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よもやまシネマ570 “モーリタニアン/黒塗りの記録”
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2001.11.19.

映画が持つ使命のようなものが、今日観た作品“モーリタニアン”で、強く感じられたわたし。9.11アメリカ同時多発テロ事件から20年の歳月が過ぎ、このタイミングで公開となった作品は事件に関わるもう一つの真実を浮かび上がらせる。作品を観て思うことは、わたしたちが思っているほど事実はそう単純ではないということである。世界を驚愕の渦に巻き込んだ9.11テロ事件は、わたしたちのこころにテロの恐怖と同時に強い憎しみの感情を植え付け、さらにメディアの情報により翻弄されてしまう。
今回の作品は実話をもとに創られている映画。鑑賞のあと強く感じたのは、人はいかに単純に感情に流され、答えを見誤ってしまう生き物なのかということ。この作品は9.11.テロ事件が生み出した、もう一つのアメリカの姿が浮かび上がる。もしこの作品に出会わなければ、テロという現実にただ強い怒りを覚えるだけの無知な人でいたに違いない。法諺に「疑わしきは罰せず」という言葉がある。作品はこの真逆を行う国策の裏にメスを入れ、真実をあぶり出しそして人権の尊さを訴える問題提議をしている。
物語はテロ首謀者のひとりとして捕らえられ、無実の罪で14年間もの間だ牢獄に収監されたモーリタニアン(モハメドゥ・オールド・サラヒ)人の無実を勝ち取るまでの戦いと、彼を救うべく奔走する人権派弁護士ナンシー・ホランダーの真実の追究がリアルに描かれた秀作である。こんなことがあったのか?と目を疑ってしまうほどの衝撃は、9.11をより深く考える切っ掛けとなる作品としてこころに残るものになりました。それにしてもひとの怒りの感情を操り無理あり正義を掲げる国の暴挙には、嘘でしょと思わずにはいられない。恐い話である。R国やC国ならあるかもと思いますが、まさかこんなことが民主主義の先頭に立つ先進国で・・・である。日本もその昔、似たような隠蔽工作をし国民感情を手のひらで操っていた時代がある。それを考えると、一見平和に見える現代社会の中にも、きっとわたしたちの知ることの無い理不尽な行為にさらされるひとがいるに違いありません。
「疑わしきは罰せず」「信じるものは救われる」。残念ですが、もうこんな言葉が通用する世の中ではないということかも知れません。それではどう生きたらと、真剣に考えてみる良い機会かも知れません。
監督はケヴィン・マクドナルドという方で、ドキュメンタリーの世界ではかなり名の通ったひとで沢山の賞を手にしている。そんな監督が描いた作品は、ドキュメンタリータッチとミステリータッチが絡み合い上級の緊張感を味わう素晴らしい作品に仕上がっています。また、出演者のみなさんが、見事としか言えない演技でそれぞれの役を演じています。この映画の原作ともなった手記を出版した主人公モハメドゥを演じたサラヒ・タハール・ラヒムの、感情豊かな表現力は本人が乗り移ったかのようで、素晴らしいものでした。また、弁護士ナンシーを演じたジュディ・フォスター、は実力派の名に恥じない完璧さで、強い信念を内面からほとばしらせクールな「鉄の女」を演じてみせてくれました。そして制作にも関わったとされる、カウチ大佐役のベネディクト・カンバーバッチもまた、いぶし銀のような演技で物語の重要な役割をしっかりと担っています。全体を通してキャストの演技力の高さが、作品を上質に仕上げていることは間違いありません。実話をもとにした作品は、いままでもそうですが一般には知られていない事実を浮かび上がらせ、心の眼を開かせてくれる。映画が担う役割は本当に重く、それだけに信念なくしては創り得ない世界かも知れません。ぜひ、鑑賞をお勧めいたします。
P.S. 久しぶりにジュディに会えたのですが、年を重ねても魅力に溢れ輝きを失わない素晴らしい女優さんです。実はこのBLOG「よもやまシネマ」のはじめての投稿作品が、彼女の出演作“ブレイブワン”でした。2007年の作品でしたが、もう14年も前の作品。沢山彼女の作品を観てきましたが、いつもオーラを放つ彼女の演技は年を重ねてなお輝きを増しているとまた再確認した作品でした。
※サブタイトルの「黒塗りの記録」ですが、日本でも話題になりましたが、「くさいものには蓋ををする」という行為は万国共通の手口のようでした。
by eddy-web | 2021-11-23 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
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