

2021.8.27.
N.シャマラン監督の最新作“OLD”を、公開初日に観てきました。シャマラン監督と言えば“シックス・センス”。監督の名を世界に知らしめた作品は、ミステリー映画の代表作として今も人気が高い。彼のファンはきっと多いはずだが、創り上げる作品は常に賛否が分かれ、常に話題を呼ぶ。そんな意味でも新作には注目が集まり、「今回はどっち」みたいな恐いもの見たさのイメージがある。これほど当たり外れの作品が多い人は、そんなに見当たらないのは事実。それでも観に行きたくなるのは、やっぱり“シックス・センス”のラストが余りに衝撃的で、その時のインパクトがしっかりとこころに残ったからにほかならない。映画史に残るラストシーンいえる、ミステリーの名作である。私見ですが、シャマラン作品の中でこの映画に匹敵する作品には、残念ですがまだ出会えません。
さて今作“OLD”は、期待に応えてくれるでしょうか?物語は幸せに溢れた家族が、あるリゾート地に向うシーンからはじまる。ホテルに到着すると、マネージャー風の紳士とスタッフによる歓迎を受ける。よくある光景と言えばそうなのだが、歓迎のカクテルを運ぶ美人女性スタッフの冷たい微笑みが、これから起こるであろう不思議な体験を想像させる冒頭の演出。ホテルに漂う何か怪しい雰囲気。緊張感が一気に高まり、画面にあっという間に引きずり込まれる。物語は謎のビーチに足を踏み入れた人々の奇妙な体験(時の急速な流れ)により、あれよあれよと意味不明のまま進み、まるで運が悪いかのようにひとりまたひとりと命を失っていく。ラストは言いませんが、エッと思わせるような衝撃には至りません。シャマラン監督が今まで創ってきた作品は、ミステリー、サスペンス、SF、ホラー、とさまざま。観る側に想像力を増殖させるような、演出効果を巧みに組み立てる手法が持ち味。ラストまでに紡ぐ繊細な演出は、観る側のワクワクドキドキ感を呷り、最後のピースがはまったとき「えっ!うそっ~~~!!」と落とし込む・・・。
残念ですが今作では、そこまでには至りません。全体的にはホラー色が強く、予想を覆すミステリー的要素がなかったのが物足りなさを感じさせます。観るひとにより、評価は違ってくるとは思いますが、登場人物たちが中途半端に多く、その上大ざっぱな扱われ方だったように思えます。落ちもあるにはあるのですが、ちょと無理がありよく解りません。メインの家族は唯一まともな感じだが、それ以外の登場人物は見た目からして怪しい感じが溢れています。その理由が病であるとダイレクトに表現されているため、違和感を覚えてしまう。差別感すら感じてしまうのは、わたしだけだろか???結局それが、ラストの答えに繋がるのが短絡的で納得出来ませんでした。さて、みなさんはどう感じるでしょうか?観ないと解りませんから、まずは観てください。シャマラン監督も何時ものように、役者として登場しています。ヒッチコック監督ばりのお茶目な出演ではなく、ちょっと出過ぎかも・・・。次回作に期待をし、良い作品に出会えることを願ってやみません。
P.S. “シックス・センス”は最高ですが、“アンブレイカブル”“スピリット”も好きな作品です。主人公たちが謎めいていて、不思議な魅力を放っていました。3部作と謳われて公開された“ミスター・ガラス”も脇にいたキャラをメインにし面白かったのですが、キャラどうしのつぶし合いのような結末に、この時もちょっとやり過ぎの創りが強く感じられました。欲張るといい結果には達しないということではないでしょうか?ほどよいさじ加減って、本当に難しいことですね。
※ひとつ拾いものがありました。1996年に公開されたファンタジー・コメディ映画“マチルダ”に出演していた女優エンベス・ディヴィッツさんが、マドックス(中年期)役で後半に登場し、とても懐かしい気持ちになり嬉しかったです。