

2021.5.22
今日もBestチョイスを1本。今回紹介するする作品は、大好きな岩井俊二監督がはじめて手がけた長編作品“Love Letter”(1995年)です。この作品で映画界にデビューした監督はその独特な感性でファンのこころを掴み、アッという間に日本を代表する監督となりました。わたしもその魅力の虜となったひとり。監督作品のほぼすべてを鑑賞する、自他共に認める岩井ファンです。好きな作品ばかりで選ぶのに苦労しましたが、やはりこの作品と思い“Love Letter”をチョイスしました。この作品はまさに岩井ワールドの原点。監督の研ぎ澄まされた感性に満ちあふれ、さらにその美しい映像美への拘りが画面を通し観る者のこころに訴えてきます。わたしの印象では監督ほどのロマンチストは、そうはいないと思えます・・・。
さて、物語ですが三回忌の法要シーンからはじまり、亡くなった婚約者の想いを抱えながら新しい一歩を踏み出せないでいる女性が、ふと知った婚約者のむかし住んでいた住所を知り帰ってくるはずのない手紙を送ることからはじまる・・・。これだけでも充分にロマンに溢れ、なにか不思議な期待を描いてしまう。内容はお教え出来ませんが、言葉のひとつひとつに大切なものを失った者にしか解らない、こころの揺らめきを感じる言葉の重さを感じさせてくれる。ひとはそんな簡単に創り上げてきた物語をレセット出来ないことをあらためて思い知ることになる。だれにでもある、生きてきた証のピースのひとつである。
同姓同名の二人の男女。ひとりの男性にこころを動かされた二人の女性。それらが不思議な縁で結ばれ、互いを思いやりかわす最後の手紙には瞼が熱くなり胸を締め付ける。
主人公の渡辺愽子と藤井樹の二役に挑んだ中山美穂が、瑞々しい演技で観客のこころに掴みます。眩しいほどに美しい二人の女性を見事に演じています。あと印象に残るのは、藤井樹(女)の少女時代を演じた酒井美紀と、同じく藤井樹(男)を演じた柏原崇の初々しくそして堂々とした演技。このふたりはその後TV「白線流し」でも共演し、その演技力で多くのファンを獲得したのは間違いない。わたしも「白線流し」は、TVドラマの中ではBEST3に数える1本となりました。どれだけ泣かされたことだろう。まさに青春とはこんな時間を過ごすことだろう・・・。
“Love Letter”に話を戻しますが、ここにも青春の甘酸っぱい感性がほとばしり忘れかけていた何かを思い出させてくれる。前ばかり見て走ってきた自分ですが、年のせいで何故か昔のことばかりが思い出されるようになりました。素直に認め、若いぶることをやめ残りの人生を楽しく送りたいと
思います。ぜひ、時間を見つけ「岩井ワールド」に触れてみてはいかがでしょうか?
P.S. 昨年公開された“ラストレター”は、第1回作品“Love Letter"に対するアンサー映画という位置づけで製作されたそうで、岩井監督の原体験を詰め込み書き上げた同名小説がもとになっているとのこと。やっぱり監督はロマンチストですね!それもトビっきりの・・・。そこが大好きなわたしです。変な意味ではありません。これからも胸がキュンとなる作品を沢山創ってください。