

2020.11.4.
買い物がてら錦糸町まで映画を観に・・・。錦糸町は高校時代に良く来た街。印象に残る思い出がひとつ。学園祭をさぼり友人と映画を観に来た時のこと。ちょうど映画にはまっていた時期で、ちょっと背伸びをし大人に憧れをいだいていた多感な頃。観に来た作品は“個人教授”で、ナタリー・ドロンが主演の恋愛映画。当時はまだうぶだったので、映画館にすんなり入れず、劇場前を行ったり来たり。そんな時、私服の警官に呼び止められ職務質問。そん時の緊張感たるや、今思い出しても忘れることが出来ない。言葉もしどろもどろで、何をいったかも思い出せない。学校が休み(創立記念日)と嘘を吐き、“個人教授”の隣でやっていた“山本五十六”を観に来たと言ったことが思い出される。ここからが人生、嘘のはじまり・・・。警官と別れたあと、周りを伺いながら入場し“個人教授”はしっかりと観ることに成功し、記憶に残る作品となった。懐かしい青春の1ページです。
さて、観に来た映画作品は”スパイの妻“。最近ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した話題作。また主演は、ファンである蒼井優さん。コロナ禍のせいで外国作品が軒並み延期状態のいま。日本作品も頑張っているのだが、正直なかなか好奇心を刺激する作品が見当たらない。そんな中でこころ引かれたのが今作品。ミステリー仕立ての作品は昭和の戦争時代を背景に、まるで舞台劇を観ているような演出でとても重厚感溢れる作品に仕上がっていました。スパイ容疑をかけられた貿易商を営む男・福原(高橋一生)とその妻・聡子(蒼井優)の、太平洋戦争時代の嵐にさらされ運命が大きく変わっていく姿が映し出される。正義とはを問う物語は歴史の中に埋もれてしまった負の遺産を掘り起こし、当時の闇が浮かび上がる。当時の会話が丁寧に紡がれ、とてもゆったりとした時間が流れていく。そのゆったり感が、物語の本質に近づくにつれより緊張感を煽りインパクトを残してくれる。息を潜めて観ているようで、ラストまで緊張の糸が切れることはない。日本が犯した戦争の愚行が浮かび上がると、戦争はひとのこころを狂わすだけでなく運命さえも変えてしまうことを思い知らされる。平和な現在に感謝である。
監督は黒沢清。いまや日本を代表する監督のひとりとなり、特にヨーロッパで高い評価を受け人気も高い。そんな監督の渾身の一作は、ラストまで展開が読めない面白さで観客を釘付けにします。エキゾチックな演出と端正な映像美は、極上のエンタテインメントに仕上がっていました。