

2021.11.30.
ブロードウェイを席捲した名作ミュージカル、“ディア・エヴァン・ハンセン”の映画化作品を鑑賞。あまりミュージカルは得意な方ではないが、最近結構塡まっている自分。むかしは突然歌い出したり、踊り出したりする演出は、どちらかと言えば???だったジャンル。それでも近年観た“グレーテスト・ショーマン”“ラ・ラ・ランド”はマジで感動しました。そのスタッフが創り上げた映画と聞けば、観ないわけにはいかない。もともとブロードウェイで高い人気を誇る舞台は「トニー賞」「グラミー賞」「エミー賞」と名だたる賞を総なめにした名作。また主演のベン・ブラットは舞台でも同じ役をこなしトニー賞の主演男優賞を獲得した人物。彼を観るのははじめてだが、舞台で何度もエヴァン役を演じてきた実績が裏付けるように主人公になりきった演技は流石でした。繊細で難しい役どころだとおもいますが、魂が乗り移ったかのような演技でした。
ちょっと話が飛びますが、ミュージカル映画についてひとこと。実ははじめて観た洋画がミュージカル映画“マイ・フェア・レディ”でした。まだ中学生だった自分は姉に連れられ銀座まで観に行ったことを思い出します。はじめにも言いましたが、歌や踊りを突然はじめる演出に違和感は持ったのは正直気持ちですが、その煌びやかな表現と美しさ(オードリー・ヘップバーン)に圧倒され天にも昇る高揚感をはじめて感じた瞬間でした。日本映画では観たことのない世界がそこにひろがり、その日をさかいに洋画の虜となったことを思い出します。一時低迷期を迎えたミュージカル映画ですが、最近の復活ぶりはめざましいばかり。そして質な高い作品も多く、総合芸術とはまさにミュージカル作品を指す言葉かも知れません。
さて、“ディア・アヴァン・ハンセン”についての感想ですが、とても良く出来た良い作品ではないでしょうか?楽曲の良さ(特に詩)には、感動し涙してしまいました。ジュリアン・ムーアがハンセンの母親役、ハンセンが恋心を抱くコナーの妹ゾーイ役にケイトリン・デヴァー(ブック・マート出演)、そしてその母シンシアにエイミー・アダムスと、脇は完璧のキャストになっています。それぞれに難しい役をきめ細やかに表現し素晴らしい演技でした。作品としてはまずまずの出来映えといえるでしょう。ただ、ひとつわたしの中でちょっと引っかかる違和感みたいなものがありモヤモヤが拭えません。それはテーマになっているメンタルの問題がはたしてミュージカルという表現に合っているのか?ということ。物語は自分に自信が持てず苦しむ若者が、ある出会いと嘘から予想もしない事態へと繋がり、少しづつ成長していく姿を浮かび上がらせる。ナイーブな問題をミュージカルのような派手な演出で創られるのはあまり観たことがない。どちらかと言えば例え悲劇(ウェスト・サイド物語)であっても、歌や踊りで夢を描きだしエンタメの魅力を最大限に表現するジャンル。今作は歌はあっても、派手なダンスシーンはほとんどない。それが悪いと言う訳ではなく、そもそもデリケートな感情表現にミュージカルが合っていたのかということ。そう感じてしまうのはわたしだけかも知れませんが・・・。普通の社会派ドラマとして表現しても、普通に成功したであろうと思うのだが・・・。面倒くさい男ですみません。今作ほどミュージカル作品としては違和感を覚えたわたしです。みなさんはこの作品をどう捉えるでしょうか?ご意見がありましたら是非、一報を・・・。まずは観てからですのお話ですが・・・。
P.S. 近々あの名作“ウエスト・サイド・ストーリー”がスピルバーグ監督により蘇ります。1961年にアカデミー賞10部門を獲った、ロバート・ワイズとジェローム・ロビンスが共同で制作した名作をはたして超えることが出来るかがいまから楽しみです。