

2020.12.24.
今年を締めくくる映画鑑賞に選んだ作品は、“ニューヨーク 親切なロシア料理店”。年の瀬に銀座まで来たのですが、例年の賑わいはなくやはりコロナ禍の影響をちょっぴり感じました。解ってはいましたがやはり銀座は華やかでないと、銀座とは言えません。
さて映画ですが、自粛生活で渇いたこころにやさしい潤いを与えてくれ大満足の鑑賞になりました。某TVで作品の紹介をしていたのを、たまたま観てこれは観なくてはと・・・。
1年を締めくくるには最高の作品となり、見終わった後も余韻にひたり「人との繋がりの大切さ」をしみじみと感じるわたしでした。ニューヨークと言えば夢の街(アメリカンドリーム)を連想するが、今作は光あるところに影もあることを繊細に紡いで見せてくれました。大都会の片隅で生きるさまざまな人生が浮かび上がる物語は、時代の波に乗り遅れてしまった老舗ロシア料理店を舞台に回り始める。ネグレクトから逃れるようにニューヨークにやって来た親子を中心に、人生の再生時間が動き出す。母子はもちろんだが、関わる人々がみなそれぞれに悩みや苦難をかかえもがき生きている街。何処にでもあるような日常の中に潜む、人ごととは思えない話が浮かび上がる。ただ一生懸命に生きているだけなのに、それがこんなにも難しいのかと歯痒さを覚えてしまう。きっと観た人はみな、登場人物のひとりひとりに自身を重ね合わせて観るに違いない。さまざまな登場人物たちの中に、きっと自分に近いひとがいて、知らない間にスクリーンの中へと足を踏み入れてしまいます。みな善人ばかりなのだが、何故か生きるのがへたな人たち。そんな人たちがロシア料理店を介し、繋がっていく様は運命なのか、それとも・・・。冒頭窓から放り投げられたイスがぽつんと街路に写し出され、最後まで象徴のように使われている。日本のことわざに「捨てる神あれば拾う神あり」というのがあるがこの作品はこれに尽きる物語。たまたまだがわたしにはクリスマスイブの日に、思いがけずに神様が届けてくれた、そんな贈り物になりました。
コロナ禍の中、毎日流れるニュースは暗い話ばかりで正直ウンザリである。逃避したいと思うのが本音だが、そうはいかないのが現実である。そんな状況の中で観た作品はとてもこころが穏やかになり、世の中捨てたもんじゃ無いと思わせてくれました。映画とは現実逃避のアイテムと思うひとが多いとは思いますが、わたしはいままで逃げることより立ち向かうことを多く鑑賞作品から教えられました。この作品も紛れもなくそんな気持ちにさせてくれる佳作です。年の瀬も押し迫り忙しいことと思いますが、ここはちょっと時間を作り劇場に足を運んで観ませんか?きっと暖か~い気持ちになれるはずです。
P.S. 知らない俳優さんばかりでしたが、みなさん個性豊かではまり役の方ばかり。特に二人(クララとアリス役)を演じた女優さん(ゾーイ・カザン&アンドレア・ライズボロー)は表現力が豊かで、それぞれの苦悩を見事に表現していて何度も涙を流してしまいました。
この二人を起用した女流監督ロネ・シェルフィグの脚本・監督も見事のひとことです。
※ゾーイ・カザンは後に名匠エリア・カザンの孫だと知り、なるほどと納得。