

2021.5.23
今日紹介する作品は古き良き時代が浮かび上がる、1950年代初頭を舞台にしたアメリカの青春映画です。物語はテキサスの片田舎の小さな町で起こる、儚く哀しい青春の1ページを浮かび上がらせ、何とも言えない余韻を残す作品です。監督はピーター・ボグダノヴィッチでこの作品でアカデミー監督賞他に多くにノミネートされ、その存在が高く評価されることとなりました。作品は1971年に公開され19年後に、ほぼ同じキャストで続編が公開されたが、残念ながら前作を上回る評価は得られませんでした。まさに青春時代と共に儚く時間が去った印象です。古き良き時代とは言ったが、実際はそんなに明るく輝いていた訳ではないとは知りつつ、今は薄れてしまった心が豊かさを感じさせてくれる名作ではないでしょうか?監督作品にもう一本代表的“ペーパー・ムーン”が上げられるが、個人的には“ラストショーの方が”好きです。もちろん“ペーパー・ムーン”も大好きですが・・・。はじめて個人事務所を創った時屋号を「ペーパー・ムーン」と名づけたのはこの作品への念いと紙を扱う仕事の現す意味だったことが思い出されます。
さて物語だが、主人公ソニーを中心に進む「子どもから大人への階段を上っていく姿」を、閉鎖的環境の小さな町で起こる出来事の中、そこで暮らす人たちのまるで家族のような繋がりを紡ぎ出す。小さな町の出来事は日常に起こる出来事を拾い上げ、そしてそこで暮らす人たちにすぐに広がり恰好な話題となる。良くも悪くも近くて遠い関係性が束縛を生み、そこから抜け出せずに苦悩する青年たちの足枷を見事に浮かび上がらせます。時代背景が古い所が、何とも言えない雰囲気を創り上げ郷愁をさらにそそります。言った事もない異国の町が、妙に懐かしく感じられ不思議な感覚を覚えるのは何故でしょう。主人公ソニーを演じたティモシー・ボトムズの繊細な演技が光る作品だが、親友のデュエーンを演じたジェフ・ブリッジス、その彼女を演じたシビル・シェパードの2人もまた、みずみずしい演技で役を演じきり俳優としての未来を伺わせるただならない存在感を披露しています。また脇を固めるベテラン俳優さんたちがまた豪華で、特に伝説のカーボーイ・サムを演じるベン・ジョンソンの渋さと言ったらもうたまりません。言葉のひとつひとつに重みがあり、物語の中でもヒーローですが、現代でも間違いなくカッコいい大人の代表と呼べる存在感です。ラストシーンはたまらないくらいセツナイのですが、映画史に残るシーンには間違いありません。鑑賞して間違いのない名作のひとつです。古い作品ですが、ぜひ探して鑑賞してみて下さい。
P.S. 主役を演じたティモシー・ボトムズはこの年、反戦映画の名作と謳われる問題作“ジョニーは戦場へ行った”に主演し顔こそあまり出ませんが、一度見たら忘れることのできない強いインパクトを残し、今でも議論が交わされる「尊厳死」がテーマになっています。暗く重たい作品ですが、観なくてはいけない作品のひとつではないでしょうか?こちらもぜひ・・・。
※原作はダルトン・トランボが1939年に発表した反戦小説で「ジョニーは銃をとった」である。