2021.2.16
先週久しぶりに映画を堪能したわたし。お陰でしばらくは精神バランスを保つことができました。そんな中見たい作品が公開され、立て続けはと躊躇もしたが我慢出来ず映画館へと足を運んでしまった。作品は“素晴らしき世界”。意図した訳ではないが、2週続けてのヤクザがベースの映画である。テーマはいっしょでも切り口は全く異なり、社会派とでもいうようなかなり現実味の濃い作品となっている。監督・脚本は西川美和さんで、たまたまTVに出ていたの観この作品のことを知りました。今注目を浴びる女流監督のひとりで、以前“長い言い訳”という作品を拝見しファンになりました。女性ならでは視点はきめ細やかな演出に繋がり、しっかりとこころにメッセージを残してくれる。そんな彼女の作品に主演が役所広司氏となれば、間違いないと思いいても立ってもいられず劇場へ。
感想ですが、思ったとおり素晴らしい作品でいろいろと考えさせられ「すばらしき人生」というタイトルの意図を自分なりに考えてみました。「身分帳」佐々木隆三作という小説が元になった作品だとTVで語っており、長い時間をかけ熟成したとの話。もともと時間をたっぷりかけ取材や構成を重ねる職人はだの監督さんらしく、映画を観るとなるほどと頷くきめの細やかな演出が沢山ちりばめられ奥行きのある作品に仕上がっています。先週観た“ヤクザと家族”はエンタメの強さが強く出ていましたが、ある意味真逆の視点で道を一度外れてしまった人間(ヤクザ)の人生の厳しい現実に寄り添い描かれています。“ヤクザと家族”でその世界にかかわる人たちの厳しい現実はある程度知ることは出来たが、今作はさらにその周りへの影響などさりげなく描かれ現実味あふれる作品となっていました。反社会というレッテルの中で生きることの難しさを追求しただけに留まらない、社会の中で生きる多くのマイノリティの人々にもスポットをあてた作品として創り上げられている。人はひとりでは生きては行けないことを実感させられる。
主人公三上政夫演じた役所広司さんは、言うこと無しの演技力で時に怒りを爆発させ怖ささえ覚え、そしてその裏側にある孤独感を見事に見せています。この方は間違いなく日本を代表する俳優さんと呼ばれる人で異論はないはずである。物語が進みラストが近づくとこころの中の「正義」が、いつ爆発してしまうのか気が気でなくハラハラドキドキのしっぱなしでした。そのあたりの演出が絶品で、ひとのこころの中にある無意識の差別に現実の重さを思い知らされる。ひとはいつから「人を思うこころ」を失ってしまった乃でしょうか?福祉という世界の中で生きるひとの中にも、偏見や差別があるということ織り込まれ考えさせられる。悪いひとなどいないのだろうが、きっと知らず知らず人は人を傷つけている。そんな日常を振り返る、ひとを思いやるこころを失わないようにしたいと心底思いました。出来るだろうか???いままでどれだけひとを傷つけて来たのかと思えば後悔ばかりが胸にわく人生です。『すばらしき世界』で生きられたなあァ~~と、終われる人生でありたと願うばかりのわたし。まずは良い作品に出会えたと、こころから感謝です。
P.S. ラスト近くの展開をみているうちに、何故か相模原障害者施設殺傷事件を思い出してしまいました。独りよがりな考えと善悪の判断基準は表裏一体なものなのか?と思え背筋が寒くなる思いでした。ほんとうの優しさって・・・。一度しっかりと考えてみなければなりません。
※ライター津乃田柳太郎役の仲野太賀さんが、とても印象に残りこころに刻まれました。今後の活躍を期待しています。