画の中でリリー・フランキー演じる玄さんに言われた、「捨てられた子犬のようだった」とはまさにピッたしの表現。それが茉莉と出会いどんどんと変わっていく姿は、観る人たちへの「生きる」メッセージとなっています。今回作品を観て感じたことは、物語に出て来る沢山のひとたちがじつに見事に描かれていたこと。それぞれに抱えた想いが本当にリアルに表現されていて、沢山のシーンでこころが揺さぶられ胸を熱くしてしまいました。
キャスティングが素晴らしいと思います。お父さん、お母さん、お姉ちゃん、そして友だち。みんな良い人ばかりで良かったです。でも、やっぱり大切なひとがいなくなるのは辛いですネ。
最後に、映画をみるといつも考えることがあります。もし自分だったら…。ということ。こんなに頑張れるだろうか?こんなに静かに時を刻めるだろうか?きっとじたばたと、まわりに迷惑をかけるのだろうと思ってしまう。だから、何かをやり残さないよう必死に生きようと思う自分である。結構長く生きているのに、まだまだと思っている自分がなんとも愛おしくまた哀しいです。みなさんはもし「余名10年」と知ったら、どうその時間と向き合いますか?
P.S. 茉莉が物語の後半、家族との会話で「わたしよりおかあさんたちの方が哀しいよ」と思わず吐露するシーンは忘れられないインパクトになり記憶にのこる言葉となりました。
最後に小松菜々さんがとても素晴らしかったと言ったうえで、そろそろデビュー作“渇き”のような汚れ役も観たいと思っています。彼女の才能は計り知れないとおもっているので、独特の雰囲気を生かした役にどんどん挑戦してくれることを期待しています。