

今日紹介する作品は、今までとはかなり違う感覚のもので正直言って良く解らないと言うのが本音。だが、五感を刺激する何とも言えない世界感が溢れ、妙にインパクトが強く脳裏に焼きついた作品です。先日新作“ランボー/ラスト・ブラッド”を観た後、何故か思い浮かんだのがここ作品。背景にベトナム戦争があり、そして主人公が背負ってしまった得体の知れない荷物みたいなものが共通しているからだろう。
作品は1991年公開のアメリカ映画。ジャンルは一応サイコスリラーとなっているが、ひとによってはホラー映画という人もいるようです。確かにどちらの要素も含んではいますが、そんなことより観れば解りますがかなり感覚で鑑賞する作品と言えます。あまり理屈で追うと混乱を招き、頭の中がごちゃごちゃになり訳が解らなくなること間違いなし。ですので、結末とかは観る人により受けとめ方も違うだろうと思います。クローネンバーグ監督的な映像表現も出てくるので、苦手な人は避けた方が良いかもしれません。少なくとも女性向けでは無いと思われます。でも、面白いし何故か心には残る作品です。
本作 “ジィコブス・ラダー”は旧約聖書の「ヤコブの梯子」の話にヒントを得て創られたとのことだが、聖書などというものに触れたことない俗人にはその意味は解らない。直訳すると“ジィコブス・ラダー”というらしいのだが・・・。調べると聖書の10-12節でヤコブが夢に見た、天使が上り下りしている、天から地までに至る梯子(階段)ということでした。こう言われても???ですが、ようは生と死の境を意味したものと考えられます。
映画公開時のキャッチ・コピーが「人は一日に一歩ずつ“ジェイコブの階段”を登っている」だったそうです。このフレーズは見終わった時「なるほど」と思わせてくれるかも知れません。ただこの作品、そんな単純なものでは無く見終わった後の後味が何とも複雑でしばらくの間だ夢見心地状態が続いてやばいです。
物語の主人公はベトナム戦争に従軍した元兵士ジェイコブ・シンガー。この役をティム・ロビンスが演じ、夢か現実かでもがき苦しむ青年をエキセントリックに見事演じています。個性的な俳優さんですが、確かな演技力が評価され名作にも数多く出演しています。“ショーシャンクの空に(スティーブン・キング原作・刑務所のリタ・ヘイワース)は、アカデミー賞などにもノミネートされた傑作で観て損の無い作品です。
この作品は何度も言いますが、観る人によりさまざまな答えがありどれも正解でどれも間違いかも知れません。あなたはどんな答えを出すでしょうか?
わたしは答えと言うより、“ランボー”同様、戦争が残した深い爪痕の恐ろしさみたいなものが強くこころに残りました。
前に紹介した本「死ぬまでに観たい映画1001本」にも、載っていて読むと舞台となっているニューヨークの街も実はそっくりな霊界と謳っていました。これにはさすが驚きました。監督をしたエイドリアン・ライン氏については「彼はすべてが疑わしく、予期できない究極の世界を創ることに成功した」と絶賛しています。(参考・監督作品/フォクシー・レディ、フラッシュ・ダンス、ナイン・ハーフ、危険な情事、ロリータ、運命の女etc.)
光と影のコントラストを巧みに演出しスタイリッシュな映像美が特徴で、風俗作家としても評価が高い。確かに作品群を観れば納得です。
P.S. ジェイコブの息子役で「ホーム・アローン」で有名になる前のマコーレ・カルキン君が出ているのもお見逃し無く。もう君なんて呼べない年齢になっているのですが・・・。