

2020.11.23.
風変わりなタイトルにひかれ観に来た映画、その名も”タイトル、拒絶“。普通タイトルと言えば内容を連想させるように付けられるの通常。わざとなのか?それとも意図的に狙ったものなのか?は神のみぞ知ると言うことで、興味津々で劇場に足を運んだ。主演は最近、やたらとTVや映画に出まくっている感じの女優さん伊藤沙莉。個性的な声と容姿だが、とても良い味を醸しだし存在感溢れる演技をいつも見せてくれる。NHKの朝ドラで脇役を演じていたが、その時から個性がキラリと光っていました。その後アレヨアレヨとTVドラマに登場し、CMにもつかわれはじめ「来た~~~~っ!!」って感じにブレイクしています。そんな彼女が主演をつとめていると知り、引っ張られるように劇場に・・・。
いつものように予備知識なしの鑑賞である。後で解ったのですが元々は2013年に舞台で上演された作品だと言うこと知りました。監督は山田佳奈氏で舞台でも同作品の演出と脚本を手がけ、今回長編初監督作品となっています。物語はセックスワーカー(デリヘル)で働く女性たちが、それぞれに抱える事情に抗いながら力強く生きようとする姿を浮かび上がらせるお話。主人公カノウを演じるのが伊藤沙莉だが、この作品の主人公の役を「誰にも渡したくなかった」と話すほど、意欲的に臨んだそうである。確かに映画を観れば納得のいく、全身全霊で挑んでいるさまが覗える。役はデリヘル嬢になれなかった落ちこぼれだが、そのまま世話係として働くようになった女を演じ業界の中の不条理に怒りを覚えながらも、淡々と日々流され自身の生き方を模索している。一見ドライな感じではあるが、人一倍感受性は強くそして情にもろい娘。そんな娘が同じ職場で働く女性たちや絡むスタッフの男たちの、生きざまに触れながら自身を見つけようともがき苦しみながら生きている。彼女の役は物語のストーリーテーラー的役割の立ち位置だが、そこで働く女性たちの代表でもある強い意志が芽生えはじめ物語後半爆発する。何とも言えない迫力で観る者を感動させる。ラストのメソメソ感がこれまた儚く、そしてとても愛おしく可愛い。渾身の演技で、改めて彼女の実力を確信することとなった。出ている女優さんや男優さんたちも、みな素晴らしく文句の付けようがないほどの熱演である。ひとりひとりがそれぞれに抱えた事情を繊細に演じ、ジンワリと胸を締め付けてきます。ラストシーンもなんだかソワソワさせる演出となっていて、妙な不安になる後味が残る。最悪のケースになっていないのが救いですが、結論を預けられた感じでちょっぴり恐いです。
作品の中で描かれた世界は、いい年して正直まったく知らないし解らない世界でしたが、生きることの難しさ厳しさは強く受け止めることができ勉強になりました。主人公カノウが下着姿で冒頭で語る
「ワタシの人生なんてクソみたいなもんだと思うんですよね」という言葉が強く印象に残っています。こころの叫びというか?ここまで言い切れる彼女が羨ましくもあり、哀しい。わたしにはそこまでの覚悟とプライドは、まだないと思います。みなさん一見の価値ある作品です。観てはいかがでしょう?