2021.11.12
先週に引き続き、SF映画作品“カオス・ウォーキング”を鑑賞してきました。SF映画大好きのわたしですが、2連チャンは久々。SF作品の魅力と言えば、何と言っても想像力の持つ魔力。エッと思うようなことが、もし現実に起きたらという無限の広がりが何とも言えぬわくわく感を生むところ。
今作は2012年に出版されたパトリック・ネス著書「混沌(カオス)の叫び・心の叫び」が原作の物語をモチーフにした作品。西暦2257年の地球の環境破壊により、移住を余儀なくされた人類が、その星(地球に似た星)で町をつくり暮らしている。だが、何故かそこには女性の姿が見当たらない。導入部から何か意味ありげの?マークがつき、あれよあれよという間に物語の中へと足を踏み入れてしまう。そしてさらにもう一つの謎が写しだされるのだが、住民たちは「ノイズ」という病(???)に犯され、思考や想像がすべて音声化や映像化され浮かび上がるという現象を身につけている。ようは「頭の中がムキだし」になり、相手もしくは自分が何を考えているかが見透かされてしまう。ここまで知るだけでも「何とも恐ろしい」と思ってしまうのは、日頃わたしたちがいかに嘘で固めた人生を送っているということなのだろう。“エターナルズ”みたいなエンタメ度が少ないが、想像力を掻き立てられるテーマである。本当にこんなことが起きたら、大変なことでそれこそ争い事が絶えない無法地帯が生まれるに違いありません。
物語はその星に地球から第2次移住船団が近づき、そこから来た偵察隊の少女ヴァイオラがひとり故障により不時着したところから大きく動き始める。たたみかけるような展開はアクションシーンも含め、SF作品の面白さを充分満たしワクワクドキドキとさせてくれます。解説に原作に忠実なところや映画のために脚色した部分がうまく連動し、簡潔にまとめられていると・・・。ただ原作では人物像がもっと深掘りされ、違った面白さがあるとも欠かれていました。SF作品は読み手や鑑賞する側に、答えを求めてくることも多くその辺がたまらない魅力に繋がる。この作品も本が読みたくなる作品のひとつではないでしょうか?すべての謎が解き明かされる展開にはなっておらず、余韻を残してのエンドロールを迎える。きっと続編が創られるのは間違いないといったところ。
キャストの俳優さんたちが魅力いっぱいに、それぞれの役を演じ新たな魅力をみせている。主人公となる青年トッド役を演じるトム・ホランド、偵察艇で舞い降りてきた少女ヴァイオラ役を演じたデイジー・リドリー共に、しっかりとした演技力で俳優としての確かな足跡を残しています。二人とも“スパイダーマン”“スターウォーズ”のメインキャラを演じ、間違いなくその名を残す作品に出演した俳優さん。逆を返せばイメージが強く残ってしまい、今後の出演作品がすごく大切となる。そんな中よく頑張って難役をこなしていたように感じます。出来ればSF作品ではないものを観たかったのは、個人的な気持ち。デイジー・リドリーは見違えるほど美しくなり、同一人物とは思えないような魅力を発揮していました。女性はほんとうに作品により変貌するので恐いです。あと忘れてならないのがキーパーソンとなるプレンティス首長を演じたマッツ・ミケルセン。デンマーク出身の個性派男優さんですが、出演するどの作品を観ても凄い存在感を醸しだし強く印象にのこるアクター。今作でも圧倒的オーラを発散し、他の追随を許さない迫力でした。あっけない最後を迎えますが、このまま消えるようなことはない感じがします。なかなか面白い視点で描かれた作品ですので、SFファンなら観ない手はないでしょう。
P.S. 近未来が描かれた作品ですが、舞台となっている惑星は遙か昔の西部開拓時代そのもの。考えるに人類はこの先、過ちを繰り返しながら原点回避の旅を続けるようなそんな儚い夢を見ている気がしました。