

俳優・田中邦衛さんの訃報が、突然ニュースで流れ「えっ!」と驚いたひとは多いはず。そう言えば最近映像作品で見かけなく、どうしているのだろうと・・・。
わたしたち世代(60代)はTVの「北の国から」より、映画「若大将シリーズ」の青大将がまず頭に浮かぶ。若大将のライバル役であの手この手で若大将に挑むが、ぜんぜん歯が立たないというおボチャン役を演じていた。卑怯でこずるいが何か憎めない敵役は、まさに邦衛さんならでは役だったといまは思う。そしてもうひとつ印象に強いのがTVドラマ“若者たち”の長兄役。強い兄弟愛が描かれ、昭和を生きる若者たちの苦悩と希望が映し出され兄弟思いのお兄ちゃんはその後の黒板五朗役へと・・・。その後も沢山の映画やTVに出演し、いつも脇を固めていた個性派名バイプレイヤーである。田中さんが人気を不動にしたのはまぎれもなくTVシリーズ「北の国から」の黒板五郎役。さだまさしのテーマ曲が流れると、もうそこは北海道富良野の風景が自然と浮かんで来るといった万人に愛された国民的ドラマ。1981年に倉本聰さんの原作・脚本でTVドラマとして放送され、その後シリーズ化されスペシャル番組として21年間息子・純と娘・蛍の成長に合わせ“親子の絆”を見事に表現し視聴者の涙を誘いました。個人的にはこの作品ほど強く印象に残ったドラマは、そうそうありません。スペシャルになってからは、次はいつ放送されるのかと、いつも待ち遠しかったことが思い出されます。わたしはすべてビデオに録画し、ことあるごとに何度もそのドラマを楽しんだものでした。そのためほぼ物語のすべてを覚えてしまい、次におきることが途中で頭に浮かび、とんでもないところで感極まり涙を流してしまうことも度々。お恥ずかしい話ですが先日追悼番組で放映された「北の国から‘87初恋」は、スペシャルシリーズの中でも一番好きな作品でもうボロボロでした。シリーズではいろいろな女優さんが出てきましたが、横山めぐみさん(当時はちゃんですが・・・)がちょー可愛かった上、妙に色っぽく純がすごく子どもに見えたことが蘇ります。あの年代はどう見ても女の子のほうがず~~っと大人でした。雪の中で別れ際に純の頬に手を当てるシーンは、胸がキュンとなります。純のドキドキ感が画面から溢れ、まさに青春真っ只中。おじさんたちも遠い昔を思い出し、胸が熱く切ない気持ちになり汚れてなかった頃に思いをはせる瞬間でした。また尾崎豊の「アイラブユー」がBGMとして使われ見事に映像と重なり、涙腺の栓を外す心憎い演出になっています。もうこんなドラマに出会うことはないかも知れません。間違いなく名作です。純を演じた吉岡秀隆くんや蛍を演じた中嶋朋子は、この経験を経て見事な大輪の花を咲かせ素晴らしい俳優さんになったことは間違いありません。シリーズは「2002遺言」で終わりましたが、最後までやきもきとさせるドラマ展開で、幸福とは?を問いかける物語となり生きることの難しさを本当に考えさせられるそんな作品でした。どんなに一生懸命に生きていても、ままならない現実が前に立ちはだかり思い通りにならない。そんなドラマが語りかけていたことは、どんな時も家族の絆は強く、愛は掛けがいのないものであることを教えてくれた。生き方が不器用なお父さんで時にイラッとしたこともありましたが、深い優しさが大好きでした。沢山の愛をいただきました、こころからご冥福をお祈り致します。合掌。