2021.11.25.
懐かしの童話「ピノキオ」の実写版“ほんとうのピノッキオ”を鑑賞。「ピノキオ」の名を聞くとまず頭に浮かぶのは、ディズニーアニメ作品。数あるディズニー作品の中でも人気の作品である。劇中に流れたテーマ曲「星に願いを」が有名で、今もなお時代を超え名曲として残っています。内容もピノキオのかわいらしいキャラを象徴するよう展開で、冒険を繰り返し最後は無事夢だった人間へと生まれ変わりハッピーエンドとなる。これがわたしたちの知っている「ピノキオ」の物語である。
今作“ほんとうのピノッキオ”を観てまず驚くのは、ディズニーのあの話はいったい何だったの?と・・・。ぜんぜん違う話にまずは困惑すること間違いなし。ある意味夢がガラガラと音を立て崩れていく瞬間を全身で感じてしまう。それでもいつしか映画の中に足を踏み入れ、知らず知らず別の夢世界へと引き込まれピノッキオといっしょに冒険を単身でいます。
久しぶりに味わった事の無い、感性のファンタジー作品に酔いしれてしまいました。凄い作品ではないでしょうか?いや!凄いです。わたしのハートは完全に射貫かれました。原作を読まずにディズニー作品がすべてだったことに、ちょっと後悔を覚えたわたし。寓話は世界中にあり、映画などによりかなり美化された表現が多いのは確かなこと。世界的に有名な「グリム」や「アンデルセン」も、実はかなり恐い話や残酷な描写が多くそんなに単純なお伽噺は存在していない。そう考えると今作は原作に忠実に描かれた作品となり、あらためてその物語の創造性豊かな表現力に驚嘆する。今さらディズニーを否定はしまい。あの作品はあれで素晴らしい夢を与えたことは間違えではないのだから・・・。それにしても原作は深いです。
さて今作の原作は、イタリアの作家カルロ・コッローディ氏が1881年に「子ども新聞」という雑誌に連載された「ピノッキオの冒険」である。先ほども言いましたが、夢物語にはほど遠いかなりシュールリアリズムな内容です。でも何故か新鮮な感覚を覚え、夢中になってしまいます。わたしはガッツりとやられてしまい、とても高揚感を覚えています。監督は原作者と同じイタリア出身のマッテオ・ガローネ。世界でも評価の高い監督さんらしく、多くの賞にも輝く脂ののった監督さんとのこと。今作もアカデミー賞の衣装・メイク&ヘアーの2部門でノミネートを受けた作品である。これだけ言えば想像つくと思いますが、この2部門の表現力がハンパなく凄いものになっていてビックリします。凄すぎて、どうやったらこんな表現が出来るのだろうと眠れなくなってしまいました。これだけでも観る価値充分ですが、キャストや美術、そして音楽どれをとっても一級品と言える。ディズニーのイメージは一回頭から外して鑑賞することをお勧めします。“ほんとうのピノッキオ”というタイトルどおり、ほんとうのピノキオを知ることになります。ちょっぴり恐いですが、無垢で破天荒なピノッキオの姿になんか忘れていた自由なこころが蘇ってきます。ダークファンタジー色に彩られたストーリーと斬新且つアーティスティクな映像美は、感性を刺激するだけでなく最高の満足感を得られるはず・・・。絶対に観て損の無い作品と断言します。子どもに見せるには、ちょっと時期を考えたほがいいとご提案もしておきましょう。
P.S. 1974年に公開された“星の王子さま”と1980年公開の“エレファントマン”の2作品が再び観たくなりました。片方はファンタジーでもう一方は実話ですが、何か今作と似た感覚と匂いを感じます。両方ともわたしの記憶に残る大好きな作品です。
※ジェペットじいさん役で“ライフ・イズ・ビューティフル”のロベルト・ベニーニが出ています。監督としても凄い人ですが、役者としてもやっぱり凄いひとでした。ピノッキオ役のフェデリコ・エラピくんも素晴らしかったです。全編イタリア語ですが、大袈裟な話術表現はこの作品の生もになっていています。まさにこれぞイタリア映画ってところです。