

2022.2.2.
ちょっと気になっていた作品“前科者”を鑑賞。なにが気になっていたかと言えば、出演者たちの顔ぶれ。主演の有村架純(保護司・阿川役)、森田剛(前科者・工藤役)の共演と、間に入る刑事役の磯村勇斗くん。有村と磯村の二人はNHK朝ドラ“ひよっこ”で共演したのが、記憶に強く残っている。近年の朝ドラの中では、特にピュアな物語で毎日TVの前で涙を流していたわたし。そんな二人が再びいっしょに出るとなれば、観たいと思うのは至極当然の話。特に有村架純は役の内容によってさまざまな表情を浮かび上がらせる。昨年観た“るろうに剣心・ファイナル”の雪代巴役の美しさは、いままで観た彼女に印象を完全に打ち消すような美しさでした。とちらかといえば、可愛い系の女子ですが、あの時は本当に雪代巴が乗り移ったような薄幸の美女を演じ、息を飲み込むような美しさが胸に刻まれました。V6の森田くんもすっかり役者が本業になり、TVや舞台でも大活躍。俳優としても高い評価を得ています。そんな訳で、今回は役者さんたちの芝居が気になっての鑑賞となりました。
さて、物語は原作がコミックという最近多いパターンの映画化作品。漫画はもちろん読んではいないし、作品自体知りませんでした。映画化される漫画作品の多さは、ここのところハンパない。それだけ魅力溢れる作品が多いという証拠。日本のまんがは世界中で評価されていて、いまや日本が誇るカルチャーの代表格。それらを実写化した映画も、それぞれ高い評価を得て上手に相乗効果を生み出しています。
“前科者”は特殊なテーマを俯瞰で捉え、人間再生への道標を提案しているそんな作品に仕上がっています。サスペンス的要素が仕込まれ、負の連鎖から繋がる人間の運命を物語は紡ぎ出す。はらはらドキドキとテンポ良く物語はラストへと続いて行く。中盤で犯人が解るのがちょっぴりもったいないが、そこからはじまる人間模様が深く、そして哀しい。犯罪ドラマと言うよりはヒューマンドラマである。胸をえぐるようなシーンや台詞の数々。俳優さんたちの力強い演技力にこの作品への、強い念いがひしひしと伝わってくる。人は誰しも、触れられたくないこと事情のひとつやふたつを抱えているもの。物語に出てくるキャストもまた、立場こそ違えど人間で、もがき苦しみながらも必死に生きているということが浮かび上がる。切ないです。哀しいです。それでも前を向いて生きて行かなければならないことを作品は謳っています。ラスト近くで有村架純演じる保護司の阿川佳代が容疑者・工藤を抱きしめ発する「もう終わりにしましょ」というこころの叫びが耳から離れません。
映画は序盤から有村演ずる阿川の強い行動と台詞が画面から飛び出す。保護観察中の人間の社会復帰への厳しい現実を、切実に訴えかけている。ラストもふたたび諭すかたちでむすんでいますが、わたしたちはこの現実をどう捉えるべきかじっくりと考える必要があるのではないでしょうか。いつだれが、被害者になるか?それとも加害者になるか?ほんのわずかなボタンの掛け違いなのかも知れない。ひとごとと思わずに、わたしはしっかりと今回のテーマと向い合おうと思います。みなさんはどんな感想を持たれるでしょうか?
P.S. はじめに紹介した、観たかった三人の俳優さんたち。それぞれに難しい役どころでしたが、三者三様にそれぞれが抱えた闇の部分を繊細に紡ぎだし見事な和音を奏でてくれました。大拍手です。