

2021.6.1
今日紹介する大好きな映画は、メチャクチャ泣かされた作品“二十四の瞳”。昭和27年に発表された壺井栄の小説で、2年後に木下恵介監督により映画化され公開された不屈の名作である。わたしが生まれる前の作品ですが、映画鑑賞にのめり込んでいた青春時代にこの映画と同時期に発表されていた名作を集めた映画祭に足を運んだのが“二十四の瞳”の出会いとなった。2本立てで週一のペースで行われた「日本名作映画祭」は約1ヶ月に渡りたしか10作品の公開だったと記憶しています。開場は何時も満杯で、右を見ても左を見ても中高年のオジサンばかりだったことを思い出す。銀座という土地柄かスーツ姿のサラリーマンが多く、当時あまり邦画を観なかったわたしにはかなりの衝撃でした。なんかひとりだけ取り残されている感の中、日本映画の素晴らしさにはじめて触れた瞬間を身体全体で感じさらに映画鑑賞にはまっていく切っ掛けとなったのは間違いありません。20歳の頃、当時仕事でお世話になり可愛がっていただいたディレクターTさんに勧められたのがこの映画祭・・・。Tさんも映画好きで、仕事の合間によく映画の話で盛り上がったことが懐かしく思い出されます。この時観た映画の1本が“二十四の瞳”。いまから47年も前の出来事です。当時を思い出すと、暗い映画館の中でむせび泣く男たちの中にまみれ、わたし自身嗚咽し泣いたことが頭に浮かびます。泣いた映画は数知れずあるのですが、泣かされた映画はそう多くなく、この作品はそんな中の1本。日本を代表する作品ではないでしょうか?
さて、物語ですが瀬戸内海の小さな島・小豆島が舞台にした第二次世界大戦に突き進んだ歴史のうねりに否応なく巻き込まれていく女性教師と子どもたちの苦難と悲劇が描かれています。そこで暮らす島民や子どもたちと、その分校に赴任してきた新米教師(女性)との触れ合いがきめ細やかに紡がれ涙を誘います。作品の中で流れる学校唱歌の数々が、見事な使われ方をしていて涙腺のスイッチをONにする見事な演出にやられました。もう、こんなに泣いた作品は悔しいですがいまだかつてそうありません。日本人なら観なくてはいけない1本。1987年にリメイクされましたが、わたしはオリジナルをお勧めします。
主人公の大石先生を演じた高峯秀子さんは、凜としていてまるで包み込むような温かい演技で観客を魅了します。わたしはこの作品で大ファンになり、その後多くの作品を観ることとなりました。生徒を演じた子どもたちは当時全国から応募してきた素人の子どもだったと聞いています。当時の素朴な感じが溜まらないほど愛おしい、子どもたちの演技もそれはそれは素晴らしいものです。ぜひご覧あれ!!
P.S. 私事ですが、実はこの作品との出会いでどうしても小豆島を訪ねたくなり、29歳のとき自転車旅行で四国を一周し帰りの便で小豆島を訪ねました。作品の中に出てくる湾にそった道を分校のあるところまでペダルを漕いだ想い出が今も蘇ります。
※この作品はその年のキネマ旬報ベスト・テン」で、黒澤監督の「七人の侍」を押さえ堂々の1位を獲得したことが記録されています。