![]() ![]() 2021.6.7. 近年出会った映画の中で、最も好きになった作品、“るろうに剣心”の本当に最後になる作品が公開となりました。コロナ禍の中の公開ですが、これを観ないでは自粛で渇いたこころを癒やすことはできません。時代劇の歴史に新しい旋風を巻き起こした、“るろうに剣心”。歴史的背景を携え創作された原作の主人公は、時代の返還期が生み出した哀しくも純粋な暗殺者。背負った運命に抗うことなく立ち向かうことで、自らが犯した罪への懺悔の旅を続ける。そんな主人公の生きざまは、現代にはいない新たなヒーロー像を浮かび上がらせました。原作ももちろん面白いのですが、映像化された作品は原作のもつ想像をさらにスキルアップし、素晴らしい映像美で物語を創り上げました。映像だけでなく美術や衣装、メイクなどすべてにおいて一級品の作品ですが、やはり注目すべきはアクションシーン。トリッキーな動きを取り入れた殺陣の演出は、今までの時代劇には見られない迫力を生み、驚愕のインパクトで観客の度肝を抜く。思わず「カッコいい!!」と声が漏れてしまうほど…。また、どのシリーズにも個性豊かな剣士が登場し、戦いの場面では小気味の良い剣捌きの応酬が続き目が釘づけ。スピード感溢れた演出に、こころを奪われます。また、主人公・剣心以外の人物像にもしっかりとスポットを当て、そして内面に抱える憂いを浮かび上がらせる。何故か心ひかれるライバルたちも魅力のひとつとなっています。剣心に挑む剣士たちはみな、時代の波に乗り切れず生きる場所を見失った者ばかり…。シリーズを通して感じるのは、生きた証を残すため剣心との戦いを選び、死に場所をみつけたいというそんなものが見え隠れし哀しい…。剣心もまた、死に場所をみつけたかったに違いありません。そんな背景を背負い挑む表現だからこそ、気・剣・体一致の凄みあるリアルな格闘シーンを生み出したのかも知れません。 コロナ禍の中、シリーズ最終章と銘打っての2本が立て続けて公開された本作。1本目(The Final)は今までのスタイルを継承し描かれ、ラストにふさわしいど派手な演出で、新たな敵との戦いを余すと来なく表現し、ファンとの絆を更に深めました。レギュラーキャラたちの登場場面が少々物足りなかったのを覗けば、大満足の出来映えだったと思えます。(詳しくは4/23日の投稿にて) “THE BEGINNINGは「人斬り抜刀齋」がどのようにして生まれ、時代を駆抜け逆刃刀を手にしたのかが描かれた原点回避の物語となっています。今までの作品とは明らかに違うコンセプトで挑む、新しい剣心像を見事に浮かび上がらせています。いきなりですが個人的には最高傑作と思う一作と言っていいほどこころにに残る作品となりました。原作の漫画のキャラをやや誇張しながらの今までの作品にはない、リアルさが画面から溢れ伝統的時代劇を創り出し張り詰めた緊張感を生みだしています。例えばアクションシーンはいつものスピード感ある切れ味を出してはいますが、トリッキーな演出を控えめにし、緊迫感の溢れるリアルな殺陣のシーンを創り上げています。調べると今まではいかに早く叩く(逆刃刀)という動きだったのに対し、今回は太刀筋に拘り斬る殺陣を目指したとのこと。なるほどの「拘り」に思わず流石と納得。剣心は今までとはまったく別人のような、冷たさが光り近づけないほどのオーラを全身からほとばしらせております。まさに「人斬り抜刀齋」そのもの。それでも瞳の奧には濁りのない透き通ったこころが浮かびあがり、ひとを引きつける不思議な光を宿した人物として描かれています。過去のシリーズで使われてる台詞「◯◯でござる…。」という言葉もいっさい使われず、心なく冷たい静かな言葉を呟くだけの剣心がそこにはいます。新撰組や桂小五郎といった実在の人物も多く登場し、歴史に残る事実を新たな解釈で創り上げているのも見所かもしれません。格闘シーンで印象に強く残ったのは何と言っても、新選組・沖田総司との場面。オーソドックスな殺陣を基本ベースに、互いに譲らない剣捌きの攻防は見事のひとこと。結核を煩う総司の命を削るかのような動きがたまりません。新撰組の衣装も今まで知っている印象を払拭し、羽織を羽衣のような美しい出で立ちにし、無骨な義士たちを神格化してみせます。もちろん動きづらい事間違いなしの格好なのは見れば一目瞭然。それでもいままでとはまた違うカッコいい衣装です。この演出もわたしの勝手な解釈ですが、新撰組が向う未来を象徴した演出だったのではないでしょうか? 突然ですが、ウスバカゲロウという虫をご存知でしょうか。幼虫時はアリジゴクとして土の中にそっと潜み獲物を獲る。成虫になると羽が生えウスバカゲロウという姿に生まれ変わるのですが、そこからの寿命はわずか1週間とされています。急に話が飛びましたが、わたしはこの昆虫を連想し、新撰組が重なって見えてしまいました。もちろん衣装のインパクトからですが…。勤王とか佐幕といった日本が変わる動乱の時代に生きた武士はみな新しい時代を夢見、真っ直ぐ前だけを観て生きていたことが今作では丁寧に描かれています。ラストをこう言う創りかたで締めくくる、監督の大友啓史さんには、こころから感謝の気持ちを添え拍手を贈ります。そしてこのような作品を仕上げたスタッフのクリエイティブにも…。「るろうに剣心」は間違いなく、新しい時代劇の先駆者だと想います。佐藤健くんの剣心、最高です。お疲れさまでした。また、剣心のような役を是非演じてください。最後にもうひとこと、この物語のヒロイン雪代巴を演じた有村架純さんの演技を超えた人物像に大拍手です。NHKの朝ドラ「ひよっこ」の大ファンだったわたしですが、今作で今まで以上にファンになりました。可愛いというイメージから美しいと感じる、まさに陽炎のような儚さが浮かび上がり、瞼に焼き付く忘れることのできないキャラクターとなりました。もしかしたらこれはある意味、純愛映画かも知れません。最終章の2編は大きく好みで2分すると想われます。全部好きなシリーズですが、“THE BEGINNING”は記憶に刻まれる1本となりました。シリーズを観ていないひとでも、充分に堪能できる1品です。是非劇場に足をはこんでください。m(_ _)m
by eddy-web
| 2021-06-10 00:00
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